名作SF映像化の潮流が来ている件

現在、海外では「SF」がトレンドになりつつある様子が伺えます。
映画『DUNE/デューン 砂の惑星』やNetflixドラマ『三体』をはじめ、次々にSFの名作タイトルがヒットしており、SFの波が来ているのではと感じるところです。

このように言うと、MARVELファンから不興を買いそうではありますが、MARVELコミックの映画化の流行は、2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』以降、その人気は下降の一途を辿っていると言わざるを得ません。
かつては絶大な人気を誇った『ハリー・ポッター』も、2011年の『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』で物語が完結して後、スピンオフ作品である『ファンタスティック・ビースト』シリーズは、『ハリー・ポッター』シリーズ程の人気を得ているとは言い難く、シリーズ打ち切りが囁かれている程です。
ディズニーもここ数年間ヒット作に恵まれず、不調が続いています。

そんな中、これらの作品に代わる注目株として急上昇しているのがSFというわけなのです。
SF作品自体は、2014年の『インターステラー』、2017年の『メッセージ』、『エイリアン: コヴェナント』『ブレードランナー 2049』、2018年の『パシフィック・リム: アップライジング』、『レディ・プレイヤー1』、2020年の『TENET テネット』などなど、継続的に作品が製作され続けるジャンルではあるのですが、現在のトレンドは、長らく映像化が困難だとされてきたSFの古典的名作を映像化することなのです。

VFXの発展でコミックやファンタジー小説を映像化して大成功を収めたものが、SFに目をつけるのも当然の流れで、MARVELや『ハリー・ポッター』の後釜的に、注目と期待が高まってきているとのこと。
これには、現在活躍している監督やプロデューサーが、SF小説を読んで育った世代であることも土台としてあるようで、作り手側や往年のファンたちの悲願、原作を知らない若い世代にとっては新鮮な発見ともなっているようで、ここに需要があると見込んで企画されているようなのです。

2015年12月 映画『CHILDHOOD’S END -幼年期の終り-
2019年10月 AGCテレビドラマ『宇宙戦争
2021年9月 Apple TV+ドラマ『ファウンデーション
2021年10月 映画『DUNE/デューン 砂の惑星
2024年3月 映画『デューン 砂の惑星 PART2
2024年3月 Netflixドラマ『三体
2024年5月 映画『猿の惑星/キングダム

これらが近年映像化されたSF小説たちですが、この他にも、Appleが、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』をドラマ化してApple TV+で配信すると発表しており、Netflix製作の『三体』も続編制作が先日発表されたばかりです。

CHILDHOOD’S END -幼年期の終り-
宇宙戦争
ファウンデーション
デューン 砂の惑星 PART2
『三体』
猿の惑星/キングダム

劉慈欣の『三体』については2000年代と近年の作品ですが、アーサー・C・クラークの『幼年期の終り』は1964年の作品で、フランク・ハーバートの『デューン』は1965年、ピエール・ブールの『猿の惑星』は1963年といずれも1960年代の作品。
アイザック・アシモフの『ファウンデーション』はもっと古くて1940年代の作品、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』はさらに古くて1898年に発表された作品。
ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』は比較的新しくて1984年です。
これらのようなSFの古典的名作を、現代風にアレンジして映像化する流れが今後も続くのではと予想されます。
だとすれば、カート・ヴォネガットの『タイタンの妖女』(1959年)、ロバート・A・ハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』(1969年)、ラリイ・ニーヴンとジェリー・パーネルの『神の目の小さな塵』(1974年)なども映像化の候補となるかもしれません。

今月5月2日に配信が始まったNetflixアニメ『T・Pぼん』も、同じ流れで理解できそうです。
ラインナップ発表の際にはなぜ今『T・Pぼん』なのかと不思議な印象でしたが、海外におけるSF作品の映像化の流れで捉えると、日本市場よりも海外市場へ向けた企画と考えると納得感があります。
ちなみに『T・Pぼん』は、1978~1986年に連載されていた藤子・F・不二雄によるマンガが原作で、制作は『交響詩篇エウレカセブン』や『僕のヒーローアカデミア』シリーズで知られるbones。
すでに7月からのシーズン2配信も決まっています。

日本には、海外のSF小説の古典的名作に匹敵するような有名小説というものが少なく、日本におけるSFは、小説よりもマンガが担ってきた割合が大きい傾向があり、『T・Pぼん』が選ばれた理由もそこにあるのではとも思われます。
bones制作ということでクオリティの高さは抜群ですが、海外受けが良い『進撃の巨人』や『呪術廻戦』のようなリアル路線の絵柄とは違い、藤子不二雄アニメのゆるい絵柄がどう評価されるか未知数です。
T・Pぼん』の評判次第では、昭和時代の埋もれたSFマンガを映像化する流れが来るかもしれません。