アニメの解説書『王様ランキング』⑤ アニメの技巧

アニメの解説書

前回はアニメ『王様ランキング』のキャラクターについて解説しましたが、今回はアニメーションの技巧について取り上げます。

アニメを制作しているWIT STUDIOは、『進撃の巨人』や『SPY×FAMILY』などで知られる制作会社で、超絶技巧や美麗作画に定評があります。特に『進撃の巨人』では、立体機動装置で都市を高速移動するシーンが、「神作画」と呼ばれて話題になったりもしました。

そんな超絶技巧で知られるWIT STUDIOが担当した『王様ランキング』では、原作の絵本風味を消さないように、わざと手描き感を残した抑揚のある太い線が使われ、背景は黒い輪郭線を用いずに水彩画のようなタッチで描かれています。
そうして絵的な部分で情報量を減らす一方、構図やカメラワーク、視点誘導などは非常に手の込んだ工夫が施されており、特にわかりやすいのは構図や視点で、『王様ランキング』の場合は、寄りと引きの構図が極端なのが特徴となっています。
場面や配置を説明するだけなら不要な程に極端に遠くからの構図で見せたり、かと思いきや、全体が見切れる程のどアップで描かれていたりという寄りと引きを多用しており、特に極端な寄りが多く、視聴者が感じる画面との距離感が普通の作品に比べて近くなるように演出されています。
極端な寄りの多用は、状況の説明という点では不向きな画面作りなのですが、この作品においては、それほど複雑な状況を描いてはいないので、臨場感や抑揚などの効果を優先した演出が採用されているのではと思われます。
ドリーインやドリーアウト、戦闘シーンのアーク、登場キャラの視野で描く超主観での見せ方など、『王様ランキング』ではいろんなカメラワーク的表現※が使われています。
単純なズームアップやパンなどは簡単に描けても、実写作品のような複雑なカメラワークを絵で表現するのは難しく、かなり高度なテクニックが必要となりますから、技術レベルが低い制作会社ではこうまで巧みには描けません。さすがWIT STUDIOという感じです。
カメラワークや視点誘導、そこに込められた演出意図などに着目してみると、何度見ても発見があったりして、作品をより重厚に楽しむことができます。

※基本的な動画のカメラワークまとめ – 動画編集・映像制作


アニメの解説書『王様ランキング』
① 原作マンガ
② オープニングアニメ
③ キャラクター
④ 物語進行の再構成
⑤ アニメの技巧
⑥ ストーリー
⑦ 王様ランキング