アニメソング(アニソン)の歴史① 基礎編:基本フォーマットと分類について

アニメソング(アニソン)

アニメソング(アニソン)と言うと、みなさんはどんな曲を思い浮かべるでしょうか?

アニメを見ていた時代や、世代によっても大分別れそうな質問でしょう。

1960年代なら『鉄腕アトム』『鉄人28号』『オバケのQ太郎』『魔法使いサリー』『巨人の星』『一休さん
1970年代なら『マジンガーZ』『アルプスの少女ハイジ』『キューティーハニー』『機動戦士ガンダム
1980年代なら『タッチ』『うる星やつら』『マクロス』『キン肉マン』『キャッツ・アイ』『シティーハンター
1990年代なら『美少女戦士セーラームーン』『SLAM DUNK』『新世紀エヴァンゲリオン
2000年代なら『ONE PIECE』『マクロスF』『涼宮ハルヒの憂鬱』『けいおん!
といったところでしょうか。
近年では、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』、『推しの子』などを挙げる人も多いでしょう。

現在では、Aimer米津玄師YOASOBIなどヒットチャートに入る超一流アーティストがこぞってアニメの主題歌を担当し、もはやアニソンというジャンルで区分けする程に確立したものではなくなっています。
広く一般の方がイメージするアニソンらしい曲もある一方で、両者の楽曲に特性や質についての明確な違いはないため、年々その境界線は曖昧になり、近年では内容的な差はなく、単にアニメの主題歌であるというだけでしかないというのが実態となっています。

今やアニメを抜きには音楽業界を語れない程に重要なものとなっていながらも、近年に至るまでは、多くの人たちにとって、長く一般的な音楽よりも格下、もしくは自分たちとは関わりのない特殊な人たちのジャンルとして注目されてこなかった歴史がありました。
そのため、アニメファンにとっては常識的なことでも、メジャーな音楽番組やテレビドラマなどを中心に見てきた一般層の方々にはよくわからない世界だったりします。
そこで今回は、アニメソングの歩んできた歴史をざっくりと解説していきたいと思います。

OPとEDのフォーマット
まずは基本的なところですが、テレビアニメの場合、基本的に下記のようなフォーマットがあります。

オープニング ▶ CM ▶ 本編Aパート ▶ CM ▶ 本編Bパート ▶ CM ▶次回予告・エンディング

これは、1963年放送の『鉄腕アトム』から始まったと言われています。
『鉄腕アトム』は、日本初の1話30分の連続テレビアニメです。当時は、80分程度の劇場用長編アニメを1年以上かけて作っていた時代でしたから、毎週30分枠のテレビアニメを制作するというのは、常識的に誰もが不可能だと思っていました。
そこを、止め絵で口や目だけ動かしたり、同じ絵を使い回したりといった手塚治虫やスタッフたちの創意工夫で実現したわけですが、スタッフクレジットを記載する毎週使い回しの主題歌アニメ(1分程度)を本編の前後に入れるのも、その工夫の一つだったわけです。要は毎週新規で制作する作画の枚数を減らすための策だったわけです。

それが60年以上も経過した今日に至るまで、アニメのフォーマットとして定着して、音楽業界にも大きな影響力を持つ存在にもなっているわけですから、偉大な発明だったと言えるかもしれません。

フォーマットや秒数などは変遷があり、現在では下記のように本編の後にCMを挟まずにエンディングが入るものが多くなっており、89秒で制作されることが基本となっています※1

OP(90秒) ▶ CM(150秒) ▶ 本編A(11分) ▶ CM(150秒) ▶ 本編B(11分) ▶ED(90秒)

枠は90秒ですが、音響のルールで曲の始まりと終わりに0.5秒の無音をつけなくてはいけないというものがあり、そのため89秒で制作されるというわけです。
この89秒という制約の中で制作されるのがアニメソングの大枠の決まりということになっているのです。

カテゴライズ
現在では、アニメソングはかなり多様化が進んでおり、一概に説明できるものではありません。
昭和時代にアニメを卒業してしまった人などの中には、アニメのタイトルを連呼するような曲がアニメソングだと思っている人もいるかもしれませんが、それはごく一部にしか過ぎません。

アニメソング
アニソン歌手(アニメの楽曲を中心に活動している歌手による楽曲)
声優アーティスト(併業で歌手活動を行っている声優による楽曲)
キャラクターソング(声優が作中で演じたキャラクターとして歌う楽曲)
タイアップ曲(主にJ-POPアーティストが歌う楽曲)

大枠でカテゴライズを試みると、上記のような種別に分けられるかと思います※2
アニメのタイトルを連呼するような曲は、アニソン歌手が昭和時代によく歌っていたものですが、現在では少数派に過ぎず、一部の児童向けアニメで見られる程度のものとなっています。

キャラクターソングなどは、かつては作中には使用されず、コアなファンだけが楽しむオマケ的なものであったものが、近年では『ラブライブ!』や『けいおん!』といったアイドルアニメやバンドアニメが増えたことで、作品の中核を成す楽曲として、その重要度や注目度も各段に高いものへと変わっています。

このようにアニメソングと一言に言っても、その在り様は多彩で、過去の流れを見て理解しないと把握しづらいものとなっているのです。


次回はアニメソングの歴史について見ていきたいと思います。

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※1 主題歌の秒数は1970~1980年代ではまだ確立しておらず、時代を経るごとに定まっていった様子が伺えます。
各時代の作品をピックアップしてオープニングの秒数をカウントしてみると以下の通りとなります。『鉄腕アトム』(1963年):72秒
『狼少年ケン』(1963年):89秒
『どろろ』(1969年):100秒
『デビルマン』(1972年):89秒
『キューティーハニー』(1973年):89秒
『宇宙戦艦ヤマト』(1974年):85秒
『ガンバの大冒険』(1975年):75秒
『サイボーグ009』(1979年):81秒
『超時空要塞マクロス』(1982年):89秒
『キャプテン翼』(1983年):85秒
『聖闘士星矢』(1986年):85秒
『美味しんぼ』(1988年):75秒
『宇宙の騎士テッカマンブレード』(1992年):89秒
『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年):89秒
『COWBOYBEBOP』(1998年):89秒
『アルジェントソーマ』(2000年):89秒
『スクールランブル』(2004年):89秒
『らき☆すた』(2007年):89秒
『涼宮ハルヒの憂鬱』(2009年):89秒
『きんいろモザイク』(2013年):89秒
『おそ松さん』(2015年):89秒
『ウマ娘 プリティーダービー』(2018年):89秒
『推しの子』(2023年):89秒

※2 アニメソングは「アニメ」と銘打っており、当然アニメの主題歌を指しますが、ゲームの主題歌の場合は「ゲームソング」とは言わずに、アニメソングにカテゴライズされるケースが多く、この辺りの境界は非常に曖昧なものとなっています。
これは、ゲームの中のアニメパートで使われる楽曲であったり、ゲーム原作でアニメ化された作品なども含め、厳密に分けることが困難なものもある上、ゲームの主題歌はアニメの主題歌に比べて数が圧倒的に少ないこともあり、便宜上、アニメソングの中に組み込まれて取り扱われることが多いためです。
また、同じような理由で、ドラマCD、VTuber、アニメ化されていないメディアミックス作品などの楽曲なども、CDショップや通販サイトなどではアニメソングとして扱われているケースが多いようです。


アニメソングの歴史
① 基礎編:基本フォーマットと分類について
② 鉄腕アトムからはじまったアニメソング
③ 『宇宙戦艦ヤマト』と『銀河鉄道999』によって児童向けから脱却
④ 『機動戦士ガンダム』と井荻燐
⑤ サンライズアニメの先進性
⑥ マクロスとクリィミーマミの衝撃
⑦ 独自路線を歩むタツノコアニメ
⑧ タイアップソング黄金時代 前編
⑨ タイアップソング黄金時代 後編
⑩ キャラクターソングの歴史 前編
⑪ キャラクターソングの歴史 後編
⑫ 声優アーティスト 前編
⑬ 声優アーティスト 後編
⑭ 新世代のアニソン歌手たち
⑮ アニメソングが作られる工程
⑯ アニメソングの多様性時代と海外発信力
⑰ アニメソングの課題