海外で流行っている昭和のロボットアニメの謎を紐解いてみた件 ② 『UFOロボ グレンダイザー』前編

アニメの解説書

『UFOロボ グレンダイザー』は、日本では1975年10月から1977年2月まで全74話が放送された永井豪原作の東映動画(現・東映アニメーション)制作のアニメで、前作である『マジンガーZ』、『グレートマジンガー』と世界観を共有するマジンガーシリーズの第3作です。

当初は「マジンガー」の名を冠した続編企画だったものの、『グレートマジンガー』の玩具の売上が芳しくなかったことから、当時のUFOブームを取り入れた企画となった経緯があります。

フランスでの熱狂的ブーム

フランスでは、この『UFOロボ グレンダイザー』が、『UFO Robot Goldrake』というタイトルで、全74話のうちの52話の契約により、1978年7月から国営テレビで放送され、放映開始からわずか3か月後には最高視聴率100%に達したとのことです。

当時のフランスには放送局が3局しかなかったので、日本での視聴率と同列には扱えないのですが、それでも100%というのは驚異的な記録に違いなく、いかにフランスの子供たちの支持を得ていたかが伺えます。

子供たちが熱狂した理由も、前回のコラムで取り上げたフィリピンでの『超電磁マシーン ボルテスV』ブームと同じく、それまで見たことのない日本製のロボットアニメに魅了されたというものでした。
フィリピンと同じくフランスでも、大人たちが『UFOロボ グレンダイザー』を暴力的であるとか、日本による経済侵略だとして反対したそうです。しかしフランスでは子供たちの熱狂が大人たちの反発を打ち消してしまいます。
関連商品が爆発的に売れて、日本では販売されなかった敵キャラや敵メカの玩具まで発売されたり、フランスの現地作家によるオリジナルコミックが多数発売されたりと、商業的にも大成功を収めたわけです。

1979年1月に放送が終了すると、放送局に再放送を求めるファンたちの要望が殺到したため、翌週から再放映するという異例の対応が取られました。その後も終了しては再放送を繰り返して結局全74話が放送され、フランスでは誰もが知る国民的アニメのような存在になったそうです。

日本では『UFOロボ グレンダイザー』は『マジンガーZ』、『グレートマジンガー』に視聴率こそ及ばないものの、当時としては、上々の人気を得た作品でした。現在では『マジンガーZ』に比べると認知度はかなり低く、タイトルに「マジンガー」が含まれていないことから、マジンガーシリーズであることすら知らない人が多いと思われます。
フランスでは10年後の1988年に『マジンガーZ』が放送されましたが、人気は然程でもなかったこともあり、現在の日本と同じく、一般的には同じシリーズ作品であるとすら認識されなかったとのことです。

現在でも根強いファンがいるとのことで、2021年9月には回顧展「GOLDORAK XPERIENZ」が開催されました。

2019年には、フランス大使館の公式Twitterが、フランス国内で展示されていたグレンダイザーの巨大モニュメントを伝えるツイートをしています。

映画予告編風のファンムービー(2020年公開)を作成してしまったファンもいます。

2021年10月には、フランス郵政公社から45周年の『UFOロボ グレンダイザー』記念切手2種が発売されました。

2021年10月末には、フランスのゲームパブリッシャーであるMicroidsが、2023 年に『UFO ロボ グレンダイザー』のゲームを、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One、Nintendo Switch、および PC向けにリリース予定であるとの発表がありました。

40歳代の男性や『スーパーロボット大戦』シリーズのプレイヤー以外にはその名前すら知られていない『UFOロボ グレンダイザー』ですが、フランスでは現在も大人から子供にまで愛されている作品となっています。
日本では、昭和後期になると、次々に新作アニメの制作数が増えていって次第に再放送される作品が少なくなってしまったため、世代ごとに視聴作品が異なる断絶が起こっていくのですが、作品の供給量が少なく、海外の場合は、長く再放送が繰り返されているおかげで、世代を超えた多くの視聴者を生んでいるという事情があるようです。


次回に続く。