アニメ制作会社の生存戦略 番外編 スタジオジブリその③ 経営状況
前々回、前回とスタジオジブリの創設と制作会社として特性を語りましたが、今回はスタジオジブリ作品の興行成績から、その経営状況について取り上げたいと思います。
スタジオジブリの興行成績から伺える経営状況
前回語ったように、スタジオジブリは、監督中心主義で、宮崎駿と高畑勲の作品を作るための制作会社という特質を持っており、高畑勲の死後は宮崎駿一人のための専門スタジオのようになっています。
もちろん、宮崎駿以外が監督を務めた作品も複数ありますが、息子の宮崎吾朗以外で、現在もスタジオジブリに所属している人は1人もおらず、宮崎駿への依存度が高い故に、後継が育たないという問題を抱え続けています。
<宮崎駿と高畑勲の他にジブリ作品で監督を務めた人物>
・近藤喜文(1998年病没)
・森田宏幸(フリー)
・米林宏昌(2014年にスタジオジブリ退社。2015年にスタジオポノック設立)
・宮崎吾朗(スタジオジブリ常務取締役)
・マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット(フリー)
<スタジオジブリ作品の興行収入>
1984年『風の谷のナウシカ』宮崎駿監督・興行収入14.8億円
1986年『天空の城ラピュタ』宮崎駿監督・興行収入11.6億円
1988年『となりのトトロ』宮崎駿監督/『火垂るの墓』高畑勲監督・興行収入11.7億円
1989年『魔女の宅急便』宮崎駿監督・興行収入43億円
1991年『おもひでぽろぽろ』高畑勲監督・興行収入37.4億円
1992年『紅の豚』宮崎駿監督・興行収入54億円
1994年『平成狸合戦ぽんぽこ』高畑勲監督・興行収入53億円
1995年『耳をすませば』近藤喜文監督・興行収入37億円
1997年『もののけ姫』宮崎駿監督・興行収入193億円
1999年『ホーホケキョ となりの山田くん』高畑勲監督・興行収入15.8億円
2001年『千と千尋の神隠し』宮崎駿監督・興行収入304億円
2002年『猫の恩返し』森田宏幸監督・興行収入64.6億円
2004年『ハウルの動く城』宮崎駿監督・興行収入196億円
2006年『ゲド戦記』宮崎吾朗監督・興行収入76.5億円
2008年『崖の上のポニョ』宮崎駿監督・興行収入155億円
2010年『借りぐらしのアリエッティ』米林宏昌監督・興行収入92.5億円
2011年『コクリコ坂から』宮崎吾朗監督・興行収入44.6億円
2013年『風立ちぬ』宮崎駿監督・興行収入120.2億円
2013年『かぐや姫の物語』高畑勲監督・興行収入24.7億円
2014年『思い出のマーニー』米林宏昌監督・興行収入35.3億円
2016年『レッドタートル ある島の物語』マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督・興行収入0.9億円
2021年『アーヤと魔女』宮崎吾朗監督・興行収入3億円
作品の評価は別として、興行成績のみで観れば、高畑監督作品で成功したものはなく、成功した作品のほとんどは宮崎駿監督作品のものです。
宮崎駿監督作品以外での最高収益は、米林監督作品『借りぐらしのアリエッティ』の92.5億円で、宮崎吾朗の直近の作品でスタジオジブリ初の3DCG作品でもある『アーヤと魔女』の興行収入は3億円と興行的には失敗となったため、引退を撤回した宮崎駿の新作で2023年頃の完成を目指して制作中の『君たちはどう生きるか』に期待が集まっています。
スタジオジブリの決算公告から伺える経営状況
アニメ制作会社の生存戦略
番外編 スタジオジブリその① 創設
番外編 スタジオジブリその② 特性
番外編 スタジオジブリその③ 経営状況