『ONE PIECE』に『トムとジェリー』のオマージュが見られる件

8月6日放送のアニメ『ONE PIECE』第1071話で初登場した主人公ルフィの変身形態(覚醒フォルム)である「ギア5」が話題となっています。
この「ギア5」によってルフィが変身した姿「太陽の神“ニカ”」は、最終章に突入していることからも、ルフィが到達した最終形態と思われ、ファンの間でも段違いの注目度となっているようなのです。

今回登場した「ギア5」では、「世界で最もふざけた能力」と形容される程のひょうきんな動きが特徴で、原作でもそれまでになかったギャグマンガのような表現が導入されていました。
アニメでもそれを忠実に再現しているのですが、コミカルな動きに効果音も昭和時代のギャグアニメのようなものが使われており、明らかにこれまでのものと異なるテイストの演出表現が際立っていました。
この表現を見て、40代以上の視聴者の中には、懐かしさを覚えた方もいたかもしれません。

実は、この演出表現には元ネタがあって、それが『トムとジェリー』なのです。
『トムとジェリー』と言えば、日本では1964~1966年に初回放送されて後、1971年~1990年まで繰り返し再放送されていたため、1975年生まれの原作者・尾田栄一郎も子供の頃にこの作品を見ていたわけです。

『トムとジェリー』は、海外作品の輸入・国内配給から、翻訳・字幕・吹替などを行っていたトランスグローバルという会社が日本での放映・販売権を取得していたものの、1990年にターナー・エンターテイメント※1に版権が返還されたために、それ以降の再放送が行われなくなったとのことです※2
そのため、30代未満の多くは、子供時代に『トムとジェリー』に触れる機会があまりなかったと思われ、逆に「太陽の神“ニカ”」の戦いの演出表現を新鮮に感じているかもしれません。

特に特徴的だったのは目が何重にも飛び出る驚きの表現で、『トムとジェリー』でも特徴的な表現として印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

ルフィの変身形態の一つである「ギア3」は、指の骨に息を吹き込んで膨らませ、体の部位を巨大化させて攻撃する技でしたが、実はこれの元ネタも『トムとジェリー』に登場します。
それが、ジェリーのいとこでものすごく強いネズミのマッスルが使う技で、親指を咥えて膨らませるのも、まったく同じで、以前より一部のファンの間では指摘されていました。

「ギア3」だけではなく、『トムとジェリー』でジェリーにやられる際のトムの表現には、肉体がまるでゴムのようにグニャリとする場面が多くみられ、ゴムゴムの実の能力者であるルフィとの共通点が見て取れます。

トムのやられ姿を立体造形したものがTwitterで話題となり、公式でもカプセルトイが発売されていたりもしました。

『トムとジェリー』は契約の関係で以前程にはテレビ放送がされなくなってしまったわけですが、作品自体は時代を経ても色褪せない名作であると思われ、子供の頃に見ていた40代以上の方は幸運だったと言えるでしょう。
現在は関東圏でも地上波のテレビ放送はされていないようですが、衛星放送の専門チャンネルやネット配信では視聴が可能なようですので、『トムとジェリー』を見たことが無いという方々にも、これを機会に是非ともご視聴いただきたいところです。


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※1 ターナー・エンターテイメントは、現在は実体のないワーナー・ブラザースの名義のみの子会社となっています。

※2 TOKYO MXでは、2021年に『トムとジェリー』が放送されていました。カートゥーン ネットワークでは、『トムとジェリー』が現在も放送されています。