アニメ制作会社の生存戦略 番外編 IGポートとUSPその①

連載コラム「アニメの未来を考える」

先のコラムで制作会社の分類を試みてみましたが、今回はその枠組みに入らない番外編として、IGポートとウルトラスーパーピクチャーズの2社を取り上げます。

1. IGポート
『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』や『機動警察パトレイバー 2 the Movie』など押井守監督作品で知られるプロダクションIG.というアニメ制作会社があります。
この制作会社は、1987年に『タイムボカン』シリーズなどで知られる竜の子プロダクションから独立する形で誕生しましたが、複雑な経緯を辿り、現在はIGポートの子会社になっています。

プロダクションIG.は、上記の通り出発は純粋な制作会社でしたが、1990年に企画・製作および自社の版権管理事業を担当する会社としてイング(2000年にプロダクションIG.と合併)を設立すると、劇場版アニメ『機動警察パトレイバー 2 the Movie』から作品に出資して版権事業を開始します。
2000年公開の劇場版アニメ『BLOOD THE LAST VAMPIRE』では、原作をプロダクションIG.が保有する形でメディアミックス作品を展開しました。
2002年から展開されたテレビアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』では、原作マンガを出版する講談社と交渉してアニメ化権を獲得することで、自社も参加する製作委員会での主導権を取れる立場を確立しました。

このように、プロダクションIG.では、単独の制作会社でありながら、アニメ業界でもいち早く作品出資や版権事業に乗り出しています。
自社で全資金を賄えない以上、アニメ制作において製作委員会方式は必須ながら、出資比率筆頭の幹事会社に主導権を握られた下請け体制を良しとせず、常に自社主導での制作が行える状況を作り出す必要があることに気づいて取り組み、許諾を受ける側から許諾を出す側に回ることに成功した制作会社というわけです。


アニメ制作会社の生存戦略
番外編 IGポートとUSPその①
番外編 IGポートとUSPその②
番外編 IGポートとUSPその③