声優の解説書 その⑥ キャスティング事情2 オーディション内容

声優の解説書

前回取り上げた通り、声優事務所は所属声優の中から、募集枠に合わせて応募者を選出するわけですが、オーディション会場に何百人もの応募者を集めて1人ずつ対面審査するのは、時間や費用がかかり過ぎてしまうので、大抵の場合、まずは書類審査とテープ審査で人数を絞ります。
「テープ審査」とは、事前収録した音声によって行われるオーディションのことで、自由なセリフを吹き込むボイスサンプルの他、審査側が指定するセリフを吹き込んだものを提出させる場合もあます。

こうして無事書類・テープ審査を通過した数名~数十名によって対面式のオーディションが行われます。新人声優もベテラン声優も同じ条件でのオーディションで、審査員は、監督や脚本家、プロデューサー、音響監督などが担当し、稀に原作者などが審査に参加する場合もあります。
『ドラゴンボール』の孫悟空役に野沢雅子が選ばれた際には、原作者である鳥山明の意見が決定打となったことが知られています。

オーディションは、募集したキャラクターごとに審査が行われますが、場合によっては受けたキャラクターとは別の役にキャスティングされることもあります。
有名な例をあげると、『新世紀エヴァンゲリオン』で綾波レイ役を演じた林原めぐみは、オーディション時には、惣流・アスカ・ラングレー役や葛城ミサト役で受けたものの、結果は綾波レイにキャスティングされ、逆に綾波レイ役で受けた宮村優子は、綾波レイ役は落ちてしまったものの、スタッフからアスカのオーディションも受けるよう勧められ、その結果、アスカ役に抜擢されることになったそうです。

審査の対象となるのは、声優としての技量や対応力、キャラクターに合っているか、他の出演者との声質のバランス※などは勿論のこと、近年では容姿や歌唱力、トーク力、知名度なども審査の対象になってきています。作品PRのためのイベントやラジオ番組への出演、キャラクターソングなどの展開、作品ユニットとしてアイドル的な活動などを視野に入れたマルチな能力を持つ声優が求められることも多いためです。

2020年放映予定の名古屋発アニメ「シキザクラ」声優オーディションの様子

次回は、オーディション以外のキャスティグについて取り上げます。


※Project ANIMA:DeNA、創通、文化放送、毎日放送の4社共同企画によるオリジナルアニメ制作プロジェクト

※声質のバランス:キャスティグでは、会話時にどちらがしゃべっているのか聞き分け難くなることを避けるため、共演者と声質が近い声優の採用を避ける傾向があります。また、メインヒロイン役の採用を2名の内のどちらにするか迷った際には、相手役(主人公役の男性声優)の声質との相性や、ライバルヒロインたちとの声質との差が大きいことを理由に選ぶ場合もあります。


声優の解説書 その①
声優の歴史 第一章 ラジオ時代
声優の歴史 第ニ章 テレビ時代
声優の歴史 第三章 声優事務所と養成機関の拡大
声優の歴史 第四章 声優ブームの到来

声優の解説書 その② 声優は日本だけの特殊な職業
声優の解説書 その③ 声優のお仕事
声優の解説書 その④ 声優の労働闘争
声優の解説書 その⑤ 声優の報酬システム

声優の解説書 その⑥
キャスティング事情1 オーディションの募集
キャスティング事情2 オーディション内容
キャスティング事情3 オーディション以外

声優の解説書 その⑦
アフレコ収録1 アフレコとは? 
アフレコ収録2 プレスコ
アフレコ収録3 レギュラー番組・別録り