ルパン三世のジャケットの色 後編 PART III以降

ルパン三世のジャケット色比較

前回は『カリオストロの城』が緑ジャケットである理由を語りましたが、今回はその続きです。

1984~1985年に放送された『ルパン三世 PARTIII』では、ルパンのジャケットの色がピンクになっており、ルパンのみならず、次元大介や銭形警部などの服のカラーリングも、全体的に明るく派手な色彩に変更されています。

この第3シリーズは、制作局が第2シリーズの日本テレビから、第1シリーズの読売テレビに戻っています。
読売テレビは、『ルパン三世』を世に出したのは自局なのに、他局で作られたシリーズが3年間も続く大人気作品となったことを快く思っていなかったようで、その対抗意識から、制作会社に対して第2シリーズとの差別化を図るようにとの指示を出したそうです。
第2シリーズは第1シリーズとの差別化のためにジャケットを緑から赤に変えた経緯があり、日本テレビの第2シリーズを「赤ジャケットのルパン」と言うくらいでしたから、読売テレビは赤だけはやめて欲しいと注文したとのことで、試行錯誤の末、第3シリーズでキャラクターデザインと作画監修を担当した青木悠三がピンクジャケットを生み出します。
第3シリーズは、総作画監督を置かずに、各話の作画スタッフが個性を発揮できる制作体制を取っていたため、担当アニメーターによって各話の作風が異なり、いろんなルパンが楽しめるとあって、全体的には支持率の低いシリーズながら、逆にこのシリーズが一番好きだという熱狂的なファンもいる異色の作品ともなっています。

第3シリーズの後、テレビシリーズは作られず、夏休みにテレビの2時間スペシャルが放送されるのが定番になるのですが、『ルパン三世 カリオストロの城』以降の劇場版作品も含め、日本テレビの製作によるものは全て赤ジャケットになっています。

トムス・エンタテインメント製作によるスピンオフの劇場版作品である2014年の『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』、 2017年の『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』では、ルパンのジャケットは青になっています。
(2019年 の『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』でのルパンはジャケットを着ていませんでした)
後の第4~5シリーズも青ジャケットであることから、『仮面ライダー』における昭和・平成ライダーの区分けのように、『ルパン三世』も平成ルパンは青が共通カラーであるとして当時の各メディアで語られていました。

2015~2016年に放送された『ルパン三世(第4シリーズ)』では、『ルパン三世 カリオストロの城』でカーチェイスシーンの作画を担当した友永和秀が総監督を務めています。
この第4シリーズのルパンのジャケットは青が採用されていますが、友永総監督によると、作品の舞台であるイタリアで行った事前アンケートで青が人気だったことも理由の一つであったそうです。
過去のシリーズでは世界各地を舞台にしており、各話で異なる国での出来事が描かれるスタイルでしたが、第4シリーズでは、全話を通してイタリア国内だけを舞台にしています。
そこでイタリアという舞台に合わせてデザインを一新したというわけです。イタリアは日差しが明るい国であることから、コントラストも強めで色彩設定がされているとも語られていました。

2018年に放送された『ルパン三世 PART5』では、メインビジュアルや各パッケージイラスト、キャラデザイン表などでは第4シリーズよりもやや明るめの青のジャケットで描かれていますが、これは標準デザイン設定に過ぎず、過去作品を全肯定するというコンセプトのもと、各話ごとに過去に採用された色のジャケットをルパンに着用させています。
具体的には下記の通り、EPISODE I~IVのメインストーリーでは標準デザインの青ジャケット、メインストーリーの間に描かれた1話完結型のエピソードでは、それぞれのお話に合った色のジャケットを着ているルパンが登場するというわけです。
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EPISODE I(第1~5話):青ジャケット
EPISODE II(第7~10話):青ジャケット
EPISODE III(第13~16話):青ジャケット
EPISODE IV(第21~24話):青ジャケット
第6話    :ピンクジャケット
第11話  :赤ジャケット
第12話  :赤ジャケット
第17話  :緑ジャケット
第18話  :青ジャケット
第19話  :青ジャケット
第20話  :赤ジャケット
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2021年~2022年に放送された『ルパン三世 PART6』では、アニメ放送開始50周年記念作品と銘打っていることから、第1シリーズの緑ジャケットが採用されています。
50周年記念作品ということもあって、第17話「0.1秒に懸けろ」では、最新鋭のセキュリティシステム「Lシステム」に挑戦するルパンの作戦で、ルパン一味のコスプレをすることを参加条件とするお宝争奪ゲームと称して、ネットで参加を呼びかけ、コスプレ(変装)をして集まった大勢の参加者たちが、それぞれ過去作品に登場したいろんなデザインの衣装を着ているという趣向で、過去作品に対するオマージュを表現していました。


50年以上に渡って作られ続ける『ルパン三世』という作品について、今回はジャケットの色に着目して解説してみましたが、たかがジャケットの色一つにも制作者側の意図や思いが読み取れることもあるので、今後も新作シリーズが作られることがあれば、是非ジャケットの色をはじめ、デザインや配色などの細部にも目を向けてみてはいかがでしょう。