アニメソング(アニソン)の歴史 ⑯ アニメソングの多様性時代と海外発信力

アニメソングは、黎明期の子供向けな楽曲の時代から、アニソン歌手全盛の時代、メジャーアーティストとのタイアップソング時代を経て、新たな世代のアニソン歌手たちの登場や、新世代のアーティストたちによる作品との親和性の高い楽曲と、多様性と進化を加速させています。

進化するアニメソング
『らき☆すた』(2007年)のオープニング曲「もってけ!セーラーふく」は、強烈なインパクトの出だしから、その個性的過ぎる歌詞、女子高生パワーみなぎるハイテンポでエネルギッシュな楽曲で、一度聴いたらクセになる中毒性を持つ究極のアニメソングでした。

『らき☆すた』「もってけ!セーラーふく」歌:平野綾、加藤英美里、福原香織、遠藤綾/作詞:畑亜貴/作曲・編曲:神前暁

『けものフレンズ』(2017年)のオープニング曲「ようこそジャパリパークへ」は、89秒内に複数のサビやメロを詰め込み、短い間での展開が豊富で、過去のアニソンの名曲の要素をテンコ盛りしたような楽曲に仕上がっており、アニメソングの進化の一端を見ることができます。

『けものフレンズ』OP「ようこそジャパリパークへ」歌:どうぶつビスケッツ×PPP/作詞・作曲・編曲:大石昌良

伝統を受け継ぐ『プリキュア』ソング
作品タイトルを連呼するタイプの古き良きアニメソングは絶滅してかというとそんなこともなく、20周年を迎えて今や国民的アニメとなった『プリキュア』シリーズでは、シリーズを通して主題歌の歌詞に「プリキュア」が必ず入っています。
ただしそれは懐古主義というものではなく、タイトル名を歌詞に入れるという伝統は残しながらも、楽曲自体は今時のものとなっているのです。
さらに、エンディングは番組を見ている女の子たちが唄って踊れる楽曲をコンセプトに制作されており、子供たちでも口ずさめるような楽曲になっています。

『ひろがるスカイ!プリキュア』オープニング「ひろがるスカイ!プリキュア 〜Hero Girls~」歌:石井あみ/作詞:青木久美子/作曲・編曲:森いづみ
『ひろがるスカイ!プリキュア』エンディング「ヒロガリズム」歌:石井あみ、吉武千颯/作詞:六ツ見純代/作曲・編曲:ハマダコウキ

高いアーティスト性を作品に織り込んでいくスタイル
音楽会社のフライングドッグに代表される楽曲では、菅野よう子、梶浦由記などをはじめ、アーティスト性を強く発揮させた玄人受けする楽曲ばかりで、楽曲を単なる付属品とせず、キャラクターやストーリーと同等以上に、アニメ作品の中で、重要なパーツとしての存在感を示すことに成功しています。
『カウボーイビバップ』や『マクロスF』、『魔法少女まどか☆マギカ』の楽曲はどれも作品の中で重要な役割を担っており、アニメソングの進化の一端を感じさせてくれます。

カウボーイビバップ』(1998年)オープニング「Tank!」演奏:シートベルツ/作曲・編曲:菅野よう子
マクロスF』(2008年)エンディング曲「ノーザンクロス」歌:May’n/作詞:岩里祐穂、Gabriela Robin/作曲・編曲:菅野よう子
魔法少女まどか☆マギカ』(2011年)エンディング「Magia」歌:Kalafina/作詞・作曲・編曲:梶浦由記

これらはアニメソングの多様性と進化の一端に過ぎません。
アニメ作品の増加と共に、アニメソングも年々その数を増やしており、テレビアニメだけでも年間200作品以上作られていることから、オープニングとエンディングの2曲として単純計算しても年間400曲以上は生産されていることになります。
実際にはもっと多くの楽曲が作られているはずで、そこではアーティストたちが新しいもの、他とは異なるものを生み出そうと、様々なチャレンジをしているのです。

アニメは海外で日本音楽をPRするチャンネル
日本の音楽業界は、かつてのYMOのように海外へと戦略的に打って出るアーティストは少なく、国内では誰もが知っている程に人気なのに、海外ではほとんど認知されていないアーティストが非常に多いという課題があります。
そんな中でも海外で人気があるのは、アニメの主題歌を歌うアーティストです。
アニソン歌手や声優アーティストは、日本国内においてはアニメファン以外の一般認知度が低い傾向にありますが、海外では、日本国内では誰もが知る有名アーティストが全く認知されておらず、アニソン歌手や声優アーティストの方が良く知られているという逆転現象すら起きています。

鋼の錬金術師』でタイアップソングを歌ったASIAN KUNG-FU GENERATIONなどは、2013年のヨーロッパツアーに際し、「俺たちを世界へ連れてってくれた曲」とコメントしています。
海外への宣伝チャンネルを持たない日本のアーティストにとって、海外で人気の高いアニメの主題歌を担当することは、海外に自分の楽曲を聞いてもらえ、アーティストとして存在を認知してもらうことができるチャンスを得ることに等しく、非常に重要なのです。

アニメソングの「らしさ」の様式
アニメソングと一般曲というのは、単にアニメの主題歌かどうかの違いでしかないのですが、実は長いアニメソングの歴史の中で培われてきた「アニソンらしさ」という独特の様式・特徴があります。
それはタイトル名や必殺技名を連呼するような昭和のアニメソング的なものではなく、YOASOBI、Ado、米津玄師などをはじめとするボカロネット発アーティストの多くは、昭和後期から平成時代のアニメソングを聞いて育った世代特有の曲の盛り上げ方や転調、サビやシャウトの付け方などの細かい部分で醸し出される「らしさ」というものです。
それがアニメに使われているか否かに関係なく、彼ら彼女らが作る楽曲には、どこかこの「アニソンらしさ」が宿っており、近年のヒットチャートに上る楽曲を見ると、その多くがこの「アニソンらしさ」を持ったものばかりだと感じます。
テクノサウドや小室サウンドなど、時代によって支持されるサウンドが移り変わる中で、現在は「アニソンらしさ」のサウンドが受ける時代がやってきているというわけです。

アニソンを聞いて育ってきた世代で、アニソンが血肉になっているからなのかはわかりませんが、彼らの中にその「アニソンらしさ」が元々あるからこそ、アニメソングを作っても、作品との親和性が高く全く違和感を感じさせないような楽曲を生み出すことができるのかもしれません。
逆に言えば、この「アニソンらしさ」を理解しないまま、タイアップ効果を狙って安易にアンマッチングな組み合わせをしてしまうと、作品との違和感を生じて批判の的となり、手痛い失敗を招くかもしれないので注意が必要でしょう。


次回に続く。

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アニメソングの歴史
① 基礎編:基本フォーマットと分類について
② 鉄腕アトムからはじまったアニメソング
③ 『宇宙戦艦ヤマト』と『銀河鉄道999』によって児童向けから脱却
④ 『機動戦士ガンダム』と井荻燐
⑤ サンライズアニメの先進性
⑥ マクロスとクリィミーマミの衝撃
⑦ 独自路線を歩むタツノコアニメ
⑧ タイアップソング黄金時代 前編
⑨ タイアップソング黄金時代 後編
⑩ キャラクターソングの歴史 前編
⑪ キャラクターソングの歴史 後編
⑫ 声優アーティスト 前編
⑬ 声優アーティスト 後編
⑭ 新世代のアニソン歌手たち
⑮ アニメソングが作られる工程
⑯ アニメソングの多様性時代と海外発信力
⑰ アニメソングの課題

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