打切アニメ列伝④ アイドル番組に負けた『超獣機神ダンクーガ』

『超獣機神ダンクーガ』
1985年4月5日 ~ 12月27日/TBS/全38話
総監督:奥田誠治/シリーズ構成:藤川桂介/制作:葦プロダクション


『超獣機神ダンクーガ』の打ち切りについては、原因の前提として、同時刻の裏番組で社会現象とまで言われた高視聴率番組『夕やけニャンニャン』が放送されていたことが挙げられます。

旭通信社のプロデューサー・片岡義朗氏によると、玩具の売上低迷を打ち切りの原因としています。
また、奥田誠治監督によると、アメリカで起きた超合金ブームに乗っかってバンダイが商品在庫を全部輸出してしまい、国内の売り物がなくなってしまったためとのこと。
まとめると、強力過ぎた裏番組による視聴率低迷のために玩具が売れず、スポンサーであるバンダイが番組打ち切りを決定。
売れ残った商品をアメリカへの輸出し、在庫処分したということでしょうか。
結果として、全52話の予定を全38話に短縮する形で打ち切りとなりました。

超獣機神ダンクーガ』は、『超電磁ロボコン・バトラーV』から続くバンダイスポンサーの変形合体ロボットアニメの第10作目となる継承作品です。
しかしこの作品の不評のため、あえ無くもシリーズ最後の作品となってしまいました。

こうした経緯に反して、実は『超獣機神ダンクーガ』は、一部のファンからは熱烈な支持を得ている一面があります。
それは『超獣機神ダンクーガ』の独特なスタイルが要因となっています。
まず、『超獣機神ダンクーガ』では、ファッション誌での流行を取り入れた服飾デザインや、当時「シティボーイ」や「シティガール」と呼ばれた世代の若者言葉や文化を反映させていました。
さらに、当時の流行りである流線形を多用した大張正己によるメカデザイン、さらに過酷な戦場での愛憎を描いた群像劇といった要素が相まって、他作品と一線を画するスタイリッシュさがファンを魅了したのです。

基本ストーリーは「異空間から出現した侵略者に対抗すべく、密かに開発されていた4機の獣戦機と4人の個性的なパイロットで編成された獣戦機隊が地球を守る戦いに挑む」という至ってシンプルなものです。
ワシ、ヒョウ、ライオン、マンモスを模した4機の獣戦機がそれぞれ、兵器型のノーマルモード、アグレッシブモード、人型のヒューマロイドモードへの変形機能を持ち、その4機が合体して巨大ロボットになる合体変形ギミックシーンも人気でした。

『ONE PIECE』のフランキー役で知られる矢尾一樹が演じた主人公・藤原忍の口癖「やってやるぜ」が話題となって、矢尾一樹の代名詞的セリフともなり、後に『やってやるぜ情報局』という自身がパーソナリティを務めるラジオ番組のタイトルにまでなっていました。

化け物のような高視聴率番組が裏で放送されていたという不幸から、テレビ放映こそ打ち切られたものの、作品自体が悪かったわけではなかったのです。
その証拠に、悪条件の中でも確実に人気を得た作品であったことから、続編OVAやノベライズなどへと展開され、他作品よりも長く続く作品ともなりました。


打切アニメ列伝
① 玩具の売上不振か!?『闘将ダイモス』
② 打ち切りではなく延長?『SF西遊記スタージンガーII』
③ 期待する忍者アニメではなかった『忍者マン一平』
④ アイドル番組に負けた『超獣機神ダンクーガ』
⑤ 人気があったのに時代が悪かった『蒼き流星SPTレイズナー』
⑥ 日本アニメ史上最短で打ち切り『手塚治虫のドン・ドラキュラ』
⑦ 知られざるサンダーバードアニメ『科学救助隊テクノボイジャー』
⑧ タカトクトイス倒産で打ち切りになった『超攻速ガルビオン』『ふたり鷹』
⑨ 打ち切りではなく予定通りのイデエンド『魔境伝説アクロバンチ』
⑩ スポンサーの映画興行の失敗の煽りを受けた『FF:U ~ファイナルファンタジー:アンリミテッド~』
⑪ 人類滅亡の衝撃的ラスト『宇宙戦士バルディオス』前編
⑪ 人類滅亡の衝撃的ラスト『宇宙戦士バルディオス』中編
⑪ 人類滅亡の衝撃的ラスト『宇宙戦士バルディオス』後編
⑫ 大人の事情で放送終了『SLAM DUNK』
⑬ その不条理ギャグでスポンサーがゼロになった『ボボボーボ・ボーボボ』
⑭ 第2のガンダムを期待された『伝説巨神イデオン』前編
⑭ 第2のガンダムを期待された『伝説巨神イデオン』中編
⑭ 第2のガンダムを期待された『伝説巨神イデオン』後編