今さら聞けない『プリキュア』20年の歴史 ⑫ ‘80テイストで宇宙冒険を描いた『スター☆トゥインクルプリキュア』

第16作『スター☆トゥインクルプリキュア
放送期間:2019年2月3日~2020年1月26日
東映アニメーションプロデューサー:柳川あかり
キャッチコピー:「宇宙(そら)に描こう! ワタシだけのイマジネーション!」
[登場プリキュア]
キュアスターキュアミルキーキュアソレイユキュアセレーネの4人でスタートし、後にキュアコスモが追加

<ストーリー>
宇宙大好き少女の星奈ひかるは、ある日、ロケットでやって来た宇宙妖精フワと宇宙人の少女ララと出会います。地球の遥か彼方にある星空界で、全宇宙の均衡を保っていた12星座のスタープリンセスたちが、何者かの襲撃によって12本のプリンセススターカラーペンになって宇宙に散らばってしまい、ララとフワは宇宙を救う伝説の戦士プリキュアを探しているとのこと。そこへ宇宙の支配を企みフワを狙う謎の組織ノットレイダーが襲ってきて、ひかるはフワを守るためにプリキュアに覚醒します。そして、同じくプリキュアに覚醒した仲間たちと共に、全宇宙の平和のため、宇宙に散らばったスタープリンセスを探す冒険に出るのです。

 

コンセプトモチーフは「宇宙」。
これまでの作品では、舞台となる町に敵が襲ってきて町中で戦うというのが定番でしたが、この作品では、地球から宇宙船に乗って星々を巡り、いろんな星を舞台に出来事が展開するという点が特徴となっています。
また、宇宙での冒険モノということで、前作のシリアスムードから一転して、軽快なノリのポップでコミカルな作風となっているのも、特徴の一つとして挙げられるでしょう。

宇宙を描いたSFモノの場合、宇宙空間をリアルに描くために黒い背景が目立ちますが、そこは女の子向けアニメですから、常に明るい色調で、宇宙空間であってもカラフルでキラキラした印象となっています。
宇宙船自体もピンク色の外装にリボンの飾りまでついているかわいい船体で、移動時にフワが生み出すワープ空間もファンシー調で描かれています。

宇宙冒険モノといっても、主人公たちは中学生ですから、学校を長期休学して冒険に出てしまうのは教育上よろしくないので、日曜日を利用しての日帰りプチ冒険となっています。
それを可能にしているのは、フワの能力で生み出したワープホールを通ることで、どんなに離れた場所でも一瞬で辿り着くことができるからで、宇宙船の操縦もAI任せで、主人公たちはただ乗っているだけだったりと、SF要素はほとんどありません。

というのも、この作品では、モチーフこそ「宇宙」ですが、描きたいものは宇宙科学などではなく、ちょっとおかしな異星に旅するワクワク感や、未知の世界との遭遇で主人公たちが成長していく姿であるためで、科学考証的な部分はかなりゆるい設定となっています。
石や雨などあらゆるものが骨の形をしている星や、重力が地球の2倍の星、金が全てのカジノ街のような星、雪だるまの形をした雪と氷の星、水に覆われた海の星、発展した科学力を鼻にかける住人ばかりの星など、いろんな星をめぐることで、広い世界には、自分たちの暮らす世界とは異なる多種多用な環境や価値観があることを知り、そこで起こる様々なトラブルを、イマジネーションの力で解決していく姿が描かれています。

この作品では、宇宙ばかりではなく、ちゃんと地球での生活も描かれています。
ララも編入して一緒に通うことになった学園でのエピソードと、宇宙冒険のエピソードとが交互に描かれる形式となっており、その点でも視聴者を飽きさせない構成となっています。

プリキュアチームは、星奈ひかるとララの中学2年組と、ヒスパニック系ハーフで面倒見の良い天宮えれと、頼れる生徒会長の香久矢まどかの中学3年組の構成で、妹2人とお姉さん2人といった印象となっています。
そこへ、ある時は宇宙No.1アイドルのマオ、ある時は、宇宙怪盗ブルーキャット、その実態である獣人の星の出身の少女ユニが、第22話でプリキュアに覚醒して仲間に加わります。

マオのアイドルステージや、飛び交うキラキラした星やハートが多用されていたり、『うる星やつら』や『魔法の天使クリィミーマミ』といった昭和アニメのテイストが背景美術に盛り込まれているのも、この作品の特徴です。
エンディング曲もどこか昭和アイドルの歌謡曲テイストとなっていて、エンディングアニメの導入部などは特に『うる星やつら』っぽい雰囲気を感じます。
子供たちにとっては新しく、大人にとっては懐かしさを感じるテイストで、これも一つの挑戦的な取り組みと言えるでしょう。

歌って踊りながら変身するこれまでにない新しい変身シーンが描かれっているのも注目点です。

『プリキュア』シリーズでは、武器を使用しないことがお約束だったはずでしたが、作品を重ねるごとに、エネルギーを放出したり、魔法のステッキを使ったり、特殊能力技なども増えて行った結果、この作品では、キュアセレーネが弓を、キュアコスモが霧吹き状の銃のような武器を使っていたりと、明らかに武器と言えるアイテムの使用が解禁されているのも新しい試みとして挙げられます。

女の子アニメにそれまでになかった素手での格闘アクションを取り入れた『プリキュア』シリーズですから、今更驚くことではありませんが、女の子向けアニメで宇宙冒険モノというのも、なかなか過去に例のないモチーフで、これも『プリキュア』シリーズらしい挑戦的な作品となりました。

<トピックス>
◆ 5人のプリキュアのうち、2人が宇宙人(初の宇宙人プリキュア)
◆ 宇宙が舞台で、星々を巡っての冒険物語が展開
◆ 変身ダンスの導入
◆ 部分的に武器解禁


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