今さら聞けない『プリキュア』20年の歴史 ⑩ 新たなる挑戦!肉弾戦を封印した『キラキラ☆プリキュアアラモード』

第14作『キラキラ☆プリキュアアラモード
放送期間:2017年2月5日~2018年1月28日
東映アニメーションプロデューサー:神木優
キャッチコピー:「つくって!たべて!たたかって! 元気と笑顔をレッツ・ラ・まぜまぜ!」
[登場プリキュア]
キュアホイップキュアカスタードキュアジェラートキュアマカロンキュアショコラの5人でスタートし、後にキュアパルフェが追加

<ストーリー>
妖精たちが隠れ住むいちご山からやって来た妖精と出会った女子中学生が、仲間と共に伝説のパティシエであるプリキュアに変身して、スイーツに宿るエネルギーキラキラルを狙う悪い妖精や、闇の存在ノワールが率いる謎の集団に立ち向かう。


コンセプトは「スイーツ×アニマル」。
今回の作品では、プリキュアたちの衣装が「スイーツ×アニマル」をモチーフにしたデザインになっているのが特徴となっています。
これまでは、共通のテーマのもと、色分けによって個性を表現するのが衣装デザインの主流でしたが、今回は大枠では「スイーツ×アニマル」という共通テーマであるものの、

キュアホイップ:ホイップクリーム×ウサギ
キュアカスタード:プリン×リス
キュアジェラート:アイス×ライオン
キュアマカロン:マカロン×ネコ
キュアショコラ:チョコレート×ネコ
キュアパルフェ:パフェ×ペガサス

といった具合に、各々好きなスイーツと性格に合わせた動物という異なるモチーフを元にデザインされています。

スタート時の5人のプリキュアのうち、2人が高校2年生という設定であることも、これまでにない設定でした。
5人プリキュアは過去作品にもありましたが、この作品での5人は、仲良し5人組というよりは、各人がそれぞれ異なる価値観や好みを持ち、本来なら友達関係になりそうもないのに、スイーツ好きという共通点をきっかけに友情や絆を深めていくという、まさに「みんな違って、みんな良い」を体現するかのような設定となっていました。

実際、スイーツおたくに、ロックバンドのボーカル、何でもできてしまう故に何事にも打ち込めない天才、宝塚歌劇団ばりのイケメン女子といった具合に、年齢差だけではなく、キャラ幅もかなり広く、各々単独行動を取りがちで、無理して誰かと同じことをしようとも、誰かに合わせようともしません。みんな自然体で、自分と違う仲間の価値観を認め合っているという、これまでのプリキュアチームにはない関係性が描かれているのです。

さらに、敵の怪物の設定も異なり、これまでの敵幹部が物や人などに悪のパワーを宿らせて生み出す巨大怪物というものではなく、はぐれものである悪い妖精たちが、それぞれ独自にいろんな町で悪さをしていて、スイーツに宿るエネルギー「キラキラル」を一定量吸収すると巨大化して、さらなる「キラキラル」を求めて暴れ出すという設定になっています。

また、大きな特徴の一つとして、パンチやキックの封印も挙げられます。
このことは、放送前のプレスリリースの段階で「肉弾戦ではなく、カラフルポップなバトルへシフト」などと発表されており、ファンたちの間でも賛否両論が起きていました。
第3話では、キュアジェラートがパンチを連打するも、ダメージを与えられず、巨大化した悪い妖精たちには、通常の攻撃は利かないことを教えられていました。

ダメージを与えられるのは、「キラキラル」を使った攻撃だけということで、この作品のプリキュアたちは、「キャンディロッド」という魔法のステッキを使い、「キラキラル」から生み出される「クリームエネルギー」を放出して戦います。

妖精の設定もこれまでのものとは異なります。
妖精たちは異世界ではなく、世界各地の隠れ里で穏やかに暮らしており、そこからはみ出して人間の町で悪さをする妖精がいたりと、人間たちと同じ世界の住人として登場します。
さらに、スイーツ作りの腕を高めた妖精は、人間への変身能力を持つようになるという設定があり、人の姿になって人間の町で暮らしている妖精が何人もいることになっています。

そのうちの一人が、パリで修行して日本で自分の店をオープンさせた若き天才パティシエ・キラ星シエルで、第23話でプリキュアに覚醒して仲間入りを果たします。

この作品のメイン妖精であるペコリンも、これまでとは異なる設定となっていました。
たくさんいる妖精たちの一人に過ぎず、特別な力は持ってはいないため、初回から登場しているものの、プリキュアに変身能力を与える存在でも、プリキュアたちに必要な情報を与える解説役でもなければ、プリキュアたちを導くお目付け役でもない、マスコットキャラクターという位置づけで、序盤はセリフ数が少なく、時には全く出番がない回すらあり、そのことをネットで揶揄される程でした。

このペコリンが真価を発揮したのは、主人公・宇佐美いちかが「キラキラル」を奪われてスイーツを好きな気持ちを失ってしまった第17話です。
それまでカワイイだけの存在かと思われていたペコリンが、スイーツなんてどうでもいいと言ういちかに怒りをぶつけ、クッキーを作るように勧め、それをきっかけにいちかは「キラキラル」を無事取り戻します。
さらに最終回間際の第47話では、長老とペコリンを残し、プリキュアたちを含めた全ての人間や妖精たちから「キラキラル」が失われてしまった世界で、ペコリンが一人で敵に立ち向かい、その諦めない気持ちから人間への変身能力を獲得し、遂にはプリキュアに覚醒するのです。
それまで、特別な力も持たず、非力な存在として描かれてきたペコリンが、誰にも頼れない絶体絶命の状況でありながら、その諦めない心で奇跡を起こし、世界を救う一手を繰り出す、ここにこの作品の最大のメッセージが込められているものと思われます。

このように、かなり大胆に設定や表現に変更を加えており、『プリキュア』という作品の限界にチャレンジするかのような作品で、さらに強気に復活へ向けての道を歩んでいくのです。

<トピックス>
5人中、高校生プリキュアが2人、妖精のプリキュアが1人の構成
◆ それぞれ異なるモチーフでデザインされた衣装
◆ パンチやキックを封印
◆ 悪い妖精が登場
◆ マスコットキャラクターがプリキュアに変身


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