打切アニメ列伝⑫ 大人の事情で放送終了『SLAM DUNK』

アニメの解説書

『SLAM DUNK』
1993年10月16日~1996年3月23日/テレビ朝日/全101話
原作:井上雄彦(集英社「週刊少年ジャンプ」)/シリーズディレクター:西沢信孝/制作:東映動画

言わずと知れた井上雄彦によるバスケットボールマンガの超人気作品のアニメ版ですが、原作はインターハイのトーナメント戦の途中である山王戦の決着を最後に1996年6月で連載が終了し、単行本は全31巻で完結となっています。この突然の連載終了は、井上雄彦側の版権管理と編集部の間で、ゲームなどの版権に関するトラブルがあったことが発端だとも※、連載の引き延ばしをさせたい編集部と井上雄彦と山王戦で終了に確執があったためとも言われています。

アニメでは、原作第22巻までの物語が描かれており、インターハイに入ることなく終了しています。
アニメは原作が連載終了になる3か月程前に放送終了となっています。
第96話までは原作準拠で、インターハイに向けて桜木花道が2万本のシュート練習で合宿シュートを会得するまでが描かれていましたが、第97~101話では湘北VS翔陽・陵南の特別編成チームとの練習試合が行われるアニメオリジナルストーリーが描かれ、インターハイの行われる広島へ向かう新幹線ホームで花道たちが気勢をあげるラストシーンで終わります。

最高視聴率21.4%(第18話)を記録した『SLAM DUNK』ですが、1995年10月から深夜枠からゴールデン枠に昇格したTBSの『筋肉番付』が最高視聴率25%超えの人気番組で、この強力な裏番組の登場によって、累計発行部数は1億2029万部を誇る人気作品のアニメと言えども、後半になると視聴率が下がり始め、最低視聴率7.8%(第91話)を記録する程でした。

集英社のジャンプ編集部とアニメを制作していた東映動画としては、原作マンガもアニメもインターハイの決勝戦まで描くつもりでいたようですが、井上雄彦が初志貫徹して山王戦で連載を終わせる意向を固めたか、あるいは編集部と交渉中で、原作の先行きが不透明な状況となったことと、先述の視聴率低下の件があって、インターハイに突入する前に一旦終了させて、原作の結末や井上雄彦の意向などで続編を作るか決めようというスタンスだったのでは、とも想像されます。
3月での終了というのは番組編成的にはキリが良い一方で、3週空けた1996年4月13日から新番組『地獄先生ぬ〜べ〜』が始まっているので、『SLAM DUNK』の放送終了の決定を受けて後続番組を前倒しに放送開始させ、さすがに翌週からとはいかずに、3週後でのスタートとなったのではないかとも考えられます。

このあたりの事情は、関係者からの証言が出てこないので推測の域を超えませんが、結果として物語の途中でアニメは放送終了となり、その後長い間続編も作られることはありませんでした。
それが2021年1月に井上雄彦が自身のTwitterにて「SLAM DUNK映画になります!」の画像をツイートして話題となり、その後今年に入り、正式タイトルが『THE FIRST SLAM DUNK』に、公開日が2022年12月3日に決定したことが発表されました。
井上雄彦自ら監督・脚本を務める力の入れようで、内容は未発表ながら、アニメで描かれることがなかった山王戦が描かれるのではとファンからの期待が高まっています。


※日刊サイゾー「連載終了は権利トラブルだった……集英社・鳥嶋和彦氏の異動で『SLAM DUNK』復活へ!?」