海外で流行っている昭和のロボットアニメの謎を紐解いてみた件 ① 『超電磁マシーン ボルテスV』後編

アニメの解説書

前回のコラムでお話した通り、『超電磁マシーン ボルテスV』の空前の大ヒットの要因は、それまで童話的なアニメしか見たことがなかった子供たちが、テクノロジーで作られた巨大ロボットの活躍する初体験のアニメに魅了されたというものでしたが、マルコス独裁政権を打倒した1986年のエドゥサ革命と関連づけて考える向きもあるようです。

『超電磁マシーン ボルテスV』が放送された時期はちょうどマルコス独裁政権の真っ只中で、5人の若者が力を合わせて独裁体制の帝国による侵略と戦う姿が、自分たちの置かれた状況と重なったという解説も見受けられますが、当時の子供たちが政治と絡めて見ていたとするのは不自然です。前述通り、単純に作品の面白さに魅了されたというのが実情でしょう。

しかし、エドゥサ革命では、8年前に作品を見て育った世代が中心的枠割を担うことになり、『超電磁マシーン ボルテスV』は自由の象徴として、革命に身を投じた若者たちにとって特別な意味を持つ作品となっていたそうです。

マルコス政権は、子供への有害な影響を理由に『超電磁マシーン ボルテスV』の放送を禁止しましたが、最終話まであと4回というところで大好きなアニメを取り上げられた子供たちは、さぞ悔しがったことと思われ、それが革命の動機というのはさすがに言い過ぎでしょうが、当時の怒りが革命の力の一部になっていたということであれば、あながち絵空事とは思われない真実味を感じなくもありません。

1999年に再放送された際に起きた『超電磁マシーン ボルテスV』の再ブームは、そうしたボルテスV世代の若者が親となった時代であることから、昔を懐かしんで見る親と、初めて見る子供たちが、親子で楽しめるアニメとして人気となったことが要因かと思われます。

こうして現在も繰り返し再放送されている『超電磁マシーン ボルテスV』は、フィリピンにとっては今や世代を超えて愛される国民的アニメになっているわけです。

フィリピン国民に愛されるこの作品は、『パシフィック・リム』や『トランス・フォーマー』などのロボット映画のヒットや、マーベルやDCなどのアメコミの実写化映画の成功の影響を受け、 2020年には実写リメイク版テレビシリーズ『Voltes V: Legacy』の制作が発表されています。

フィリピンの大手テレビ局であるGMA Networkが、東映のフィリピンのライセンシーである Telesuccess Productions を通じて実写映画化の権利を取得して実現したもので、PV映像を見ると、制作側の本気度が伝わってくる程のクオリティの高さです。

これまでにも断続的にPVが公開されてきましたが、遂に2023年の放送が間近となり、12月24日には最新PVが公開されました。

2023年1月にも長尺PVが公開されました。

この作品が商業的にも成功を収めた暁には、スペインの『マジンガーZ』、フランスやサウジアラビアの『UFOロボ グレンダイザー』など、他国でも同じような動きが出てくる可能性があり、そういう意味でも注目される作品です。
ハリウッドではすでに『機動戦士ガンダム』の実写化企画が始動していることもあり、ロボットアニメの実写化というムーブメントが大きな流れとなってくれることを願います。