今さら聞けない『プリキュア』20年の歴史 ④ プリキュア人気の復活

第4作『Yes!プリキュア5
放送期間:2007年2月4日~2008年1月27日
東映アニメーションプロデューサー:鷲尾天
[登場プリキュア]
キュアドリームキュアルージュキュアレモネードキュアミントキュアアクアの5人

<ストーリー>
悪の集団ナイトメアに攻め滅ぼされた妖精の国パルミエ王国から助けを求め、伝説のプリキュアを探しに人間界にやって来た妖精と出会い、プリキュアとして覚醒した5人の女子中学生が、パルミエ王国を救うため、ナイトメアに立ち向かいます。


前年、『オシャレ魔女♥ラブandベリー』の大ブームの影響でピンチに立たされた『プリキュア』シリーズには、前作『ふたりはプリキュア Splash Star』の続編を制作し、成功例のある『ふたりはプリキュア Max Heart』に倣って追加戦士を導入するか、あるいは全く新しいものを作ってチャレンジするかの選択肢があったはずです。
ここで『プリキュア』シリーズが選択したのは、チャレンジの方でした。

自ら生み出し、3年間続けた2人組の美少女戦士というスタイルを捨て去り、かつて否定した『美少女戦士セーラームーン』と同じ5人組に変更したのです。
しかしこれは、『プリキュア』の生みの親である鷲尾天プロデューサーによると、『美少女戦士セーラームーン』に倣ったと言うよりは、親会社である東映の作品である戦隊シリーズを意識してのものだったようです。

2人体制の時には、2人の中に複雑な性格や心情を練り込みながら表現していましたが、5人に増えたことで性格付けを割り振ることができ、その結果、各々の性格が分かりやすく表現することができるようになりました。
また、それぞれ性格や特性に合わせてカラー分けがされているので、キャラクター性がさらにわかりやすくなっています※1

夢原のぞみ(ピンク:勉強と運動が苦手で不器用なドジっ子。喜怒哀楽がはっきりしている。天然ボケ
夏木りん(赤):男勝りで面倒見が良い姉御肌。スポーツ万能。美形に惚れっぽい。オバケが苦手
春日野うらら(黄色):アイドル活動をしているハーフ(日本人×フランス人)。食欲旺盛でカレー好き
秋元こまち(緑):好奇心旺盛で博学な図書委員。おっとりしているが怒らせると怖い
水無月かれん(青):才色兼備なお嬢様で生徒会長。家柄も良く文武両道に秀でているも、家事全般が苦手

さらに、この作品に出てくるパートナー妖精は人間に変身でき、しかも人間の姿になるとイケメンで、物語の進行に従い、恋愛要素が発生していきます。
過去の作品での恋愛描写は、片思いや憧れといった一方通行的なものに留まっていましたが、『Yes!プリキュア5』と『Yes!プリキュア5GoGo!』では、夢原のぞみと妖精ココの両想いの恋愛が描かれており、翌年秋に公開された『映画 Yes!プリキュア5GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪』では、なんとキスまでしてしまっています。
女の子向けアニメでありながら、ここまで攻めた恋愛描写はシリーズを通して後にも先にもなく、この作品のみとなりました。

もう一つ大きな変更点としては、前作までは、特に名言はされていないものの、日本を想定した舞台設定であるため、背景美術も日本的な風景となっていましたが、この作品では、日本的な世界観をやめ、街並みがファンタジー調だったりと、無国籍な世界観となっていることも挙げられます※3

さらに、前年に辛酸を嘗めさせられた『オシャレ魔女♥ラブandベリー』で起きたカードゲームブームに乗っかり、『プリキュア』シリーズでも『プリキュアデータカードダスシリーズ』というトレーディングカード方式のアーケードゲームを2007年11月に始めています。

<トピックス>
◆ 初の5人組プリキュア※2
◆ タイトルから「ふたりは」が消え、これ以降「プリキュア」のみが継承されることになる
◆ ピンクがセンターキャラ(主人公)のカラーという伝統を確立
◆ 妖精が人間に変身する

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第5作『Yes!プリキュア5GoGo!
放送期間:2008年2月3日~2009年1月25日
東映アニメーションプロデューサー:鷲尾天
[登場プリキュア]
キュアドリームキュアルージュキュアレモネードキュアミントキュアアクアの5人に、ミルキィローズというプリキュアに準ずる存在が追加

<ストーリー>
悪の集団ナイトメアに攻め滅ぼされた妖精の国パルミエ王国から助けを求め、伝説のプリキュアを探しに人間界にやって来た妖精と出会い、プリキュアとして覚醒した5人の女子中学生が、パルミエ王国を救うため、ナイトメアに立ち向かいます。


『ふたりはプリキュア』の続編『ふたりはプリキュア Max Heart』で追加戦士が登場したように、この作品でも、続編では追加戦士が登場します。
さらに、「ふたりは」というタイトルの縛りから、追加戦士をプリキュアではないとした同じ事情で、この作品でも、「プリキュア5」というタイトル縛りのため、追加戦士であるミルキィローズは、プリキュアではない存在という設定となりました(後にプリキュアの一員という扱いになりました)。

『プリキュア』シリーズのお約束的要素の一つである、お笑い芸人が本人役で登場するというゲスト枠が初めて試みられたのもこの作品が初でした※4

追加戦士ミルキィローズの人気のおかげで前半こそ関連商品の売上は良かったものの、後半の売上はやや落ち込みを見せたようで※5、この結果からなのか、翌年以降から1年ごとにリセットして新たな作品を放送するスタイルが定着して、この作品が2部構成の最後の作品となりました。

<トピックス>
◆ 妖精が変身してプリキュアの仲間として戦う
◆ お笑い芸人が本人役でゲスト出演
◆ 2部構成の最後の作品


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※1 鷲尾天プロデューサーによると、5人のキャラクターや関係性は『湘南爆走族』や絵本の『シナの五にんきょうだい』などを参考に設定されているとのこと。

※2 プリキュアと仲間の人数の増え方は、1作目が2人で、2作目が3人、3作目が2人、4作目が5人、5作目が6人と、一見バラバラに増減しているように見えますが、実は、
1作目:2人 ブラックホワイト
2作目:3人 ブラックホワイトルミナス
3作目:4人 プルームイーグレット
4作目:5人 ドリームルージュレモネードミントアクア
5作目:6人 ドリームルージュレモネードミントアクアローズ
といった具合に、1人ずつ仲間の人数が増えているという法則性があります。

※3 『ふたりはプリキュア』では、実在する日本の学校や駅をモデルに作画されていたり、町の名前が練馬区の大泉学園を元にした「小泉学園」だったり、鉄道が「西急電鉄」だったりと、日本的に表現されています。
『ふたりはプリキュア Splash Star』でも、舞台が湘南と鎌倉をイメージして創作された「海原市夕凪」となっています。
『Yes!プリキュア5』の場合は、無国籍な世界観とするため、町名などの設定は作中には出てきませんでした。

※4 『プリキュア』シリーズにお笑い芸人が本人役でゲスト出演例は下記の通り。このゲスト枠は、後の作品ではお笑い芸人以外の芸能人やゆるキャラも対象となっていきます。
『Yes!プリキュア5GoGo!』:たむらけんじ
『フレッシュプリキュア!』:オードリー
『スマイルプリキュア!』:FUJIWARA
『ハピネスチャージプリキュア!』:中山雅史ふなっしー
『魔法つかいプリキュア』:渡辺麻友くまモンとゆるキャラたち
『トロピカル〜ジュ!プリキュア』:向井慧(パンサー)
『デリシャスパーティ♡プリキュア』:ギャル曽根くまモン

※5バンダイの「こなぷん」やエポック社の「ホイップる」といったミニチュアサイズの料理やスイーツを作ることができるメイキングトイが2008年頃にブームとなり、これが『Yes!プリキュア5GoGo!』の売上に影響したと言われています。