今さら聞けない『プリキュア』20年の歴史 ⑨ 作品コンセプトを明確に打ち出すことで再度の復活
第12作『Go!プリンセスプリキュア』
放送期間:2015年2月1日~2016年1月31日
東映アニメーションプロデューサー:柴田宏明、神木優
キャッチコピー:「つよく、やさしく、美しく」
[登場プリキュア]
キュアフローラ、キュアマーメイド、キュアトゥインクルの3人でスタートし、後にキュアスカーレットが追加
テーマは「夢」。
再起をかけたこの作品は、全寮制の「私立ノーブル学園」を舞台にしたシリーズ初の学園モノで、女の子アニメの鉄板である「お姫様」をモチーフにしています。
これには、前年『アナと雪の女王』が大流行になっていたことも大きな後押しとなっているようです。
異世界であるホープキングダムも湖の畔に西洋風な城がある典型的な「おとぎの国」といったもので、プリンセスを夢みる主人公に、王子様、敵の三銃士など、作品の世界観やテーマ、デザインなどを、モチーフである「お姫様」に合わせて統一感を持たせたものにしています。
特定のモチーフで統一感を持たせるというスタイルは、わかりやすい形で作品の個性やコンセプトを打ち出せることもあり、この作品以降も引き継がれ、『プリキュア』シリーズに定着していきます。
この作品でも、追加戦士として、敵の戦士が実は洗脳されていたホープキングダムの王女で、第22話で洗脳が解けてプリキュアとなり、仲間入りを果たします。
主人公・春野はるかのルームメイトで親友の七瀬ゆいは、自らはプリキュアにはならず、はるかたちがプリキュアであることもその事情も含めて知った上で、最後まではるかたちの協力者であり続けます。
そんな彼女が、最終決戦では、普通の女の子のままで活躍し、ピンチに陥ったプリキュアたちを助けて勝利に導くのです。そこには、プリキュアでなくとも、誰でも大きな可能性を秘めているというメッセージが込められていました。
また、『プリキュア』シリーズでは、最終話で次の作品のプリキュアへのバトンタッチが描かれるお馴染みのシーンがあるのですが、このお約束が行われたのは、この作品が最初でした。
この作品の場合は、番組の最後にキュアフローラが登場して、視聴者へのお礼を言うと共に、新しいお友達として次回作の主人公であるキュアミラクルを紹介するという形でしたが、後の作品では、最終話のラストで主人公同士が偶然出会うという、より自然な形でのシーンになっていきます。
再起を図った『Go!プリンセスプリキュア』でしたが、売上自体は前年並み(1億円UP)で、回復とまではとても言えないものの、見方を変えれば、前年から続く非常に厳しい環境下で、持ち堪えた、あるいは下降を止めたとも言えます。
ここで前年より売上がさらに下がっていたとしたら、番組の継続が検討される事態になったかもしれませんが、前年からわずかでも売上を上げたことが、翌年以降の回復へと繋がっていく土台となったわけです。
<トピックス>
◆ シリーズ初の全寮制の学校を舞台にした学園モノ
◆ 作品の世界観やテーマを一つのモチーフで統一した最初の作品
◆ 最終話で次のプリキュアのバトンタッチ
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第13作『魔法つかいプリキュア!』
放送期間:2016年2月7日~2017年1月29日
東映アニメーションプロデューサー:内藤圭祐
キャッチコピー:「魔法のことば『キュアップ♡ラパパ!』で ふたつの世界がいまつながる!」
[登場プリキュア]
キュアミラクル、キュアマジカルの2人でスタートし、後にキュアフェリーチェが追加
テーマは「手をつなぐ」。コンセプトはタイトルにもある通り「魔法つかい」です。
ナシマホウ界(人間界)の女の子である朝日奈みらいが、魔法界からやって来た十六夜リコと手を繋いだ瞬間にプリキュアに覚醒します。
この作品では、これまでの主人公たちに変身能力を与える役割のパートナー妖精は登場せず、みらいが長年大事にしてきたクマのぬいぐるみのモフルンに命が宿ってその代わりを務めます。
このモフルンは、変身アイテムの役割も担っていて、みらいとリコとモフルンが手を繋いで輪を作ることでプリキュアに変身することができる設定となっています。
物語の序盤では、はーちゃんという手のひらサイズの妖精の赤ちゃんが伝説の本から生まれます。
『プリキュア』シリーズによく出てくる赤ちゃんタイプの妖精の一つで、マスコットキャラクター扱いかと思いきや、次第に成長していき、第22話では急成長を遂げて主人公たちと同じ年齢の女の子になり、追加戦士としてプリキュアに変身します。
この作品では、シリーズでは初となる二部構成での物語となっているのも特徴です。
第21話で敵である闇の魔法つかいの首領ドクロクシーを倒し、ナシマホウ界と魔法界に平和を取り戻しますが、第22話からデウスマストと魔人たちという新たな敵が登場し、再び戦いが始まります。
二部からは、成長したはーちゃんが新たなプリキュアとなって仲間入りすることもあって、物語をだらけさせず、視聴者を飽きさせない工夫が見て取れます。
このように、「お姫様」「魔法つかい」という、女の子が大好きなものばかりで固めた明確なコンセプトを打ち出した戦略が功を奏し、売上は徐々に上向きに転向していくことになります。
<トピックス>
◆ 妖精の赤ちゃんが成長してプリキュアに変身
◆ 妖精の代わりにぬいぐるみがマスコットキャラクター
◆ 二部構成の物語展開
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今さら聞けない『プリキュア』20年の歴史
① プリキュア誕生秘話
② プリキュア放送開始
③ シリーズ終了の危機
④ プリキュア人気の復活
⑤ シリーズの基礎を作った『フレッシュプリキュア!』
⑥ 何でもありの扉を開いた『ハートキャッチプリキュア!』
⑦ テーマ性を持たせて作品ことの個性を強調
⑧ 二度目の危機
⑨ 作品コンセプトを明確に打ち出すことで再度の復活
⑩ 新たなる挑戦!肉弾戦を封印した『キラキラ☆プリキュアアラモード』
⑪ 完全復活を遂げた『HUGっと!プリキュア』
⑫ ‘80テイストで宇宙冒険を描いた『スター☆トゥインクルプリキュア』
⑬ シリーズ屈指のテーマ性に挑んだ『ヒーリングっど♥プリキュア』
⑭ とにかく明るくコミカルな『トロピカル〜ジュ!プリキュア』
⑮ コロナ渦にごはんで笑顔を届けたい『デリシャスパーティ♡プリキュア』
⑯ 20周年記念の最新作『ひろがるスカイ!プリキュア』
⑰ 意外に知らない劇場版のこと
⑱ シリーズ総括 前編
⑲ シリーズ総括 後編