打切アニメ列伝② 打ち切りではなく延長?『SF西遊記スタージンガーII』

『SF西遊記スタージンガーII』
1979年7月1日~ 8月26日/フジテレビ/全9話
原作:松本零士/監督:芹川有吾/シリーズ構成:田村多津夫/制作:東映動画
この作品が放送されたのは、『宇宙戦艦ヤマト』の大ブーム真っ只中。
日本テレビでは堺正章主演のドラマ『西遊記』(1978~1979年)が、TBSではザ・ドリフターズによる人形劇『飛べ!孫悟空』(1977~1979年)が放送されて人気を博していた時代です。
松本零士×SF×西遊記という、当時ブームだったものを全部盛りしたようなコンセプトで作られた作品で、ダイエーがスポンサーとなって子供向け衣料を独占販売しました。
第1シリーズ『SF西遊記スタージンガー』が1978年4月~1979年6月に第64話放送された後、同年7月から第2シリーズが放送されますが、わずか9話で放送終了しています。
この中途半端な短い話数での放送終了から、度々打切アニメとして取り上げられる作品となっています。
ところが、これは打ち切りではなく、『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』という後続番組の制作の遅れをカバーするために、番組が延長されたのではないかという話があるのです。
通常で考えると、急遽打ち切りになったからと言って、後続で新番組をすぐに放送することはできません。
他の事例で見ても、テレビ局の編成の都合上、時間的余裕のある時期に番組終了が決定され、後続番組を用意してから通常の番組編成期に合わせて切り替えが行われています。
そのため、『SF西遊記スタージンガーII』のように9話という中途半端な話数で終わる場合は、余程の事情を抱えて急遽放送打ち切りになったか、後続番組の都合で番組延長という2つのパターンしか考え難いところなのです。
打ち切りとなった番組の実例を挙げてみると、
『宇宙戦艦ヤマト』の後番組は、既存番組の『日立ドキュメンタリー すばらしい世界旅行』を放送枠移動で対応、
『手塚治虫のドン・ドラキュラ』の後は『けろっこデメタン』の再放送、
『蒼き流星SPTレイズナー』の後は『新・エースをねらえ!』の再放送、
と言った具合。
番組編成時期を無視した急遽打ち切りの場合には、新番組を用意するのが難しく、再放送だったり既存番組を移動させるなどして対応させざるを得ないわけです。
では、『SF西遊記スタージンガーII』の場合はどうでしょう。
8月26日の放送終了後、1週の間を置いた9月9日に、新番組『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』の放送が始まっており、これはさすがに早過ぎます。
この件について、関係者の証言が出ていないのであくまで推測の域は出ませんが、後続作品である『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』が何かしらの事情で制作遅延が発生し、中継ぎとして全9話の後日譚的物語の制作をすることになったのではないでしょうか。
第1シリーズの視聴率は平均15%以上※1でしたから、人気がなかったはずはありません。
5クール(全64話)も放送して堂々完結した作品の続編を放送するとなって、視聴率的な問題もなく第9話で急遽放送を取り止めなくてはいけない事情が見えてこないのです。
『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』の制作が遅れていたとする確固たる証拠がないので、あくまで想像の域を出ません。
しかし、もしそれが事実だとすれば、『SF西遊記スタージンガーII』も『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』も制作会社は同じ東映動画でしたから、自社内で起こった制作遅延の責任を自社内の調整で解決したということは、あながち考えられない話ではないように思われます。
第1シーズンの最終回では、オーロラ姫を無事大王星へ送り届けた帰り際のラストで、キティ博士から大王星に戻るように告げられる、取ってつけたかのようなシーンで番組が終わりました。
第2シーズンでは、新しいOP・EDが作られ、姫のコスチュームが新装されたり、クーゴに巨大化という能力を加えたりと、スタッフのやる気満々な印象を受けます。
物語も風呂敷を広げ過ぎず、全9話の中に収まり良くまとまっていて、やっつけ感や物語の破綻感もありません。
第1シーズンのラストでは、クーゴは、別れ際に姫から声をかけられても、気持ちを押し殺して無言で去っていくだけでした。
ところが、第2シーズンのラストでは、姫と別れた後、姫との旅の思い出を振り返って涙を流しながら、姫のいるであろう大王星へ向かって姫への想いを叫んでいます。
この辺りも、第1シーズンでの終わり方とは違うパターンの別れを描いてみせていることから、脚本家や演出家がこの作品でやりたいことをやり切った感が出ているような気がするのです。
第1シーズンでは、ギャラクシーエネルギー復活を成し遂げ、宇宙に平和を取り戻したはずでした。
しかしモンスターは一掃されたわけではなく、第2シーズン第1話では、再び現れたモンスターをやっつけにオーロラ姫と共に旅立つことになります。
そこで富田耕生演じるハッカが、『また姫に会えるなんて夢にも思わなかったぜ』と言うのに対し、富山敬演じるジョーゴが、『モンスターに感謝しなきゃいけないかもな』と返すシーンが描かれていました。
これを、第1シリーズだけで終わるはずだったものが、モンスター=『円卓の騎士物語 燃えろアーサー』の制作遅延のおかげで、全9話とは言え、後日譚として制作が延長されることになったことを喜ぶ脚本家のメッセージと解釈できるかとも思われますが、いかがでしょう。
※1 ファンクラブサイト(SF西遊記スタージンガー・FC)によると、『SF西遊記スタージンガー』は、最高視聴率21%(平均視聴率16.3%)、『SF西遊記スタージンガーII』は、最高視聴率:16.2%(平均視聴率:13.9%)とのこと。
打切アニメ列伝
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④ アイドル番組に負けた『超獣機神ダンクーガ』
⑤ 人気があったのに時代が悪かった『蒼き流星SPTレイズナー』
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⑦ 知られざるサンダーバードアニメ『科学救助隊テクノボイジャー』
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