声優の解説書 その① 声優の歴史 第四章 声優ブームの到来

声優の解説書

前回は、声優事務所と養成機関の拡大について取り上げましたが、今回は声優ブームについて語ります。

声優の誕生は、ラジオドラマ人気によって誕生したラジオ出演専門の俳優である「ラジオ俳優」がその発端ですが、聴者にとっては、出演者が舞台俳優との兼業なのかどうかはわかりませんから、当然ながら声優という存在は認識されていませんでした。
テレビが普及して、海外の映画・ドラマの吹き替えで声優が演じる声を聴くようになっていても、多くの視聴者が、出演する外国人が日本語で演じていると勘違いしていたそうで、声優という存在は引き続き、世間では知られていない裏方稼業に過ぎませんでした。
それが1960年代になると、テレビアニメ人気の影響もあってか、次第に声優という存在が世間に認知されるようになってきます。
そんな中、1970年代に、日本でも大人気となったフランスの映画俳優アラン・ドロンの吹き替えを担当した野沢那智を中心に、山田康雄、広川太一郎といった人気俳優の声を担当する声優たちの人気が俄かに高まり出します。これが、声優が世間的に注目されはじめた最初の頃であり、現在では「第1次声優ブーム」と呼ばれています。

1977年公開の劇場版アニメ『宇宙戦艦ヤマト』の大ヒットを起源に、1980年代に中高生以上のいわゆるヤングアダルト層を中心としたアニメブームが起こると、各作品で美形キャラを演じた神谷明、古谷徹、水島裕といった男性声優に人気が集まり、多くの声優がバンドを組んでライブをしたり、個人名義のレコードを出したりといった作品の外での活動を行い、声優自体に単体での商品価値があることを証明してみせました。
現在ではこの頃のことを「第2次声優ブーム」と呼んでいます。

1988年に放送されたテレビアニメ『鎧伝サムライトルーパー』の主人公たちを演じた男性声優5人によるユニット「NG5」は、爆発的な人気を博して一般のメディアにまで取り上げられるようになり、アイドル声優ブームの火付け役となりました。この時期のことは、現在では「第3次声優ブーム」と呼ばれています。

1994年には、声優専門誌「声優グランプリ」「ボイスアニメージュ」が創刊し、アニメ情報誌が挙って声優の特集記事を掲載したり、上記の2誌に続けと声優専門誌を発刊する出版社も続出します。
現在では「第4次声優ブーム」と呼ばれている2000年代には、声優はアニメ作品の番宣用ラジオ番組のパーソナリティをはじめ、キャラクターソングを歌ったり、各番宣イベントへ出演したりすることが必須となり、声優としての技能や演技力のみならず、容姿に歌唱力、トーク力やバラエティ能力などを求められるようになります。
声優は、俳優やタレント、芸人、アイドルなどに比べれば比較的安価で動員できるために費用対効果が高く、イベントなどで重宝されたこともこの傾向を後押しした要因の一つでもありました。

2010年代には、ソーシャルゲーム市場の急成長を背景に、スマートフォン用ゲームでキャラクターを演じる声優の需要が増大し、各社が人気声優の出演をセールスポイントとしてゲームのPRに活用し始める傾向が強まりました。

また、ソーシャルゲームの特徴の一つである、キャラクターカードの多さを賄うために、人気声優だけではなく、まだアニメ出演経験もないような新人も多く起用され、共演者との掛け合いや芝居要素が不要な、特定のキャラクターの短いセリフを吹き込むだけのゲーム専門の声優といった存在も出始めました。

2018年に放送されたテレビアニメ『ポプテピピック』では、前後半で全く同じ内容のアニメが、2人の主人公役の声優を交代する形で放送され、さらに毎回声優が交代し、全12話で計48名が代わる代わる同じキャラを演じるという、これまでにない制作手法が採用されました。
不条理系ギャグアニメであるとはいえ、主人公2人が女子高生にもかかわらず、普段渋い中高年役を演じるベテランの男性声優を起用するなど、ミスマッチとも思えるキャスティングが話題を呼び、次は誰が担当するのかとの期待と答え合わせで世間を騒がせました。
この作品においては、もはや声優はアニメの裏方ではなく、声優が個性をぶつけ合う声優劇場のための舞台としてアニメがあるかのような、表裏の逆転現象が起こっています。

もはや声優単体でのアーティストデビューは当たり前となり、『アイドルマスター』『ラブライブ!』『BanG Dream!』といったアニメ作品と連動した、出演声優によるリアルライブ活動が大成功し、声優ラップバトルプロジェクト「ヒプノシスマイク」も絶大な人気を博しています。
加えて、トーク番組や旅番組など、声優の冠番組がテレビの地上波で放送されたり、ABEMAなどの配信サービスで声優バラエティ番組が目玉コンテンツになっていたりと、ますます声優のマルチタレント化が進んでいます。

当然のことながら、声優に憧れる人々も増加の一途をたどり、声優の育成事業は急成長、養成所や専門学校出身者による事務所所属枠を争う倍率は高騰、アニメ作品の主役の座を勝ち取って一躍人気声優となっても、数年で新人声優に取って変わられてしまい、生き残るのは一握りという、過酷なショービジネス界の様相を呈しています。


声優の解説書 その① 声優の歴史
第一章 ラジオ時代
第ニ章 テレビ時代
第三章 声優事務所と養成機関の拡大
第四章 声優ブームの到来