スタジオジブリについての補足:ジブリ作品の配信状況

アニメの未来を考える

NETFLIX RELEASES 21 STUDIO GHIBLI MASTERPIECES AROUND THE WORLD

2020年1月に、Netflixが世界190カ国にてスタジオジブリの21作品の配信を発表しましたが、その配信対象に米国、カナダ、日本の3カ国が除外されていました。これは、スタジオジブリ作品の製作委員会に、Netflixとは競合メディアとなる日本テレビやディズニーが入っているためと言われています。
では逆に、米国、カナダ、日本の3カ国以外では何でNetflixで配信が可能になったかというと、フランスの配給会社ワイルドバンチ・インターナショナルからスタジオジブリ作品の配信権を獲得できたからです。

ワイルドバンチは、2016年に『レッドタートル ある島の物語』をスタジオジブリと共同で製作していることで知られていますが、これ以前の作品においても製作に関わっていてスタジオジブリとの関係が深く、北米とアジア地域を除くスタジオジブリ作品の配給・配信窓口権を持っています。

スタジオジブリの広報部長・西岡純一氏が、『借りぐらしのアリエッティ』の出資各社について解説したYouTubeの動画の中でワイルドパンチについても触れており、2001年公開の『千と千尋の神隠し』から関係がスタートし、それ以降の作品において北米とアジア地域を除く配給を任せていると語っています。

今回のNetflixとワイルドバンチの契約には、『千と千尋の神隠し』以前の作品も含まれていることから、それらについても、経緯はわからないながらも、現在はワイルドバンチが窓口権を持っていると見て間違いないでしょう。

現在日本では、スタジオジブリ作品は、一切配信サービスへの提供が行われていません。
2020年の発表で、Netflixが日本を除く地域とは言え、スタジオジブリ作品の配信を始めたことで、いずれは日本でもと期待したユーザーも多かったようですが、ワイルドバンチが北米とアジア地域以外でしか権利を行使できない以上、日本テレビやディズニーとの利害関係から、今後も日本での配信は難しいでしょう。

日本テレビとしては、「金曜ロードショー」でのジブリ作品の放送はいまだに視聴率を稼ぐことができる重要なコンテンツであり続けていますので、配信などされては困ります。
Netflixでの配信は絶対に阻止したいところで、配信するのであれば、自社の子会社であるHJホールディングスが運営するHulu※で配信したいのでしょうが、現在のHuluには、Netflixと同等レベルの契約金を支払う体力はなく、実現は困難との見方が有力です。
スタジオジブリとしても、これまで自社の作品への出資や密着番組、報道などを含め、日本テレビとは良い関係を築いてきただけに、本音ではNetflixで配信させたいと考えていたとしても、道義上それを言い出すことはできず、また契約上においても制約があるため、日本での配信の道は遠そうです。


※Huluは、ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下で、カリフォルニア州サンタモニカに本社を置くHulu,LLCが運営するビデオ・オン・デマンド・サービスで、2011年8月に日本でサービスを開始するも、契約数が伸び悩み、2014年に撤退。2014年に日本テレビ放送網傘下のHJホールディングス株式会社に事業が承継され、2020年3月期に設立後初の黒字化を達成。


アニメ制作会社の生存戦略
番外編 スタジオジブリその① 創設
番外編 スタジオジブリその② 特性
番外編 スタジオジブリその③ 経営状況
補足 ジブリ作品の配信状況