今さら聞けない『プリキュア』20年の歴史 ③ シリーズ終了の危機

第3作『ふたりはプリキュア Splash Star
放送期間:2006年2月5日~2007年1月28日
東映アニメーションプロデューサー:鷲尾天
[登場プリキュア]
キュアブルームキュアブライトキュアイーグレットキュアウィンディの2人

<ストーリー>
引っ越しで別れ別れになり、5年ぶりの再会を果たした2人の女子中学生が、滅びの国ダークフォールの侵攻を受けた泉の郷からやって来た妖精から助けを求められ、プリキュアに変身して戦うことに。


基本スタイルは初代『ふたりはプリキュア』と同じバディものですが、この作品はで、敵側の戦士(満と薫)が主人公たちとの交流で人間性に目覚め、改心して味方となるという、その後のシリーズでも受け継がれていく要素が初めて描かれました。

キュアブルームがキュアブライトへ、キュアイーグレットがキュアウィンディへというように、新たなパワーアップした姿へと変身し名前も変わるという新要素も登場しましたが、これは後の作品には引き継がれませんでした。

前述のような新要素の追加もあった上、何より同じ『プリキュア』というタイトルを踏襲しながら独立した作品を新たに始めるというスタイルは大きな挑戦でもあり、作品評価は決して低くはありませんでしたが、玩具の売上が極端に落ち込んでしまいます。

原因は、2004年10月から登場した『オシャレ魔女♥ラブandベリー』でした。
これは、セガが開発したトレーディングカードゲーム方式でファッショナブルな着せ替え遊びができる女の子向けアーケードゲームでしたが、これが大ブームを巻き起こしており、『プリキュア』玩具の売上を直撃したのです。
その人気は凄まじく、2006年11月に発売されたニンテンドーDS用ソフト『オシャレ魔女♥ラブandベリー DSコレクション』が、わずか1ヶ月で100万本を突破する程でした。
この『オシャレ魔女♥ラブandベリー』の成功を受けて、2006年頃から競合他社が次々に女の子向けカードゲームに参入していき、売上競争が加熱します。

さらに、小学館のマンガ誌「ちゃお」の看板マンガを原作とする『きらりん☆レボリューション』が同年4月から放送を開始し、瞬く間に人気作品となりました。
前年から始まった『おねがいマイメロディ』シリーズや、『ふしぎ星の☆ふたご姫』シリーズという人気作品もそれぞれ続編が放送中でした。
したがって、『ふたりはプリキュア Splash Star』に問題があったというよりは、ライバルが多過ぎてパイを取り合ってしまったという外的要因が主な原因であって、決して作品人気が悪かったわけではありませんでした。

しかし、どんなに作品内容が良くとも、メインスポンサーであるバンダイの玩具の売上が悪いとなれば、番組は継続できません。
それでもまだ視聴率が好調であれば良かったのですが、この作品では、後の作品のような中盤での追加戦士の登場というイベントはありませんでしたから、前半は好調だった視聴率が後半に伸び悩んでおり、極端に落ち込む程ではなかったものの、視聴率的にも作品を肯定できる好材料がなかったわけです。
そのため、東映アニメーション内では、実際に翌年の成績が悪かったら『プリキュア』終了との内示があったそうですから、事態はかなり深刻で、まさに存亡の危機に立たされていたのです。

<トピックス>
◆ 共通タイトルで1年ごとに独立した作品にするスタイルの第1作目
◆ 敵側の戦士が改心して味方になる


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※『オシャレ魔女♥ラブandベリー』の累計カード出荷枚数は、2008年6月末の時点で2億7,300万枚を記録しています。