打切アニメ列伝③ 期待する忍者アニメではなかった『忍者マン一平』

『忍者マン一平』(1982年10~ 12月・)
1982年10月4日 – 12月27日/日本テレビ/全13話
原作:河合一慶(双葉社「100てんコミック」連載)/監督:高屋敷英夫/制作:東京ムービー新社


当時はテレビ朝日で放送中の『忍者ハットリくん』がヒットしており、忍者アニメが一つのジャンルとして定着しつつある時期でした。
忍者マン一平』前後には、下記の通り忍者アニメが多く作られています。

『まんが猿飛佐助』(1979年10月~1980年4月)
『忍者ハットリくん』(1981年9月~1987年12月)
『さすがの猿飛』(1982年10月~1984年3月)
『忍者戦士飛影』(1985年10月~1986年7月)

そんな忍者アニメブームの中、忍者を全面に出した作品が、月曜19時台に放送したのにも関わらず、低視聴率のために1クールで打ち切りになってしまったのです。

この放送枠は、『ガンバの冒険』『元祖天才バカボン』『ルパン三世(第2シリーズ)』『あしたのジョー2』『新・ド根性ガエル』『ゲームセンターあらし』と続く人気アニメ枠。
裏番組に強力な番組があったわけでもなく、『忍者マン一平』の後続も、『キャプテン』『キャッツ・アイ』『ガラスの仮面』『キャッツ・アイ(第2期)』『ダーティペア』と人気作品が続き、『忍者マン一平』だけが不支持という結果。

ちょうど裏番組で放送していた『あさりちゃん』とギャグテイストが似通っているということもありまました。
『あさりちゃん』放送前の18:50~19:00に10分版の『ハットリくん』が放送されていたので、こちらに視聴層が流れたとも考えられます。

内容に関して言えば、忍者小学校4年生の主人公と仲間たちが、様々な忍者たちや、ライバル関係のテクノ村のメカ小学校の生徒たちと対決したりするギャグ忍者ものです。
『忍たま乱太郎』と『さすがの猿飛』を足して二で割ったような感じの設定ではあるのですが、その忍術と言うのがかなり独特でした。

主人公・一平の得意忍術は、何と両目の眼球が顔から外れて遠くを偵察する「目ン玉特捜隊」。
飛び出した2つの目玉にはそれぞれに別人格があり、なぜか両腕も付いているのです。
その目玉が、空中を浮遊して偵察やらモノを取ってきたりと便利に使えるのですが、果たしてこれは忍術だろうかと首を傾げてしまうものでした。

この頃はまだ、忍者がこすり倒されて斬新な忍者を求めるという時代ではありません。
忍者らしい忍者でも充分に支持されており、むしろ典型的な忍者らしさが受けていた時代です。
それなのに、『忍者マン一平』では、忍び装束の忍者がほとんど出て来ません(亀の丞や上下逆五郎といったメインではないキャラのみ)。
主人公の衣装は、スウェットの上下にバンダナというスタイル。
マジック紛いのなんちゃって忍術や超能力だったり、コンピューターや魔法が出てきたりと、ごちゃ混ぜ感がウリのギャグ要素が強い作風だったのです。
つまり、『忍者マン一平』が支持されなかったのは、当時の子供たちが求める、忍者らしい忍者が出てこないところに要因があったのではないかと推察されます。
忍者ものがやり尽くされた後に登場していたら、また違った結果になっていたとも考えられ、時代を先取りし過ぎたのかもしれません。


打切アニメ列伝
① 玩具の売上不振か!?『闘将ダイモス』
② 打ち切りではなく延長?『SF西遊記スタージンガーII』
③ 期待する忍者アニメではなかった『忍者マン一平』
④ アイドル番組に負けた『超獣機神ダンクーガ』
⑤ 人気があったのに時代が悪かった『蒼き流星SPTレイズナー』
⑥ 日本アニメ史上最短で打ち切り『手塚治虫のドン・ドラキュラ』
⑦ 知られざるサンダーバードアニメ『科学救助隊テクノボイジャー』
⑧ タカトクトイス倒産で打ち切りになった『超攻速ガルビオン』『ふたり鷹』
⑨ 打ち切りではなく予定通りのイデエンド『魔境伝説アクロバンチ』
⑩ スポンサーの映画興行の失敗の煽りを受けた『FF:U ~ファイナルファンタジー:アンリミテッド~』
⑪ 人類滅亡の衝撃的ラスト『宇宙戦士バルディオス』前編
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