カプセルトイ専門店がすでに1,200店もできている件 後編

前回、カプセルトイの出店スピードが加速していることや、カプセルトイの高品質・高価格化について解説しましたが、今回はさらにカプセルトイのカルチャーについて見ていきたいと思います。

ガチャ活カルチャー
カプセルトイの発祥国はアメリカで、日本ではアメリカから輸入された1965年からその歴史が始まっています。
現在では、発祥国であるアメリカをはるかに超えて、カプセルトイ文化が発展しており、もはや日本のお家芸と言っても差し支えないでしょう。

初期には、子供がお小遣いで買うものでしかなかったカプセルトイですが、今ではメインターゲットが子供から大人へとシフトしており、子供のお小遣いでは買えないような高額商品も登場している程です。
「オタ活」「推し活」などの言葉から派生して「ガチャ活」なる言葉も生まれ、コレクションの収集はもちろんのこと、ディスプレイしたり、SNSにアップしたりといった活動が普及して、それが当たり前のこととして世間でも認知されているはずです。

日本カプセルトイ協会による「2023年度カプセルトイ市場動向調査結果報告」によると、市場規模は2022 年度の720億円から159.7%アップの約 1,150 億円とのこと。
今後も拡大が予測されますが、どこまで伸びていくものか想像できない程です。

カプセルトイの海外進出
カプセルトイは海外でも知る人が多く、訪日外国人観光客の中には、カプセルトイを日本観光の楽しみの一つとしている人も少なくありません。
そんな海外からも注目度の高いカプセルトイですから、海外進出を考えるのも当然の流れと言えるでしょう。

バンダイナムコアミューズメントは、2022年4月に、海外初出店となる「ガシャポン バンダイオフィシャルショップ 王府井APM MALL店」を中国の北京でオープンさせたのを皮切りに、イギリス、アメリカ、韓国、オーストラリア、東南アジア各国へと次々に出店しており、すてに海外店舗の数は50店舗を超えています。
さらにバンダイは、2025年3月期にカプセルトイ専門店を海外で80店以上開く方針を発表しており、これにより、海外店舗数は130店舗を超える見込みです。

海外でカプセルトイが浸透すると、いずれは、「ガシャポン」や「ガチャガチャ」という言葉が、「アニメ」や「マンガ」のように、日本カルチャーとして、海外でも一般名詞化していき、英語の辞書にも掲載されるようになるかもしれません。

カプセルトイ業界のSDGsの取り組み
近年、社会的にSDGsの取り組みが行われている中、プラスチック製のカプセルを使うカプセルトイにも、環境対策における社会的義務を問う視線が向けられるのは必定です。
メーカーではこれまでも、対策として空カプセルの回収を主に取り組んできました。
その他にも、カプセルのリサイクルやカプセルの縮小化によるプラスチック使用量の削減に努めてきました。

そんな中、2021年度販売実績で、年間で約1億個のプラスチック(ポリプロピレン)製カプセルを市場に供給していたバンダイは、紙パウダー51%、ポリプロピレン(PP)49%を混成させたバイオマス素材「MAPKA(マプカ)」を使用した新しいカプセル「マプカプセル」の導入を始めました。

カプセルトイメーカーの一つであるケーツーステーションでは、でんぷん40%×パルプ60%で製造される世界初の紙製トイカプセル「ecoポン」※1を開発し、市場提供を始めています。

こうした取り組みも、海外進出の上では重要で、各国で批判されずにうまく受け入れられるようにする下準備とも考えられます。

アニメやマンガ、ゲームといったコンテンツや、聖地巡礼などのオタクカルチャーを学術的に研究する動きも見られますが、いずれはこのカプセルトイという文化についても、文化史の一つとして研究対象となっていくことも考えられます。
あるいは、インバウンドツーリズムの観点で、観光スポットとして、観光協会や旅行会社が旅の目的地の一つとして案内したり、旅行ガイド誌に掲載されたりすることも考えられます。
Googleマップなどのマップサービスにしても、出店スピードに追い付けないのか、掲載されていない店舗が数多くあり、閉店情報なども追いきれていないのが現状です。

各運営企業が自社サイトで案内しているような店舗情報※2ばかりでなく、企業の垣根を超えて全てのカプセルトイ専門店が把握できるサービスなども求められるでしょう。
バンダイナムコがそれに近いサービスを行っていますが、掲載されていない店舗も数多く(おそらく自社のカプセルトイ商品の取引先のみの掲載のためだろうと思われますが)、網羅性という点では完全とは言い難いものがあります※3
https://gashapon.jp/shop/gplus_list.php
日本カプセルトイ協会などが、カプセルトイナビのような網羅性を持った店舗リスト・ナビゲーションサービスを出してくることも期待したいところです。

〈了〉


神籬では、全国のカプセルトイ専門店の所在地、オープン日、運営会社等の情報をまとめてデータベース化しています。
データベースには、カプセルトイ専門店の他、アニメショップやコラボ店、聖地やデザインマンホールなどのモニュメント、アニメやマンガ、ゲームに関連するスポット情報なども多岐にわたる情報が収集されており、これらの情報提供の他、アニメの文化振興や関連事業への協力、アニメを活用した自治体や企業へのサービス・イベント・事業などの企画立案など様々な活動を行っています。


※1 「ecoポン」は、株式会社ケーツーステーションと、段ボール製造大手のレンゴー株式会社、「パルプ射出成形(PIM)技術」の特許を有する大宝工業株式会社の3社共同での開発。
ケーツーステーションが企画・販売、レンゴー株式会社が性能試験・評価、大宝工業が製造を担当する体制で、市場に製品を提供しています。
2020年6月に回転寿司チェーン・くら寿司の「ビッくらポン」で試験導入され、同年7月にプレスリリースを公開。
「ecoポン」の名称は、トイカプセルの他、自社で販売するカプセルトイの商標としても使用されています。

※2 株式会社ネクサスエンタープライズが展開するGachamanbou(ガチャマンボウ)などは、公式サイトで店舗情報を公開していないため、出店先の各店舗サイトでしか店舗情報を確認することができません。

※3 バンダイナムコのガシャポン公式サイトにある「全国のお店をカンタン検索」では、ガシャポン バンダイオフィシャルショップやガシャポンのデパートといったバンダイナムコ系の店舗は概ね掲載されていますが、TOYS SPOT PALOやカプセル楽局、ガチャマンボウなどの店が入っていなかったりして、網羅的に掲載されているわけではありません。
また、イオンモールや雑貨屋などの商業施設内や駅構内などのカプセルトイコーナーや、カプセルトイを置いているゲームセンターといったものまでも同列で掲載されているので、カプセルトイ専門店だけを検索することもできません。
カプセルトイ専門店以外の店も多分に含むリストで、2024年9月時点での件数は1,021店ですから、神籬で把握しているカプセルトイ専門店の1,272店よりもかなり少ないことがわかります。


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