カプセルトイ専門店がすでに600店以上もできている件 後編

前回はカプセルトイ専門店を展開している企業の勢力図を見てみましたが、今回はカプセルトイの事業について解説していきたいと思います。

まずは基本的な点から。
「カプセルトイ」というのは、いわゆる「ガチャガチャ」「ガシャポン」などと呼ばれる自動販売機の中に入っている小型玩具を指す言葉で、この自販機を指してカプセルトイとは言いません。
逆に「カプセルトイ」のことは、「ガチャガチャ」と言う場合がありますね。

カプセルトイ = カプセルに入れて販売される小型玩具
ガチャガチャ = カプセルトイの自動販売機(筐体)。カプセルトイを指す場合もあり

クレーンゲームの景品などとは異なり、自動販売機で販売される玩具という扱いなので、風営法などでの制限がなく、基本的には価格の上限などもありません。
しかしガチャガチャには、ゲームではないものの、商品ラインナップの中から何が出てくるかわからないというゲーム性があります。ハンドルを回すというアクションもあって、単なる買い物である“モノ消費”ではなく、体験遊戯である“コト消費”に近い存在であるわけです。
価格上限などの法律上の制限も少ない上、遊戯性もある良いとこ取りな存在なのです。

以前は、カプセルトイの中身だけを買取・販売しているお店があって、こちらを「カプセルトイ専門店」、店内がガチャガチャの筐体(自販機)で埋め尽くされているような無人店を「ガチャ専門店」と呼称していました。
ところが最近では、カプセルトイの中身を販売しているお店が減り(ネット販売に移行)、ガチャガチャの筐体が並んだ無人販売店が主流になったことから、これらの店も含めて「カプセルトイ専門店」という呼称で統一されるようになりました。

ガチャガチャは海外発祥で、1965年に米国から輸入されたのがはじまりとのことなので、日本におけるガチャガチャの歴史はすでに60年近くもあります。
昭和の時代のガチャガチャは、子供たちをターゲットにしており、主に駄菓子屋や玩具店の店先や、スーパーやデパートの片隅などに置かれていました。

その後、1990年代後半の『新世紀エヴァンゲリオン』のブーム、1999年のチョコエッグから始まった食玩ブームなどで、小型玩具のシェアが拡大し、大人をターゲットにした食玩やカプセルトイが一般層にも浸透していきます。
2002年には、ガチャガチャを店舗内に並べた「ガチャ専門店」が秋葉原に登場して話題となりました。
現在も営業している秋葉原ガチャポン会館です。

これ以降、各地に同じような業態のお店が出現しましたが、近年まで男性のオタクたちや一部のコレクターを対象とした商品がメインで、女性客が入り難いようなマニア向けの店といった様子でした。
その後、デパートの一角などでガチャガチャを並べたコーナーが続々と出来始めましたが、ノウハウがないせいなのか、両替機が置いてなくてチャンスロスをしているようなところも多く、まだまだ未発達な印象がありました。

これに対し、近年拡大しているカプセルトイ専門店は、女性向けに特化する戦略で出店され、大きな成功を収めています。
白を基調とした明るくポップな印象の店舗づくりに、女性向けの商品をメインに仕入れているのが特徴です。

女性向けに特化していると言っても、男性客やマニア向け商品を切り捨てているわけではなく、店の前面は女性向け商品を並べ、店の奥に行くほどマニアックなものや男性客向けの商品が並ぶような配置となっているのです。

もちろん両替機もちゃんと設置されていて抜け目がなく、商品ディスプレイがある店舗も少なくありません。
さらに何百台もあるガチャガチャの筐体はPOSで管理され、在庫や収益をリアルタイムで把握して、的確な商品補充で売り切れのチャンスロスを回避すると共に、どのような商品が売れ行きが良くて、今後拡充していくべきかという販売戦略にも役立つという行き届いたシステムとなっており、完成度の高いビジネスモデルともなっています。

今日のカプセルトイ専門店の発展が、女性向けへの転換がきっかけであることは、日本最大のアニメショップであるアニメイトが女性向けへと運営方針を展開したことで発展したのと共通していてなかなか興味深いところです。
エンタメ業界の成功ポイントは、いかに女性客の支持を得られるかという点にあるのかもしれません。


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※ クレーンゲームの景品は、風俗営業法の規定や日本アミューズメント産業協会のガイドラインによって、小売価格1,000円以下の物品にするように定められています。
この他、営業時間の制限(24時間営業不可)や、年齢による時間帯入場制限(未成年の入場は18時まで)といった風営法にいる制限、自治体の条例などによる出店制限などの規制もあります。