打切アニメ列伝① 玩具の売上不振か!?『闘将ダイモス』

近年は、1クール(12話)などの短い話数のアニメが多いこともあって、番組打切というものがあまり見られなくなっています。
しかし、かつてはアニメの放送が打ち切られるのはそれ程珍しいものではありませんでした。
『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』といった有名作品ですら、実は打切アニメであったことは、知らない人も多いでしょう。
そんな打切アニメを、今回からシリーズでご紹介したいと思います。
『闘将ダイモス』
1978年4月1日~1979年1月27日/テレビ朝日/全44話
原作:八手三郎/監督:長浜忠夫/制作:東映/制作協力:東北新社、日本サンライズ
この作品は、長浜忠夫監督による「長浜ロマンロボット3部作」のうちの一つと呼ばれています。
「友情」がテーマの『超電磁ロボ コン・バトラーV』、「父子の愛」がテーマの『超電磁マシーン ボルテスV』に続く、「男女の愛」をテーマにした作品です。
あらすじは以下の通り。
「母星を失い移住地を求めて地球にやって来たバーム星人が、地球側と平和的な交渉を求めるも、会談の場でバーム星人の代表が暗殺されたことで交渉は決裂。
バーム星人は報復宣戦と称し、代表の遺児リヒテル提督を派遣して地球侵略を開始。
主人公・竜崎一矢は、会談の際にバーム星人に殺されてしまった父が開発していた巨大変形ロボ・ダイモスに乗ってこれを迎え撃ちます。
一矢は、戦いの中で記憶喪失の少女・エリカと出会い、やがてと2人は恋に落ちますが、実はエリカはバーム星人で、リヒテルの妹だったのです」
一矢とエリカの禁断を愛が描かれたことから、『闘将ダイモス』は、ロボットアニメ版『ロミオとジュリエット』とも評されています。
スーパーロボット系では珍しく操縦系統がマスター・スレイブ方式※1で、徒手空拳の空手の技を使って戦うのが特徴です。
(武装もありますが、あくまで補助的な使用に留まり、最終的な必殺技は正拳突きやキックとなっています)
『仮面ライダー』の変身ポーズの考案者で、特撮ヒーロー番組の殺陣師として知られる高橋一俊をアクション振付に起用して、ロボット同士の格闘シーンに力を入れた作品となっていました。
視聴率は前作の『超電磁マシーン ボルテスV』と同程度で、決して悪い方ではありませんでした。
ところが、どうしたことか、10ヶ月という中途半端な期間で放送が終了となっているのです。
これが予定通りの10か月放送ではなく、打切だと言われているのは、後年、長浜忠夫監督により、打切のために本来の構想とは異なるストーリー展開で描かざるをえなかったことが語られているからです※2。
打切という結果になった理由については、証言がいくつかあって、どれが真実かは決着がついていません。
玩具の売れ行きが不振でメインスポンサーである玩具メーカーのポピーとの確執があったというものや、テレビ局の意向なども証言として挙がっています。
その中でも確度が高いと思われる説があります。
まず、『闘将ダイモス』が放送されていた当時、別局で特撮ヒーロー番組『スパイダーマン』が放送されていました。
この後番組として4月からの放送が予定されていた『バトルフィーバーJ』の放送開始を、春休み需要を見込んで2月に早めたいというスポンサー※3からの申し入れがあったというのです。
『闘将ダイモス』テレビ朝日 土曜 18:00~18:30
『スパイダーマン』東京12チャンネル 水曜 19:30~20:00
一方、『闘将ダイモス』の後番組には『未来ロボ ダルタニアス』が予定されていました。
実はこの『闘将ダイモス』『未来ロボ ダルタニアス』『スパイダーマン』『バトルフィーバーJ』は、いずれも東映の製作で、広告代理店に東映エージェンシーが入っていました。
さらに、『闘将ダイモス』『未来ロボ ダルタニアス』のメインスポンサーはポピー、『スパイダーマン』『バトルフィーバーJ』のスポンサーは、後楽園ゆうえんちとポピーでした。
この状況下で、スポンサーからの要望に応える必要があった東映エージェンシーは、一計を案じます。
テレビ朝日で放送していた『闘将ダイモス』の放送を短縮して1月中に終了させ、この後番組に、本来東京12チャンネルでの放送を予定していた『バトルフィーバーJ』を当てようというのです。
『闘将ダイモス』と『スパイダーマン』を天秤にかけた時、アニメよりも特撮番組の方が制作費は高く、その他の関係人員、スポンサー料、ロイヤリティ収益など経済的な点を考慮すれば、より大きな金額が動いている『スパイダーマン』の方を優先させるのは当然の結果と言えるでしょう。
また、大企業である東映が実制作を行う『スパイダーマン』に対し、『闘将ダイモス』の方は企画こそ東映でしたが、アニメ制作を委託されていたのは、当時まだ数ある制作会社の一つにしか過ぎなかった日本サンライズでした。
『バトルフィーバーJ』の放送を早めるため、『闘将ダイモス』の放送を短縮させるという案は、『スパイダーマン』の放送を短縮させることより、受け入れやすかったであろうことが推察されます。
東映エージエンシーがこの2つの放送枠を交換する案をテレビ局に持ち掛け、見事に成立。
結果として、『闘将ダイモス』が放送短縮=打切と相成ったというわけです。
割を食ったのは、長浜監督や日本サンライズのアニメスタッフたちでしょう。
いち制作会社と雇われ監督に過ぎない彼らに、スポンサーや広告代理店、テレビ局や発注元である東映の意向に抗う力はありません。
急遽ストーリー展開を修正し、慌ただしく幕を閉じなくてはならず、やりたかったものを十分に描き切れなかった悔しさは、想像に難くありません。
※1 マスター・スレイブ方式というのは、『機動武闘伝Gガンダム』や『パシフィック・リム』などで描かれていた、操縦者の身体の動きをトレースして巨大ロボットを動作させる仕組みです。
※2 1980年に発売された、長浜ロマンロボアニメ三部作の特集本「ROMAN ROBO ANIME CLIMAX SELECTION」(マジックボックス刊)の中で語られています。
※3『バトルフィーバーJ』のスポンサーには、後楽園ゆうえんち、ポピーなどがあり、春休みのヒーローショー、玩具販売を見込み、2月に放送を開始するメリットが大きかったとされています。
打切アニメ列伝
① 玩具の売上不振か!?『闘将ダイモス』
② 打ち切りではなく延長?『SF西遊記スタージンガーII』
③ 期待する忍者アニメではなかった『忍者マン一平』
④ アイドル番組に負けた『超獣機神ダンクーガ』
⑤ 人気があったのに時代が悪かった『蒼き流星SPTレイズナー』
⑥ 日本アニメ史上最短で打ち切り『手塚治虫のドン・ドラキュラ』
⑦ 知られざるサンダーバードアニメ『科学救助隊テクノボイジャー』
⑧ タカトクトイス倒産で打ち切りになった『超攻速ガルビオン』『ふたり鷹』
⑨ 打ち切りではなく予定通りのイデエンド『魔境伝説アクロバンチ』
⑩ スポンサーの映画興行の失敗の煽りを受けた『FF:U ~ファイナルファンタジー:アンリミテッド~』
⑪ 人類滅亡の衝撃的ラスト『宇宙戦士バルディオス』前編
⑪ 人類滅亡の衝撃的ラスト『宇宙戦士バルディオス』中編
⑪ 人類滅亡の衝撃的ラスト『宇宙戦士バルディオス』後編
⑫ 大人の事情で放送終了『SLAM DUNK』
⑬ その不条理ギャグでスポンサーがゼロになった『ボボボーボ・ボーボボ』
⑭ 第2のガンダムを期待された『伝説巨神イデオン』前編
⑭ 第2のガンダムを期待された『伝説巨神イデオン』中編
⑭ 第2のガンダムを期待された『伝説巨神イデオン』後編
