サンリオキャラクター大賞が発表された件

昨日6月11日の12時に、「サンリオキャラクター大賞2023」の結果発表がありました。
結果は、シナモロールが、2位のポムポムプリンに68万票の大差をつけての堂々1位。
結果発表会の模様は毎年YouTubeでライブ配信され、昨日の発表配信の際には、約94万件のツイートを記録してTwitterトレンドにも上っていました。

1. シナモロール    437万6,064票
2. ポムポムプリン   369万5,478票
3. クロミ       356万6,050票
4. ポチャッコ     320万0,540票
5. ハローキティ    249万6,850票
6. マイメロディ    226万4,895票
7. ハンギョドン    183万9,694票
8. リトルツイスターズ 151万8,114票
9. タキシードサム   151万3,085票
10. バッドばつ丸    145万7,693票

シナモロールは2020年の第35回から4連覇を達成し、通算6回目の1位獲得となり、ポチャッコ(通算5回)を抜いて大先輩のハローキティ(通算15回)に次ぐ1位獲得数となったわけです。
総得票数も昨年の2,646万7,259票から約7割増となる4448万7850票と急増しており、サンリオ全体の勢いの強さを感じさせてくれます。

「サンリオキャラクター大賞」というのは、1986年からサンリオがファン向けに発刊している月刊誌「いちご新聞」上で毎年行われているサンリオキャラクターの人気投票企画で、今年で第38回にもなるサンリオの伝統行事です。
ちなみに、サンリオ及び「いちご新聞」では、この新聞の読者のことを「いちごメイト」と呼んでいます。

その前身は「いちご新聞」が創刊された1975年から行われている純粋な読者によるランキング「サンリオキャラクター人気コンテスト」で、「サンリオキャラクター大賞」となってからも大きく内容は変わりませんでした。
概ね毎年5月号から投票が開始され、8~9月号で投票結果を発表し(年によってはスケジュールに変更有あり)、1位のキャラクターがその号の表紙を飾るのが恒例となっています。

第1回の「サンリオキャラクター人気コンテスト」でエントリーしたのは外部版権を含む10キャラクターに過ぎず、投票結果は1位がスヌーピー、2位がパティ&ジミー、3位がハローキティという結果だったそうです。
その後、年を追うごとにキャラクターが増えていき、今年の投票ではサンリオキャラのみで90キャラクターがエントリーしています。

サンリオといえば最初からハローキティ(1975年誕生)が一番人気かと思いきや、意外にも「サンリオキャラクター大賞」でハローキティが1位となったのは1998年が最初とのことです。
それから2009年までの12年連続で1位を獲得しており、1位獲得数も通算15回と最多で、第1回開催時から現在に至るまで、常にトップ10内に入っている唯一のキャラクターとのことなので、現在では大御所の貫禄を見せています。
そんなハローキティでも、1970年代末頃には人気が低迷して、当時人気だったキキララ(リトルツインスターズ)に大きく差をつけられていたそうで、そこから徹底した顧客リサーチやデザイン修正を繰り返し、現在の人気を獲得したわけですから、キャリア組のエリートと言うよりは下積みからのし上がって来た苦労人のような印象です。

「サンリオキャラクター大賞」に話を戻すと、その仕組みや盛り上げ方は非常に巧みで、結果発表会はもちろんのことながら、初日発表や中間発表を行い、サンリオショップの各店舗でも投票状況がリアルタイムでわかる投票BOXが設置されていたりもします。
1986年には、「懐かしのキャラクター部門」が設けられ、古参のキャラクターに光を当て、カムバックさせることに成功したこともありました。
2013年には、エントリーされたキャラクターたちが、政治家の選挙に倣って、投票期間に「1位になったら、あなたのそばに行ってHUGします!」といったような「これやります宣言」という公約を発表したこともあります。

2010年からはWEB上(PC、携帯電話)やサンリオショップ店頭からの投票が加わり、現在ではサンリオピューロランドなどのテーマパークからでも投票が行えるようになっています。
また、無料で行えるWEB投票に対し、「いちご新聞」付属の投票券による投票は2倍、商品購入時にできるサンリオショップ店頭投票は3倍という重みづけがされたことで、自分の推しキャラを上位に押し上げたいファンたちは、ショップに詰めかけ、売り上げに貢献することになりました。
この辺りの商法は、CD封入の投票券によるファン投票「AKB48選抜総選挙」に影響を受けたのではと思われる節があり、推しを勝たせたいと思うファンたちの過熱ぶりもよく似ています。

<投票方法>
・WEB投票:1人1票
・サンリオショップ及び各テーマパーク、公式ショップでの投票「チップde投票」※1
・サンリオオンラインショップ本店での投票※2
・いちご新聞投票(投票券の送付)※3
・サンリオの会員制ポイントサービス「Sanrio+」での「スマイル投票」※4
・各量販店のサンリオコーナーでのシール投票※5
・その他コラボ店舗での投票(コラボグッズの購入やスタンプラリー参加などで投票可能に)

このサンリオによるキャラクターの人気投票は、前身である「サンリオキャラクター人気コンテスト」から数えると50年近い歴史があり、その長い歴史の中で新たな挑戦や工夫・修正が繰り返され、非常に優れたシステムに進化しています。
「サンリオキャラクター大賞」には、売上に貢献する効果と同時に顧客リサーチも行える上、さらにはファンたちの注目を集める宣伝効果も兼ね備えています。
結果発表のステージイベントが開かれるようになり、中間発表を行ったり、投票イベントの記念グッズ販売や、投票回数を重ねるともらえるコレクターアイテムなど、ファンの心を掴んで夢中にさせ、推しキャラへの愛情をさらに高めさせ、購買意欲を駆り立てるような行き届いた仕組みが巧みに練り込まれています。

キャラクター業界には、サンリオ限定ではありますが、今回取り上げた「サンリオキャラクター大賞」があり、マンガ業界にも、書店員を中心とした有志の選考員による「マンガ大賞」のようなものがあり、市場に大きな影響を与えています。
ところが、アニメ業界には、作品の権威づけや、一般人の注目を集めて購買意欲を上げるような仕組みがまだ未熟で、製作委員会や版権会社が、それぞれの作品について個別に広告宣伝費をかけて作品をPRするという方法がほとんどです。
日本動画協会が主催する「アニメーション オブ ザ イヤー」のような賞もありますが、業界で優秀な作品を奨励したり、話題になった作品を取り上げるといった傾向が強く、市場に大きな影響を与える程には、一般のアニメファンへの訴求力は高くありません。
アニメイトやオリコンなどで出している売上げランキングなどは、一つの指標ではあるものの、市場の結果を表しているに過ぎません。

各企業の思惑の働かない公正な場で、有識者による選考や大勢のアニメファンが参加するファン投票などを、広く一般の人の注目を集める方法で行うような権威あるランキングイベントがあれば、良い作品が広告宣伝費の差や放送媒体など外部要因のために埋もれてしまうような事態を回避し、正当に評価され、注目を集め、次の良作を作り出すための資源を生み出す可能性があります。
「懐かしのキャラクター部門」のような別部門でのランキングを実施することで、多くの人にその存在を知られないまま流れてしまった過去の良作品に再び光を当てることもできるかもしれません。
アニメ業界のさらなる活性化のため、サンリオの手法や「マンガ大賞」のような先例に倣い、このような権威あるアニメ作品ランキングが誕生してくれることを期待したいと思います。


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※1 サンリオショップでの投票は「チップde投票」と呼ばれ、購入金額1,000円以上で、500円ごとに1枚の投票用チップ(3票分に相当)が最大20枚もらえ、店内の投票BOXにチップを投入する仕組みになっています。
投票BOXは、度のキャラクターにいくつチップが投じられたかが見えるため、その店での各キャラクターへの投票状況がリアルタイムでわかるようになっています。

※2 サンリオオンラインショップ本店では、サンリオショップ同様に、購入金額1,000円以上で、500円ごとに3票の投票が行えます。ただしこちらは1会計につき最大60票まで。

※3 「いちご新聞」の5月号、6月号に付属の投票カードを切り取り、ハガキに貼るか封筒に入れて新聞編集局に送付する仕組みとなっています。投票カードには重複しないキャラクターを5つまで記入でき、1キャラクターへの投票が2票としてカウントされます。

※4  Sanrio+でのポイント「スマイル」を「チップde投票クーポン」に交換してサンリオショップで投票することができます。交換レートは100スマイル=投票用チップ2枚で、1日最大20枚まで交換可能です。

※5 各量販店のサンリオコーナーでの投票では、購入金額500円ふぉとに1枚の投票シールが最大20枚までもらえ、ショップ内の投票ボードのキャラクター欄に貼り着ける仕組みで、シール1枚1票としてカウントされます。