海外で流行っている昭和のロボットアニメの謎を紐解いてみた件 ③ 『マジンガーZ』

アニメの解説書

1972年に日本で放送された『マジンガーZ』は、韓国や台湾、香港をはじめアジア地域で放送された後、1978年から放送されたスペインで大ヒットとなりました。
全92話のうちの24話分のみの放送でしたが、最高視聴率70%とも80%とも言われる程の人気を博し、現地作家によるオリジナルコミックまで発売されたそうです。

大ヒットの理由は前回前々回の『超電磁マシーン ボルテスV』や『UFOロボ グレンダイザー』と同じで、それまでディズニーなどの子供向けの童話的な作品しか見たことがなかった子供たちが、リアルな世界観の中で科学兵器や巨大ロボットが活躍する勧善懲悪で爽快なアクションに心を鷲掴みにされたというものでした。

また、視聴者層も他地域の例と同じく、繰り返し再放送されたことで世代を超えて支持されており、親子で楽しめる作品となっていることも共通しています。

1980年代前半頃には、スペインのカブラ・デル・カンプ村のサンタ・マリア広場に、高さ10mの鉄筋・グラスファイバー製のマジンガーZ立像が製作・設置されました。
これは公園を造成した不動産会社が建てたもので、かつては足元から内部に入って頭部に登ることもできたそうですが、現在では安全性の面から立入禁止になっているとのことです。
ヨーロッパではそこそこ知られた存在となっており、海外から訪問するファンもいるのだとか。

2012年にはスペインの新聞の文化コーナーに「フランケンシュタインからマジンガーZへ」と題した見開きの特集記事が掲載されたこともあります。

2019年のハロウィンパレードでは、『マジンガーZ』のキャラクターやロボットたちのコスプレをした人たちが踊りながら練り歩く様子がSNSなどで拡散され、「マジンガー祭」などとも言われました。

海外には熱烈なファンが数多くいて、現在でも『マジンガーZ』関連の玩具がオークションで高額取引されています。

スペインでの大ヒットの影響で、同じスペイン語圏の中南米にも『マジンガーZ』ブームが広まっており、その知名度は国際級です。
日本国内においては、ガンダムが最も知名度の高いロボットアニメで、次いで鉄腕アトム、鉄人28号、マジンガーZ、エヴァンゲリオン、マクロスといったところが一般知名度のある作品といったところでしょうか。
ところが、内需型のビジネス展開のために海外ではガンダムの知名度はそれ程高くはなく、特にスペイン語圏においてはマジンガーZの知名度の方が圧倒的に高いといった逆転現象が起こっています。

『パシフィック・リム』や『トランスフォーマー』など実写映画では大分溝を開けられた感はあるものの、まだロボットアニメの資産は日本に数多くあり、このコンテンツ力を海外に向けてどう活用できるかが課題でしょう。
昭和初期には大いに海外販売力を持っていた日本のコンテンツビジネスが、その後、内需型になっていき、現在では海外市場で大きく飛躍できずにいるのはなんとも歯痒い思いがします。
実写映画化が進行中の『機動戦士ガンダム』をはじめ、『攻殻機動隊』や『銃夢』など日本のコンテンツがハリウッドで実写化されるケースもあるものの、それらはいずれも海外企業主導の企画です。
今後、日本主導で製作された新作のロボットアニメや実写のロボット映画などが、海外を席巻する日が来ることを期待したいと思います。