打切アニメ列伝⑦ 知られざるサンダーバードアニメ『科学救助隊テクノボイジャー』

『科学救助隊テクノボイジャー』
1982年4月17日 – 9月11日/フジテレビ/全18話
監督:長谷川康雄/制作:グリーン・ボックス、AIC

特撮人形劇『サンダーバード』のアニメ版として企画され、海外では『Thunderbirds 2086』のタイトルとなっている作品ですが、日本国内では、直前に放送されていた『サンダーバード』(再放送)の視聴率が悪く、「ポピニカ」※1のサンダーバード商品が売れなかったことから、スポンサーのポピーが『サンダーバード』の名前を付けることに難色を示したそうです。
しかし、作中に登場するメカには「TB」という略称が描かれているため、これに合う名前を検討した結果、Techno+Boy+Voyagerからの造語「TechnoBoyger」を採用したとのこと。

AICと共に本作品を作っていた制作会社のグリーン・ボックスは、実制作を担当していた(名義上は制作協力)『手塚治虫のドン・ドラキュラ』が打ち切りとなった際に、広告代理店の倒産で不渡り手形が生じた影響で、本作品の制作中に解散してしまいました。

そのことが影響しているのかはわかりませんが、国内では視聴率が悪く関連商品の売れ行きも悪かったことから第18話をもって打ち切りとなってしまいます。
元々海外販売を前提にしていたことから、24話まで制作されましたが、日本では6話が未放送となり、ポピーから発売される予定だった「ポピニカ DXテクノボイジャー」も未発売となりました。

『科学救助隊テクノボイジャー』のストーリーは、「21世紀の未来、科学文明が高度に発展した地球圏で、世界連邦は科学救助隊テクノボイジャーを設立し、大事故や凶悪犯罪、自然災害などに対処すべく、世界中から選び抜いた5人のエキスパートに人類の危機を救うための任務を与える」というもの。
基本的には『サンダーバード』と同じ世界を舞台にした救助隊のお話なのですが、隊員は家族(トレーシー家)ではなくて、国籍や人種も異なるメンバーとなっています。
その他にも、本家では5号までしかなかったサンダーバード機も、TB-1からTB-17まで17機が登場するなど、設定からデザインまで大分異なります。

第10話「恐怖のSOS細胞」では、グロス請け※2制作のアートランドに所属していた無名時代の美樹本晴彦がゲストキャラ(女性科学者・花岡咲子)のデザインを担当しており、これが、美樹本晴彦を一躍有名デザイナーに押し上げた人気作品『超時空要塞マクロス』のメインキャラ・早瀬未沙の特徴的な巻き髪のルーツであると、ファンの間で話題となりました。

当時は『サンダーバード』が不人気だったことから名前を変更するという判断が下った本作品ですが、今となってみると逆に『サンダーバード』のアニメ化作品とした方が、『サンダーバード』の再人気の際に浮上出来た可能性もあったと思われ残念です。


※1 ポピニカは「ポピーのミニカー」の略で、1972年より発売を開始したキャラクターミニカーのシリーズ。ロボットやヒーローなどを立体化した「超合金」に対して、乗り物や基地シリーズなどの立体化した商品のブランド名です。

※2 グロス請けとは、元請けとなった制作会社から下請けという形で、1話分の制作を請け負うことを指し、スタッフクレジットでは通例として「制作協力」のように表記されます。


打切アニメ列伝
① 玩具の売上不振か!?『闘将ダイモス』
② 打ち切りではなく延長?『SF西遊記スタージンガーII』
③ 期待する忍者アニメではなかった『忍者マン一平』
④ アイドル番組に負けた『超獣機神ダンクーガ』
⑤ 人気があったのに時代が悪かった『蒼き流星SPTレイズナー』
⑥ 日本アニメ史上最短で打ち切り『手塚治虫のドン・ドラキュラ』
⑦ 知られざるサンダーバードアニメ『科学救助隊テクノボイジャー』
⑧ タカトクトイス倒産で打ち切りになった『超攻速ガルビオン』『ふたり鷹』
⑨ 打ち切りではなく予定通りのイデエンド『魔境伝説アクロバンチ』
⑩ スポンサーの映画興行の失敗の煽りを受けた『FF:U ~ファイナルファンタジー:アンリミテッド~』
⑪ 人類滅亡の衝撃的ラスト『宇宙戦士バルディオス』前編
⑪ 人類滅亡の衝撃的ラスト『宇宙戦士バルディオス』中編
⑪ 人類滅亡の衝撃的ラスト『宇宙戦士バルディオス』後編
⑫ 大人の事情で放送終了『SLAM DUNK』
⑬ その不条理ギャグでスポンサーがゼロになった『ボボボーボ・ボーボボ』
⑭ 第2のガンダムを期待された『伝説巨神イデオン』前編
⑭ 第2のガンダムを期待された『伝説巨神イデオン』中編
⑭ 第2のガンダムを期待された『伝説巨神イデオン』後編