アニメの解説書『王様ランキング』⑥ ストーリー
前回はアニメ『王様ランキング』のアニメーションの技巧について解説しましたが、今回はストーリーについて取り上げます。
コラム①でも記載しましたが、簡単なあらすじとしては、
「剛力を誇る偉大な王の子として生まれたボッジは、自分も強い王になることを夢見ているものの、体も小さく短剣すらまともに振れない非力さに加え、耳が聞こえず言葉も話せないことから、次期王の器ではないと周囲から軽侮されています。そんな中、心を通じ合わせることができるカゲという友達と出会ったことをきっかけに、孤独で空虚だったボッジの人生に光が差し、やがて眩いばかりに輝き出す。」
という少年主人公の成長物語となっています。
先のコラム回でも触れましたが、重要なのは、非力で周囲から期待されていなかったボッジが、認めてくれて期待してくれるカゲという友達のおかげで自分を信じて前へ進むことができ、デスパーという師匠を得て、その非力さや、他人より持っていないこと、欠けていることのおかげで他人が得られないたくさんの経験を持つことができ、それが力になることを教えられ、その持前の純粋さを失わず、強く逞しくなっていく姿です。
読者がそうしたボッジの成長を見て感じるワクワク感こそが、この物語の根幹を成しています。
非力だった子供が、偉大だった父王をも超える存在へと成長していき、父を超えた先に新しい旅が始まり、ここからが王様ランキングの新たなスタートとなるわけです。
物語の序盤で孤独な存在として描かれていたボッジには、物語が進むにつれ、実は彼のことを想う人たちがいっぱいいて、本人はそれに気づいていなかっただけだったことがわかります。
継母であるヒリングはその最たる存在でしたが、カゲの存在を知り、再会したボッジの変わりようを見た時、城内でも一番ボッジのことを愛していたはずの自分こそが、ボッジの可能性を閉ざす元凶になっていたことにはじめて気づくのです。
最終回では、すっかり改心したヒリングが、王様としての責任感から、カゲのそばにいたいという気持ちを押し殺しているボッジをやさしく諭し、笑顔でボッジの新たな旅立ちの背中を押してあげています。
ボッジの変化に目を奪われがちですが、登場キャラのほとんどが、物語の終わる頃には初登場時との印象と大きく変わった姿となっており、ヒリングもそのツンデレ具合は健在ながら、ボッジに対する見方を大きく変えて母親レベルが上がったように感じますよね。
ミランジョの陰謀を巡る一件が第1章とするのならば、第1章は子が親を超える物語。
第2章から、ようやく王様ランキングにまつわるストーリー展開が本格的に始動する構成となっており、これまではまだ序盤に過ぎず、これからさらに大きく物語が広がっていくのだろうと期待が膨らみます。
アニメの解説書『王様ランキング』
① 原作マンガ
② オープニングアニメ
③ キャラクター
④ 物語進行の再構成
⑤ アニメの技巧
⑥ ストーリー
⑦ 王様ランキング