野球アニメとサッカーアニメの放送作品歴を比較してみた件

数多あるスポーツアニメの中でも野球アニメとサッカーアニメが飛び抜けて作品数が多く、スポーツアニメの二大巨頭と言えるでしょう。
今年3月に行われた「2023 WBC(WORLD BASEBALL CLASSIC)」の記憶も新しく、「FIFAワールドカップ2022」も昨年12月に決勝戦が行われたばかりで、リアルでの野球とサッカーも、日本ではいまだにスポーツの二大巨頭な様子です。
そこで、この二大ジャンルのアニメについて、過去の作品の一覧表を作成してみました。

野球アニメは1968~1970年の『巨人の星』、サッカーアニメは1970年の『赤き血のイレブン』から始まります。
当時の日本はメディア(新聞・テレビ)と強く結びついて野球一色といった感じでしたから、1970年代までは野球アニメばかりです。
特に1976~1979年の『ドカベン』が放送されていた時期は、野球アニメが何作品も同時に放送されていて、作品数だけ見ると、野球アニメの全盛期だったと言えるでしょう。

状況が変わるのは1983~1986年の『キャプテン翼』で、爆発的な人気を博し、この作品を見て始めた多くのサッカー少年を生みました。
1985~1987年には野球アニメの代表作の一つである『タッチ』が放送されており、この両ジャンル屈指の人気作品『タッチ』と『キャプテン翼』が同時期に放送されていた野球&サッカーアニメの黄金期であったわけです。

先のコラム「ワールドカップとサッカーアニメの関係について調べてみた件」でも取り上げた通り、1990年代前半、2000年代前半にJリーグの開幕やワールドカップに連動するかのようにサッカーアニメが流行り、その反面、野球アニメが極端に少なくなっていました。
2000年代後半からは、イチローや松井秀喜の日本人メジャーリーガーの活躍に連動するかのように2004年から『MAJOR』シリーズが放送され、以降、野球アニメとサッカーアニメが作品数を増やす時期が交互に訪れるような不思議な交代劇を見せます。

ここ数年はサッカー作品のターンになっているようで、2022年には『アオアシ』や『ブルーロック』などのサッカーアニメの人気作品が重なりました。

作品内容にも触れてみると、昭和時代は努力や根性、友情、必殺技といったものがテーマで、いわゆる「スポ根」的な描かれ方が主流でしたが、近年の作品ではスポーツ科学的なアプローチをしているリアル指向の作品も多くみられるようになってきています。
GIANT KILLING』のようなプロリーグの戦略的なものから、投手運用が特徴の『ダイヤのA』やゲームメイクに着目した『アオアシ』のような高校スポーツ作品などの他、プロ野球選手の金銭面をテーマにした『グラゼニ』などの変わり種など、多様性の幅がさらに広がっているようです。
今年の3月に最終回を迎え、続編制作も決定している『ブルーロック』は、自分全てが敵という中、友情や自己犠牲などを全否定し、よりエゴイスティックになった者だけが生き残るという極限状況で、非常に熱量が高い展開が描かれる新しいタイプのスポ根アニメで大ヒット作品となりました。

また、野球&サッカーアニメのファンと言えば、かつては男の子が多いイメージでしたが、『ダイヤのA』や『ブルーロック』などでは、個性的な美少年たちが数多く登場し、声を担当するのも人気男性声優ばかりとあって、女性人気が非常に高いことも特徴となっています。

『SLAM DUNK』や『黒子のバスケ』、『YAWARA!』、『テニスの王子様』、『ハイキュー!!』、『Free!』、『弱虫ペダル』など、特異点的に野球&サッカー以外のスポーツアニメの人気作品が登場することもありますが、やはりまだまだ野球&サッカーアニメの牙城を崩す程には至っていない様子。
Bリーグの開幕やeスポーツの成長など、リアルでのスポーツ界も多様化が進む中、今後のスポーツアニメの推移にも注目していきたいと思います。


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