今さら聞けない『プリキュア』20年の歴史 ⑯ 20周年記念の最新作『ひろがるスカイ!プリキュア』

第20作『ひろがるスカイ!プリキュア
放送期間:2023年2月5日~
東映アニメーションエグゼクティブプロデューサー:鷲尾天
東映アニメーションプロデューサー:髙橋麻樹
キャッチコピー:「ひろがる世界へ!ホップ!ステップ!ジャンプ!」
[登場プリキュア]
キュアスカイキュアプリズムキュアウィングキュアバタフライ

<ストーリー>

料理の作り方が書かれた国の宝であるレシピボンを怪盗ブンドル団に盗まれる事件が発生した不思議なおいしい世界クッキングダムでは、レシピボン捜索のためにローズマリーを人間界に派遣します。使命を果たすべく人間界のおいしーなタウンにやって来たローズマリーが偶然に出会った3人の女子中学生たちは、人間界でもお料理の妖精レシピッピを奪い出した怪盗ブンドル団から、人々の「おいしい笑顔」を守るためにプリキュアに変身して戦います。

コンセプトモチーフは「」、テーマは「ヒーロー」。
『プリキュア』シリーズでは、これまで主人公であるセンターキャラのカラーはピンクというのが定番でした。
チームのセンターカラーがピンクのアニメは『おジャ魔女どれみ』、『東京ミュウミュウ』、『アイカツ』、『魔法少女まどか☆マギカ』など他にもたくさんありますし、女の子=ピンクはジェンダーバイアスではないかとの疑問が呈される以前では、そのことに疑問を持つ人たちはほとんどいなかったでしょう。

これまで、多様性の尊重や、性別による決めつけに対して、常に先進的に配慮を行って来た『プリキュア』シリーズが、いち早く自ら生み出したの伝統を打ち破り、主人公キャラの色をブルーにしたのは象徴的な出来事でした。
だからといって、ピンクを排斥するような極端なことはせず、ちゃんと他のプリキュアにピンクを配置し、ピンクが好きな子の価値観も否定しません。

また、『プリキュア』シリーズでは、主人公キャラは人間界の少女で、異世界からやって来た妖精や女の子と出会ってプリキュアに変身することになるというのが、初代『ふたりはプリキュア』以来の一貫した構図となっていました。
ところが、今回は主人公が人間界にやって来て異世界の住人であり、言うなれば「逆異世界モノ」といった構図となっているのも新しい試みとなっています。

ちなみに、今回の主人公の口癖は「ヒーローの出番です!」です。
オシャレやカワイイといったものではなく、かっこいいヒーローを目指しているという点でも、今回は前時代的な「女の子らしさ」といった概念を打ち破ろうという意識が垣間見えます。

今作には、男の子プリキュアと成人プリキュアが登場することが発表されており(第9話まで放送された現時点では、成人プリキュアは未登場)、この点でも多様性を意識した作品作りを行っていることが窺えると共に、同じことを繰り返さず、常に新しい試みをしていく『プリキュア』シリーズの制作姿勢がよく表れているものと思われます。

多様性が求められる時代風潮に合わせ、『プリキュア』シリーズにおいても、既成概念や過去の伝統や慣例に縛られず、大胆に設定の幅を広げる動きが見られるわけですが、時代に迎合しながらも、夢と希望を与えたいとする『プリキュア』らしさを失うことなく、過去から首尾一貫した骨太の芯を感じさせるところが、20年の歴史を持つ『プリキュア』の強みとも言えるでしょう。

<トピックス>
◆ センターキャラのカラーが青
◆ センターキャラが異世界の人間
◆ 男の子プリキュアの登場
◆ 成人プリキュアの登場


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