アニメの解説書『王様ランキング』⑦ 王様ランキング
作品のメインテーマの一つである「王様ランキング」については、アニメで描かれているミランジョの陰謀の一件では、部分的に触れられているだけなので、拍子抜けした視聴者も少なからずいたことだろうと思います。
王様ランキングとは、アニメの冒頭では、原作の冒頭とほぼ同じく、
「高名な騎士を数多く従えているか、国民が多く、町が栄えているか、そして何より、王様自身が勇者のごとく強いか、それらを条件に各国の王様をランキングしたものである」
と語られています。
作品名から、王様同士がランキングを競って争うバトルものを想像した人も多く、この作品においては、内容とのギャップが、ある意味プラスの方向に働いて高評価に転化しているのは幸運と言えます。
原作者である十日草輔は、脱サラしてマンガ家を目指す際に『ONE PIECE』を初めて読んだ影響で、少年マンガにはいろんなランキングが登場していて子供にウケそうという安易な理由からタイトルを付けたと語っています。
後付けながら、ボッジとカゲは元々絵本のキャラクターとして作られたこともあり、絵本のキャラクターは総じて目的意識が低く描かれがちであることから、マンガでは燃える展開にする必要があると考え、立派な王様を目指すという目的設定を付けたかったという理由も挙げています。
アニメでは、ミランジョの陰謀の一件が片付いた後、ボッジとカゲが旅立つところで終わっており、原作では、この後にようやく王様ランキングについて本格的に描かれはじめる様相となっています。
アニメ第4話でアビスが語ったところによると、
- 王様ランキングの1位になると神の宝物庫から好きなものを一つ貰うことができる
- ランキング1位になった歴代の王たちは、皆同じ宝を選び、その後、行方不明になるか気が触れてしまう
とのこと。
同話で、ボッジが森で出会った王冠をつけた狩人が、実はキングボの父であり、第12話のキングボの回想シーンでは、英明な王であったのに、王様ランキング協会の審査員と共にどこかへ向かった後に、乱心して国を滅ぼした顛末が描かれています。
2人が同一人物であることは、第4話の狩人役と、第12話のキングボの父役の声優が同じ大畑伸太郎が担当していることでも明らかです。
余談ですが、アニメの場合、担当声優などで匂わせや伏線などのネタバレが起こってしまうのはよくあることで、『名探偵コナン』でも、複数の容疑者の中に大御所や人気声優がいると、それだけで犯人が誰かわかってしまったり、謎の人物として登場したキャラクターが、他のキャラと担当声優が同じことから正体がバレてしまうといったことは、アニメでのあるある案件となっています。
話を戻して、
アニメ第18~19話で語られた、神々に初めて抗った魔法立国ホウマの顛末によると、かつては神々が国を支配して人間を奴隷にしていた時代があり、やがて、神だけが使えた魔法を人間も使えることになると、人間は神々からの支配から脱しようと戦争を起こします。しかし、ホウマ国と同盟を結び共に神々と戦っていたギャクザ国が、ホウマ国を裏切って神側に寝返り、チャビ神を招き入れてしまいます。
ホウマ国は滅亡し、チャビ神は今後寝返る者がいなくなっちゃうからと、ギャクザ国を支配せずに国に戻ってしまうのですが、この時、チャビ神は「神々も人間を支配する新たな方法を見つける時期に来ている」という気になることを口にします。
太古の力がどんどん失われて神々が弱体化している上、神々は一枚岩ではなく、人間が知恵や力をつけてきていることなどの状況下で、ホウマ国の抵抗が神々と人間たちの意識を変えたことを挙げ、もう自分たちの時代ではないとチャビ神は語っています。
チャビ神はこの後、魔人と契約する前のボッスをボコボコにしたり、魔人との契約によりボッジの力を奪って最強になったボッスに殺されちゃったりしていましたね。
冥府の王デスハーとデスパー、オウケンの3兄弟の父・サトゥンは、滅びゆく神々の一人で、不老不死の研究のために人間を妻にして子供を産ませたとアニメ第17話の冒頭で語られていました。
デスハーが雷撃を操る超能力を持っているのも、神の子故というわけです。
このことから、王様ランキングは、神々が人間を支配する新しい方法として考案されたもので、強大な力を持つ王を排除し、時には王国をも滅ぼすことで、神々を脅かす存在と成り得る目を摘み取るためのシステムという推測もできます。
あるいは、滅びゆく運命の神々が、王様ランキング1位になる程の有能な人材で、且つ神の宝物程度で気が触れることのない強靭な精神を持つ者を選別し、神々の代行者として使役するためか、その力を簒奪して神々の栄華を取り戻そうとでもいうのか、それとも滅びの運命を回避し、延命を図る手段なのか、想像を膨らませ、考察を巡らせるのも、楽しみの一つでしょう。
というわけで、今後の物語の展開とともに、アニメの続編も切望されますが、アニメ第1期の全23話では原作の第155話までが描かれてしまっており、マンガハックに投稿された最新(2022年5月28日)更新分で第190話までしか原作が進んでいません。
第2期が1クール(12話)だったとしてもまだ原作話数が足りませんから、第2期が制作されるとしても、まだ随分先のことになりそうです。 このまま作品人気が維持され、原作が貯まった暁に第2期が制作されることを待ち望みたいと思います。
アニメの解説書『王様ランキング』
① 原作マンガ
② オープニングアニメ
③ キャラクター
④ 物語進行の再構成
⑤ アニメの技巧
⑥ ストーリー
⑦ 王様ランキング