カプセルトイのことについてもう少し語ってみた件 ④「ガチャガチャ」の活用あれこれ

前回まで数回にわたり、現在に至るカプセルトイ(ガチャガチャ)のヒットの歴史をお話しましたが、今回は、現在の活用例とちょっと先の未来のガチャガチャ事情をお話してみたいと思います。

催事物としての活用
大型商業施設の催事場や駅の構内などで、ガチャガチャの催事が期間限定で開催されていることがあります。
運営会社はいくつかあるようですが、代表的なのは、gashacocoを運営するハピネットが展開している「Capsule MARCHE」です。主に駅の構内などを会場として期間限定でガチャガチャの催事を開いています※1
駅ナカや商業施設内の催事スペースで行われる催事物(デパートの大型催事場を除く)というと、物産展や古書即売展、和菓子や洋菓子などの店が昔から出店していたことと思います。
これらは集客目的の催事ではなく、むしろ逆に駅や商業施設の乗降客数・集客力を見込んで、売上を上げるために行われるものです。
こうした中に、ガチャガチャも参入しており、今後もこの動きは拡大していくことでしょう。

地域活性化のためのローカルガチャ
観光案内所などで、地元の名物などをモチーフにカプセルトイ化したものがガチャガチャで販売されているのを見かけた方もいるでしょう。
もっとスケールの大きな観光で言えば、訪日外国人向けに、空港などで日本文化を象徴するガチャガチャが設置されているのも、現在では珍しくない光景となっています※2
駅の構内に設置されているものも同様と言えそうです。
そこでしか入手不可なレアアイテムで、SNSでバズリそうな商品開発ができれば、地元の集客効果も期待できるはずです。

カプセルトイ自販機自体がPR素材
今や完全に市民権を得たガチャガチャは、そこにあるだけで期待感や注目を集めるものとなっているため、注目されにくい商品でも、ガチャガチャで販売することで人の目を引くことができたりもします。
単に店先に並べて「新商品」のポップを付けるよりも、商品販売に話題性を加えられるというわけです。


博物館・水族館にガチャガチャ、図書館は…
ガチャガチャ博物館水族館といったものと非常に相性が良いため、以前から多くの施設のロビーでカプセルトイ自販機が設置されています。
最近のカプセルトイはプロも納得するようなクオリティの高い商品が多いので、展示物への関心や好奇心のをかきたてる効果の面でも、単純に施設の土産物としても、最適なものと言えそうです。

相性が良いものの、まだ進んでいないのが図書館です。
実は図書館でもガチャガチャを設置しているところもあるのですが、まだまだ珍しい少数例に過ぎません。
これには、民間の施設が多く、また入場料を取ったり土産物を販売する博物館や水族館という存在とは異なり、図書館はそのほとんどが公共施設であることが要因であるようです。
館内へのカプセルトイ自販機の設置による収益目的だけでなく、偶然の出会いを演出する本ガチャだったり、アイデア次第でいろんな活用法が見出せそうです。

多業種の民間企業による活用
みなさんは、「旅くじ」というものをご存じでしょうか?
これは、格安航空会社のPeachの運営会社Peach Aviationが、2021年に心斎橋PARCOや渋谷PARCOで発売した商品です。
オリジナルの自販機を使い、行き先がわからない航空券の入ったカプセルを販売するというものでしたが、たちまちSNSや各メディアで話題となり、累計販売数 1万個を超える大ヒット商品となりました※3


福引の代替
商店街や商業施設の福引きなどでは、ガラガラ(正式名称:新井式回転抽選器※4)が定番で、昭和的な風情がありますが、最近ではガチャガチャで代替するケースが見受けられます。
多くの子供たちにとっては、大きなガラガラを回すのは困難な上(小さなものも売っていますが)、ガチャガチャの方が馴染みのある子供も多いこともあるのでしょう。


キャッシュレス対応ガチャ
バンダイは、2019年に「SMART GASHAPON(スマートガシャポン)」、2022年に「ガシャポンステーション W」、というキャッシュレス決済対応型のカプセルトイ自販機をリリースしています※5
キャッシュレス社会への対応や、通貨の異なる海外展開を見越しての動きかと思われますが、ターゲット層が大人な店舗運営だからこその動きとも言えるでしょう。
子供にとっては、硬貨でガチャガチャを回すという体験自体が楽しさでもあるので、ハイブリッド型の「ガシャポンステーション W」のように、硬貨使用も残していく流れになるものと思われます。

在庫処分方法の福袋の代替
店舗運営における在庫処分の方法には、福袋が定番でしたが、歳末セールなどの特別なタイミングでないと実施しにくい(売れない)ので、恒常的に実施できる手段ではありませんでした。
そこで、〇〇円以上お買い上げの方にガチャガチャを回してもらい、そこで在庫品を景品として配ってしまうという方法が考えられます。
ガチャガチャを回すという楽しさに、無料の景品ですからお得感を感じやすく、店的にも直接販売ではないものの、売上に貢献する上に在庫も処分できてしまう一石二鳥な施策です。
在庫処分ではありませんが、同じやり方で中身を10%オフから50%オフまでのクーポンを入れることで、単純な売上UPと集客効果を図る施策にもなり得そうです。


トークイベントや合コンの場での話題提供
テレビでも時折見かけますが、会話のテーマが書かれた紙が入ったカプセルを自販機に入れ、ランダムに出てくるテーマに沿って会話をしていくというものです。
トークショーなどで、話題を変えていくきっかけ作りや、観客を飽きさせない演出にもなります。
飲み屋やバーなどテーブルに小型の自販機を置き、10円とかの少額で販売を行えば、初めて会う面々でも、話題を上手く繋げて楽しい飲み会にすることができるかもしれません。
これらのように、アイデア次第でいかようにも活用できる汎用性や拡張性が、ガチャガチャの特性でもあります。ガチャガチャの活用法は現在もまだやり尽くしたとまでは言えず、未開の地は広大に広がっています。
他がやっていない新しい使用方法や取り組みを開発することで、大きな利益や効果を生み出せる可能性が十分にあるわけです。

カプセルトイ自販機は低コスト
カプセルトイ自販機自体は、小型のものなら3000~5000円、中型のものでは1~2万円、屋外にもおける業務用のしっかりしたものだと2万5000~5万円程と、業務用のプリンターなどのオフィスの機器に比べれば比較的安価な部類に入るかと思われます。
もちろん一般人でも1台から購入可能ですし、専門知識などなくとも、説明書を見れば誰でも運用が可能です。
さらに、飲料水の自販機などと異なり、通常のカプセルトイ自販機は、電気が不要な上、軽いので移動もしやすく、運用コストの面でも取り扱いの面でも、とても導入しやすいものとなっているのです。
空のカプセルも1個数十円で10個、50個、100個などの数量単位で購入できますから、購入したその日からはじめられる手軽さもガチャガチャの魅力の一つでと言えるでしょう。
実は、カプセルトイ自販機の構造は結構単純なので、自作も可能だったりします。
筆者もかつて作ったことがありますが、よほどの不器用さんでない限り、空き箱やカッター、糊、セロテープといったどの家庭にもあるようなものだけで、特別な材料も道具も不要で作ることができます。

カプセルトイ専門店は観光スポット
ガチャガチャ自体の活用法ではなく、カプセルトイ専門店を誘致することで、集客や街の活性化を促すという手段もあるでしょう。
今やカプセルトイ専門店は集客効果の高い施設で、地元民のみならず、訪日外国人向けの観光スポットにもなっています。
自治体の観光課や観光協会、タクシーなども含め、地元の観光名所や特産物、土産物屋には詳しくとも、サブカルチャーに弱いところが多く、外国人観光客にカプセルトイ専門店の場所を尋ねられても答えられない案内員やタクシー運転手も多いのではないでしょうか。
先のコラムでも触れましたが、出店が加速しているカプセルトイ専門店は、Google mapなどのWEBマップサービスやゼンリンの地図などの地図サービス、カーナビなどでは、なかなか追いつけていないのが現状です。
Google mapに載っているからとお客を案内したらもう閉店していましたとか、近くにあるのにカーナビに出てこないので案内できませんでした、ということも往々にあることでしょう。

そういう意味で、インバウンドや地元の観光も含め、カプセルトイ専門店地元ガチャの情報などを網羅的に扱い、観光関連のサービスに提供できる仕組みが急務かと思われますが、なかなかそのようなサービスがまだ登場していないのは、何とも残念なことです。
カプセルトイ協会や国のインバウンド施策で、これらを補助金などで運営して整備する動きが今後出てきてくれることを願いたいところです。

〈了〉


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※1 通常は7~10日間程の開催ですが、池袋駅構内のものは常設で設置されています。
最近は駅の構内や駅ビルで店舗型の「Capsule MARCHE」も出店し始めました。

※2成田空港や関西国際空港をはじめとする空港では、出国の際の訪日外国人に、余った小銭を使ってもらおうという触れ込みで、大量のカプセルトイ自販機が設置されています。

※3 「旅くじ」は1回5,000円のカプセル​型​​自販機で、カプセルの中に、①指定された行き先、②旅のミッション、③Peachの航空券(行き先限定)が購入できるピーチポイント6000円分、④オリジナル缶バッジの4点が入っています。
心斎橋PARCO(大阪)、渋谷PARCOの他、札幌PARCO、仙台PARCO、名古屋PARCO、福岡PARCO、 サンエー浦添西海岸 PARCO CITY(沖縄)などでも展開していましたが、2023年には大阪と沖縄を残し、他の施設では2022年に販売を終了しています。

※4 昭和4年(1929年)に帽子屋の店主・新井氏が開発したもので、ハンドルがついた六角形や八角形の木製の箱を回転させて出てきた抽選球の色によって賞品が決まる仕組み。
東京抽籤器研究所の専売特許でしたが、現在は特許権の有効期限が過ぎています。

※5 「SMART GASHAPON(スマートガシャポン)」は、連結された複数台のカプセルトイ自販機を、付属するタッチパネルで商品を選択して決済する仕組みで、現金は使用不可。
「ガシャポンステーション W」」の方は、1台で現金決済にもキャッシュレス決済にも対応します。


カプセルトイ専門店がすでに600店もできている件 前編
カプセルトイ専門店がすでに600店もできている件 後編
カプセルトイ専門店がすでに1,200店もできている件 前編
カプセルトイ専門店がすでに1,200店もできている件 後編
カプセルトイのことについてもう少し語ってみた件
①「ガチャガチャ」or「カプセルトイ」
②「ガチャガチャ」誕生の歴史・前編
②「ガチャガチャ」誕生の歴史・後編
③「ガチャガチャ」ヒットの歴史・前編
③「ガチャガチャ」ヒットの歴史・後編
④「ガチャガチャ」の活用あれこれ