打切アニメ列伝⑧ タカトクトイス倒産で打ち切りになった『超攻速ガルビオン』『ふたり鷹』

アニメの解説書

『超攻速ガルビオン』
1984年2月3日~6月29日/テレビ朝日/第22話
総監督:鴫野彰/シリーズ構成:伊東恒久/制作:国際映画社

この作品は、メインスポンサーだった玩具メーカーのタカトクトイスが、1984年5月25日に不当たり手形を出して事業停止となり、総額約30億円の負債を抱えて倒産したため、急遽打ち切りとなってしまいました。

「2099年に異星人によって齎された科学技術によって発展した人類は、その邪な欲望によって第三次世界大戦を引き起こし、野蛮な地球人が宇宙に進出することを怖れた異星人は、地球をシグマバリアで覆い、地球人を封じ込めて去って行きます。やがて大戦による崩壊から復興した23世紀の未来、シグマバリアのために空を飛べなくなった地球は、地上輸送機関のみが異常に発展した世界となっており、長く平和が続いていましたが、暗躍しはじめた秘密組織SHADOの野望を打ち砕くべく、警察機構特務第一班主任のレイ・緑山が、私設機動車輌チーム「サーカス」を結成する」というお話で、基本は、元暴走族で荒っぽい天才レーサー・無宇と、大富豪の息子でスマートな麻矢とのバディものとなっています。

カーチェイスやスーパーカーから変形するロボット同士の戦闘がウリで、メカニックデザイナー・大畑晃一によるガルビオンは今見ても古さを感じない秀逸なデザインです。
急過ぎる打ち切りのために改修の余裕がなく、第22話を通常通り放送した後、「そしてこの後…」ではじまる約30秒のナレーションが挿入され、SHADOや全世界の権力を握ったヘンリーがレイ・緑山を愛してしまい身を亡ぼすという今後の展開の一部が語られたのみで終了。
本来であれば3~4クールまで作られる予定で、23話以降は、ヘンリーが幹部を消して全権を握ったシャドウによるシティの掌握や、指名手配犯にされたサーカスがシグマバリア制御装置を探す逃避行、最後はSHADOの壊滅や人類が空を取り戻す話が描かれるはずだったようです。
番組の打ち切りがスポンサー事情だけで済めば、『蒼き流星SPTレイズナー』のようにOVAで続編製作という展開があったかもしれませんが、翌年に制作会社が倒産してしまったために、その道も失われてしまい、ファンとしては残念なところでしょう。


『ふたり鷹』
1984年9月27日~1985年6月21日/フジテレビ/全32話
原作:新谷かおる(小学館「週刊少年サンデー」)/音楽:久石譲/制作:国際映画社、フジテレビ

タカトクトイスの倒産の影響は『超攻速ガルビオン』の打ち切りだけでは収まらず、タカトクトイスが大口スポンサーとなっていた制作会社の国際映画社も経営危機に陥り、1985年6月に倒産してしまいました。
『ふたり鷹』は、木曜19:30~20:00枠の全国放送で開始されるも、第13話から金曜17:00~17:30枠に移動して一部の地域では放送を終了し、さらに第24話からは金曜16:30~17:00枠へ移動した末、国際映画社の倒産のために32話で打ち切りとなってしまいました※。
6月14日に第32話「疾走!真昼のタイムリミット」を放送した翌週21日には第12話「涙のパンティ!! 愛の激走バトルロイヤル」を再放送し、28日からは『タイムパトロール隊オタスケマン』の再放送が始まっています。

東芝映像ソフトから総集編ビデオ1巻が発売された以外はソフト化もされていませんから、全話を見ることができたのは、リアルタイム視聴かビデオ録画のみ。今では幻のアニメ的存在となっています。
『ふたり鷹』は、沢渡鷹と東条鷹は同じ病院で同日に生まれながらも、一方はローリング族や暴走族を相手にするストリートライダー、一方はレーシングチーム所属のサーキットレーサーとなり、異なる世界に身を置いていましたが、東条との出会いをきっかけに沢渡がレース世界に参入。2人は同じ耐久バイクレースでライバルとして共に世界の頂点を目指すことになるのですが、実は2人には出征の秘密があり…。という物語で、テレビアニメとしては耐久バイクレースをテーマにした唯一の作品です。
鈴鹿サーキットと筑波サーキットの取材協力で、オープニングには迫力抜群なレースやクラッシュの実写映像が挿入されていることから本格的なバイクアニメかと思いきや、シリアス展開もありながら、ラブコメやドタバタ劇もありの作風で、レース場面よりもキャラクターの活躍の方が見せ場が多かったように思われます。
ちなみに、OP・ED曲を歌っているのは、なんと俳優の陣内孝則です。

実は、アニメにはバイクが登場することは珍しくないのですが、バイクやバイクレースをテーマにした、いわゆるバイクアニメは意外に少なく、本作品を除くと、
『ケンタウロスの伝説』
(1985年・劇場版アニメ)
『バリバリ伝説』(1986年・OVA)
『あいつとララバイ 水曜日のシンデレラ』(1987年・劇場版アニメ)
『サーキットエンジェル 決意のスターティング・グリッド』(1987年・OVA)
『風を抜け』(1988年・OVA)
『爆走サーキット・ロマン TWIN』(1989年・OVA)
『左のオクロック!!』(1989年・OVA)
『わんおふ -one off-』(2012年・OVA)
『マスター・オブ・トルク』(2015年・WEBアニメ)※
『ばくおん!!』(2016年・テレビアニメ)
『つうかあ』(2017年・テレビアニメ)
『スーパーカブ』(2021年・テレビアニメ)
くらいしかありません※。

ほとんどがOVA作品で、近年、美少女とおじさん趣味を掛け合わせる流行りで、女子高生×バイクの『ばくおん!!』、や女子高生×サイドカーレーシング『つうかあ』、女子高生×スーパーカブの『スーパーカブ』と俄かにバイクアニメが続きましたが、それ以前では、一般でも知られるアニメ作品としては『ふたり鷹』のみといった状況で、もし『ふたり鷹』がヒットしていれば、その後のバイクアニメの歴史も変わっていたかもしれません。


※ネット上では36話までのサブタイトルが掲載されていることから、打ち切り段階では、36話までの脚本が完成していたことが考えられます。国際映画社倒産時の混乱で、当時の資料が散逸して所在不明となっているとのことで、作品の詳細については不明点が多くあります。

※『マスター・オブ・トルク』は、2014~2016年にYouTubeで公開されたヤマハ発動機によるオリジナルPRアニメ。
https://global.yamaha-motor.com/jp/showroom/mt/

※『湘南爆走族』のOVAが1986~1999年に全12巻が発売されていますが、これをバイクアニメとするかどうかは議論の分かれるところです。本コラムでは、ヤンキーアニメ、あるいは暴走族アニメとの認識のために外しています。