アニメ制作会社の生存戦略 番外編 IGポートとUSPその③

連載コラム「アニメの未来を考える」

前回前々回とプロダクションIG.が、下請け体制からの脱却を目指し、作品出資や版権事業に乗り出し、さらに持株会社制に移行して、アニメ制作で安定した収益を上げるためにグループ企業となったことを語りましたが、今回は同じく持株会社制のグループ企業となったウルトラスーパーピクチャーズを取り上げます。

2. ウルトラスーパーピクチャーズ(USP)
プロダクションIG.が単独会社としてその形態を変容させながらグループ企業(IGポート)に成長していたのに対し、ウルトラスーパーピクチャーズは、アニメ関連商品のメーカー企業による出資で、既存の複数の制作会社が寄り集まって作ったグループ企業です。

2011年にテレビアニメ『ブラック★ロックシューター』の制作を共に進めていた制作会社のサンジゲンとOrdet、さらに同作品に出資していたフィギュアメーカーのグッドスマイルカンパニーの3社が発起者となり、これに賛同したマックスファクトリー(フィギュアメーカー)、ブシロード(カードゲームメーカー)、ニトロプラス(ゲームメーカー)、ピクシブ(Webサービス事業)とグッドスマイルカンパニーを含めた5社による出資で持株会社であるウルトラスーパーピクチャーズが設立されました。
発起者であるサンジゲンとOrdetの他に、制作会社のトリガーやライデンフィルムもUSPの設立後まもなく傘下に入り、2014年には、パチンコ・パチスロメーカーのサミーとの共同出資でギャラクシーグラフィックスを設立して、5社の制作会社を傘下に持つグループ企業を形成しています。

<IGポートのグループ企業>
・サンジゲン
・Ordet
(2016年に活動停止)

・トリガー
・ライデンフィルム
・ギャラクシーグラフィックス

作品出資や版権事業を手掛けるようになったIGポートとは異なり、こちらはあくまで資本の安定化による制作会社の経営維持を図ると共に、出資会社に名を連ねる企業のそれぞれの得意分野を活かすことで、制作作品の収益を最大化しようという戦略です。

2018年には、KADOKAWAとサミーとUSPの3社により、デジタル作画と3DCGを融合したハイブリッドデジタルアニメーション制作スタジオのENGIを共同設立されました。
これは、KADOKAWAのIPコンテンツの活用が狙いとなっており、いずれとも同じく、それぞれジャンルの異なる企業を連携させるという方向性が、このグループ企業の生存戦略となっています。


アニメ制作会社の生存戦略
番外編 IGポートとUSPその①
番外編 IGポートとUSPその②
番外編 IGポートとUSPその③