アニメの解説書『王様ランキング』② オープニングアニメ

前回はアニメ『王様ランキング』の原作マンガについて解説しましたが、今回はオープニングについて取り上げます。

第1クール(第1~11話)のオープニング曲はKing Gnuの『BOY』で、楽曲のすばらしさと相まって、このオープニングを見ただけでも、このアニメのセンスの良さが際立っていることがわかります。
冒頭カットでは、歩くボッチの腰から下のみ、頭の王冠のアップ、カゲの口のアップ、2人の歩く姿を上空から見下ろす構図で遠ざかっていき、遥か雲の上から王国全体を見下ろす構図のカットでタイトルイン。
この後も遠巻きにボッチとカゲが森を走る様子が描かれるものの、正面からはボッチたちを出しません。
続くカットも、城内の鏡、誰もいない玉座の間、ヒリングの後ろ姿、ダイダの後ろ姿、今後の展開を暗示させる敵や戦争のカットなどを経て、楽曲名のテロップのカットで初めてボッジが正面からはっきりと描かれます。

それまでの歌詞が、「その涙や汗が滲んだ誰とも違う美しさで笑っておくれよ」とか、「家鴨(アヒル)の侭で翼を広げて 空を舞う白鳥の夢を見る」だとか、「泥濘(ぬかるみ)を飲んで でもたどり着けなくて また何度だって夕暮れを追いかけるの」といった、厳しい現状を思わせる描写となっており、若干抑え気味な調子のハスキーボイスで歌い上げられているのですが、この後に軽快な転調から、「走れ遥か先へ」という前向きな歌詞と共に、作画の方では、ようやく曇り空の合間から差し込む光芒の中を歩くボッジとカゲの姿が真正面から描かれ、光芒の下の王国の遠景でラストとなります。

各カットが直接的ではない匂わせを多用した巧みな表現で描かれており、歌もオシャレですが、それに負けない演出がオシャレなアニメーションとなっています。
一方第2クール(第12~23話)では、歌はVaundyの「裸の勇者」で、これまたアニメでは珍しいタイプの楽曲で第1クール同様にオシャレなのですが、アニメーションの方は割と直接的な演出表現になっています。
歌詞の方も「耳は聞こえちゃいない、だが勇者は今」や「力は要らない、身を任せて小さなこの手は今」といった具合に、作品の内容を直接的に連想できるものとなっています。
短いカットを次々に見せ、構図や作画のクオリティの高さで魅せると同時に、本編に出てこないシーンの連続で細かいカット内に多分な情報を盛り込み、情報量の多さで奥行きを持たせている、オシャレだった第1クールのオープニングとは異なる、カッコ良さが際立つオープニングになっています。


アニメの解説書『王様ランキング』
① 原作マンガ
② オープニングアニメ
③ キャラクター
④ 物語進行の再構成
⑤ アニメの技巧
⑥ ストーリー
⑦ 王様ランキング