カプセルトイ専門店がすでに1,200店もできている件 前編
昨年4月に「カプセルトイ専門店がすでに600店もできている件」というタイトルでコラムを掲載しましたが、1年以上経過した2024年9月現在、カプセルトイ専門店は、1,200店以上にも増殖しています。
カプセルトイ専門店の出店スピードが加速中
神籬の運営しているスポット情報データベースから、2024年9月時点でのカプセルトイ専門店の店舗数をピックアップしたデータが下記の通り。
先のコラム時のデータでは、88店で最多出店数だったC-plaが171店舗と大幅に店舗数を増やしているのですが、ガシャポンバンダイオフィシャルショップはそれを上回る210店という出店数で首位に上っています。
ガシャポンバンダイオフィシャルショップは、前回は出店数59店で第6位だったので、ここ1年程の間にかなりのスピードで出店数を伸ばしてきたことが伺えます。
出店数の拡大はカプセルトイ業界全体の傾向で、前回はその他に含まれていた店も、今回は個別にリストアップされているので、前回紹介していない店舗について、ここで紹介したいと思います。
Gachamanbou(ガチャマンボウ)は、商業施設のゲームコーナーNEXUSの企画・運営を手掛ける大阪府大阪市の株式会社ネクサスエンタープライズが、2018年9月から展開しているカプセルトイ専門店です。
イオンモールやゆめタウンを中心に全国の大型操業施設に出店しています。
CAPSULE TOYSは、商業施設のアピタやピアゴを運営するユニー株式会社が、アピタ各店内で運営しているカプセルトイ専門店です。
カプセル楽局は、メディアショップのGEOやリユースショップの2nd STREETで知られる株式会社ゲオが展開するカプセルトイ専門店。
2022年7月に1号店となるときわ台駅前店のオープン以降、東京都内で店舗数を拡大しています。
その名の通り薬局をイメージしており、店員が白衣を着ているのが特徴です。
ガチャ牧場は、兵庫県神戸市の株式会社神戸コスモスが展開するカプセルトイ専門店。
1号店となるイオンタウン伊勢ララパーク店を2021年に出店して以降、兵庫県・大阪府を中心に店舗を拡大しています。
CAPSULE LABは、ゲームソフトウェアメーカーであるCAPCOMが、全国各地の大型商業施設で展開するカプセルトイ専門店です。
GACHAPは、茨城県笠間市の株式会社クリエイション・コムが展開しているカプセルトイ専門店。
千葉県、茨城県を中心に関東各地に出店しています。
ガチャ王国は、株式会社マキシム愛媛が運営するカプセルトイ専門店で、ガチャコーナーの「ガチャ王国」とミニチュア雑貨店「オズコレボ」を併設した直営店となっています。四国各地と広島県に出店。
KENELESTANDは、東京都千代田区の株式会社ケンエレファントが運営するカプセルトイ専門店。
主に駅及び駅ビルの構内に店を構えるスタイルで、2020年7月に秋葉原に1号店をオープンして以降、東京都を中心に、横浜、名古屋、京都、札幌などへも出店しています。
店名もなく店舗形式ではない商業施設内のカプセルトイコーナーなどを含めると、実際にはもっと多くのカプセルトイ市場が展開されていることと思われます。
また、最近では駅構内やコンビニ、土産物屋、雑貨屋、回転寿司などの店内でもカプセルトイの筐体を見かけるようになり、全国のカプセルトイ筐体の設置台数は想像をはるかに超えて増えていることが伺えます。
カプセルトイメーカーの飛躍
この急速な市場拡大に伴い、商品を供給するカプセルトイメーカーも提供商品数を増やしており、毎月500種類以上もの新商品をリリースしているとのことです。
現在見られるようなカプセルトイブーム以前には、クレーンゲームの方が話題に上ることが多く、ブームともなっていました。
これは、クレーンゲームで扱われるプライズ商品が、バンダイスピリッツ(バンプレスト)やセガなどをはじめとするプライズ商品メーカーの企業努力によって高品質化することで、ファンの注目度が高まったことが要因と言えるでしょう。
特に、『ONE PIECE』や初音ミクなどの高クオリティのフィギュアなどが、当時はSNSなどで連日のように話題になっていました。
これに比べ、当時のカプセルトイは、100~200円程度の商品が主流で、薄利な商売に過ぎず、どのメーカーでも利益を上げるのに苦労していたようでした。
流れが変わりはじめたのは、奇譚クラブではなかったかと思われます。
奇譚クラブでは、2010年頃から「江頭2:50ストラップ」や「土下座ストラップ」といったちょっと変わったおもしろ系カプセルトイを発売していましたが、2012年に発売された「コップのフチ子」が700万個を売る大ヒット商品となりました。
奇譚クラブの台頭以降、他のメーカーもネタ系のカプセルトイを次々に展開するようになり、話題にされたもの勝ちのウケ狙いのようなアイデア合戦の様相を呈すことになります。
この下地には、2000年代のチョコエッグや食玩ブームの影響も少なからずあったかもしれません。
チョコエッグや食玩もカプセルトイ同様に低価格でしたが、ブームを起こすことで、それなりの商売になることが証明された出来事だったからです。
しかしその後、このアイデア勝負のような商品開発合戦で、数多く生み出されたウケ狙い系の商品がややマンネリ化し始めると、今度は高品質化が始まり、物価高騰もあいまって高価格化が進みます。
現在では500円商品は当たり前で、1,000~1,500円の高価格帯シリーズとして打ち出しているバンダイの「PREMIUM GASHAPON」では、ついに2,000円の商品まで登場しました。
クレーンゲームで扱われる景品の価格は、実は風俗営業法で規制されており、「小売価格がおおむね800円以下のもの」と定められています。
2022年3月には、20年以上ぶりに改定されて800円の基準が、1,000円へと引き上げられましたが、規制があるのは変わりがありません。
しかし、カプセルトイは、クレーンゲームやスロットマシン、テレビゲーム機など射幸心をそそるとして規制対象となる遊技設備に該当しないため、当然価格の規制もありません。
何が出てくるかわからないとはいえ、100円を入れて100円相当の商品が出てくる以上、自動販売機の一種と解釈されるからです。
実際には、全種コンプリートのためや、欲しい種類のものを入手すべく、何度も回してしまうことは、射幸心をそそるのでは、とも取れるものの、それは買う側の選り好みに過ぎないというわけです。
クレーンゲームの場合は、100円で1,000円相当のものを入手出来てしまうこともある一方、カプセルトイの場合は、種類に好き嫌いはあっても、100円で得られるものは100円相当のものしかありません。
これが、100円のカプセルトイの種類の中に、1,000円相当のものや、逆に10円相当のものなどが入っていて、明確に金額的価値の違うアタリ・ハズレのある商品が混在しているとなると、射幸心をそそるとして規制の対象になりかねないわけです。
クレーンゲームブームがやや下火になってきた頃、同じく注目されていたカプセルトイが勢いを増し、かつてのクレーンゲームブームを凌ぐ程の過熱ぶりを示しています。
カプセルトイの課題だった収益性が、市場の拡大や高価格化で解消されたことや、運用コストの低さや管理のしやすさがある上、商業施設にとっては集客効果も見込めるとあって、導入する店舗が後を絶ちません。
かつてはカプセルトイ業者が、筐体を置かせて欲しいと商業施設に頼んでいましたが、現在では商業施設側が出店を依頼するケースが増え、カプセルトイ業者が候補地を選定する逆転現象が起きている有様です。
次回に続く。
〈了〉
神籬では、全国のカプセルトイ専門店の所在地、オープン日、運営会社等の情報をまとめてデータベース化しています。
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