カプセルトイのことについてもう少し語ってみた件 ③「ガチャガチャ」ヒットの歴史・後編

前回は日本におけるガチャガチャの発祥と黎明期の歴史について解説しました。
この後、時代を経て、幼少期にガチャガチャにお金をつぎ込んだ世代が成長するのを追うかのように、中高生向けから大人向けの商品が投入されるようになっていきます。
さらに女性向け商品の強化やSNSの普及によって、カプセルトイは新たな時代を迎えます。

「コップのフチ子」にはじまるSNSバズリ商法
先のコラムでも触れましたが、2012年に発売された奇譚クラブの「コップのフチ子」が700万個を売る大ヒット商品となりました。

2000年代のチョコエッグ食玩ブームの際には、話題の発進はテレビや雑誌などのメディアが中心だったように思われます。
ところが2010年代は、日本でもYouTube(2007年開始)、Twitter(2008年開始)、Facebook(2008年開始)、LINE(2011年開始)が普及しはじめた時期※1で、個人で話題を発信し交流することができる時代になっていました。
これに「コップのフチ子」がドハマりしたわけです。

それまでのカプセルトイは、100~200円程度の商品が主流でした。
売れ筋はアニメなどの版権モノで、元々薄利な上に、各メーカーではこの版権料に苦しめられ、利益を上げるのに苦労していました。
ところが、「コップのフチ子」は奇譚クラブのオリジナルキャラクターでしたから、版権料がかからないわけです。
コップのフチ子」の大ヒットは、版権料がかからないものでも、話題性さえあればアイデア次第で大きな利益を生むことを証明してみせた出来事だったのです。

これ以降、SNSでの話題性を重視した、アイデア合戦のようなネタ系カプセルトイが次々に生み出され、購入者側も、いかに面白いものを他人に先んじてSNSで発信するかを競うかのようになっていきました。
このアイデア勝負のような商品開発合戦で、数多く生み出されたウケ狙い系の商品がややマンネリ化し始めると、今度は高品質化が始まり、物価高騰もあいまって高価格化が進んだというのも、先のコラムでお話した通り。

もう一つのキーポイントは、女性向け商品強化への転向です。
アニメイトも2000年代に女性向けに戦略を転向することで成功した事例があり、この動きはカプセルトイでも有効な手段でした。

それまでのメーカーでは、男の子向け商品に力を入れていた感がありました。
女の子向け商品もないことはありませんでしたが、「スーパーカー消しゴム」や「キン肉マン消しゴム」のブームなどもあり、ヒット商品が生まれるのも男の子商品が中心でしたし、女の子たちがカプセルトイに夢中になるような様子もあまり見られませんでした。

ところがディズニーサンリオのキャラクター商品や「コップのフチ子」に代表されるような、カワイイオシャレをテーマにした商品にも力を入れるようになり、現在では、大人の女性たちがカプセルトイに夢中になる光景も珍しくありません。

2010年代後半になるとカプセルトイ専門店の出店が加速しますが、これも成功要因の一つに、女性向けに明るくキレイな内装デザインの店づくりをしたことがあり、商品も店舗も、女性にも受け入られるということが鉄板の方法論となっている様子が伺えます。

<カプセルトイ業界年表>

アメリカで生まれ、日本で爆裂的に進化しまくってしまったカプセルトイは、海外でも人気が高く、カプセルトイ専門店が海外で出店ラッシュとなっているのは、以前のコラムでもお話した通りです。
現在は日本製品をそのまま販売している状況ですが、海外でカプセルトイ文化が浸透すれば、いずれはその国に特化した商品開発も行わるようになるでしょう。
さらに、地元企業も参入してくる可能性があり、そこでまた独自の進化が見られることでしょう。
ガチャガチャ」が世界共通語となり、世界中の人々がカプセルトイ文化を楽しむようになることを期待したいと思います。

次回に続く。

〈了〉


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※1 Instagramの日本語版が開始されたのは2014年。


カプセルトイ専門店がすでに600店もできている件 前編
カプセルトイ専門店がすでに600店もできている件 後編
カプセルトイ専門店がすでに1,200店もできている件 前編
カプセルトイ専門店がすでに1,200店もできている件 後編
カプセルトイのことについてもう少し語ってみた件
①「ガチャガチャ」or「カプセルトイ」
②「ガチャガチャ」誕生の歴史・前編
②「ガチャガチャ」誕生の歴史・後編
③「ガチャガチャ」ヒットの歴史・前編
③「ガチャガチャ」ヒットの歴史・後編
④「ガチャガチャ」の活用あれこれ