アニメオタクが求めるタクシーサービスを考えてみた件 後編

前回は、伊豆箱根タクシーの『ラブライブ!サンシャイン!!』コラボタクシーによる成功例を挙げ、その要因には、条件や環境面での優位性に加え、運転手が本当の意味でアニメ作品のファンとなり、お客様に同じファンであるという一体感を感じさせることができたことが大きかったことをご紹介しました。

しかし、これを真似しようとするのは非常に困難で、上司に強制されて運転手が渋々やるようなものでは上手くいきそうにありません。
「会社として、この作品とコラボするからやりたい者は立候補しろ」と言っても、本気で作品のファンになって取り組もうという運転手がどれ程手を上げてくれるものか、たとえ立候補者が出ても、仕事と割り切って一生懸命にファンを演じるだけなのか、それとも本当にファンになってお客様と気持ちを共有できるかはわかりません。

そこで、タクシー会社が行うアニメコラボでは、乗車を条件に作品のグッズをプレゼントするといった、極めて直接的で運転手の負担が少ない企画にならざるを得ないわけです。
支持を得られないような雑なコラボをしてファンからの怒りを買うと、炎上というしっぺ返しがあるので、下手に手を出すくらいなら、この程度の軽いコラボの方が安全とも言えます。
作品の使用許諾を出す版権会社側にしても、炎上要素があるような雑なコラボは作品を傷つけるだけなので許諾を出さないでしょう。

元々アニメファンの人が運転手をしていて、アニメ企画にノリノリで立候補したり、あるいは社内のアニメファンの運転手たちが徒党を組み、アニメ企画のサービスをやりたいと会社に提案するなどといった稀有な出来事でも起これば面白いことができそうですが、現実には難しいでしょう。

そこで今回は、敢えて実現可能かを問わずに、とは言えそんなに現実離れしたものではない範囲を狙い、夢のアニメタクシーを空想してみたいと思います。

まず、運転手がアニメオタクであることは前提条件となるでしょう。
誰よりもアニメに詳しいという自負がないような軽度のアニメファンでは、高いお金を払ってまで利用しようというアニメオタクのお客様に対し、満足行くような案内やサービスを提供できるとは思えません。

日本人相手では、重度のファンはネットで情報や経路を検索して自分で調べて行くでしょうし、軽度のファンはそもそも高い金額を払ってまでサービスを利用しないとあって、客層のターゲティングやサービスの狙い処が難しいので、ここは敢えてインバウンド専門に特化した方が良いでしょう。

海外向けに特化し、訪日外国人向けの旅行会社や航空会社と協業して、パッケージサービスとして、広報的な部分や受付・入金などを任せてしまっても良いかもしれません。
タクシー会社は、サービスパッケージのうち、車両移動パートのみを担うものとして、アニメ関連スポット巡りを楽しんでもらうことに特化したサービスを提供するのです。
サービスの申し込みの際に、好きなアニメを何作品か入力必須にしてもらい、それを元に、ONE PIECE好きなら麦わらストアに、ポケモン好きにはポケモンセンターに連れて行くとか、好きなアニメ作品に合わせてコンシェルジュのように、お客様が楽しんでいただけそうな場所を選定して案内します。
誰でも知っているような場所では芸がありませんから、地元の人でも知らないようなディープで珍しい場所で、写真映えして思い出に残せたり、そこでしか味わえない体験をしたりできる、とっておきのスポットを案内する必要があるでしょう。

さらに、これが重要なところで、運転手はコスプレ必須です。
誰よりも先んじてオタクであることをアピールすることでお客様の信頼を得ることができると同時に、特別感、ゴージャス感を演出することができます。
あまりゴテゴテしたコスプレでは、運転その他の業務に支障がでることも考えられるので、執事コスなどが良さそうです(女性運転手も男装で執事コスをします)。恰好だけではなく、言葉遣いなども含め、執事に成りきって対応をしなくてはなりません。『黒執事』や『妖狐×僕SS』など、執事が出てくる作品はたくさんあるので、特定のキャラを演じてみるのも悪くないでしょう。
車種についても、通常のタクシー車種では執事コスに似合わないので、ハイヤーなどで使用される黒塗りの車種を使用した方がしっくりくると思われます。
イケメン運転手が担当であれば、もしかしたら、国内の腐女子たちが運転手目当てにお客様になっていただけるかもしれません。

運転手は執事として、お坊ちゃんお嬢様であるお客様のお傍を片時も離れず付き添わなくてはなりませんから、一緒にお店を回り、時には一緒に土産選びをしてあげたり、要望があれば、テイクアウトのスイーツを一緒に食べたりしても良いでしょう。
離れて見守るだけではなく、一緒になって楽しんであげることが重要で、オタク仲間として距離を縮めて付き合うことが、海外のお客様には受けるのではないかと思われます。
多少、執事としてのキャラを逸脱する態度になってしまうかもしれませんが、そこはお客様が喜ぶことが第一ですから、臨機応変に対応することで大目に見ていただきたいところです。

ここまですれば、時間は朝から夜まで、時には2~3日貸切で、かなり高額なサービスでも良いかもしれません。
タクシー会社としても、何人もの要員を抱える必要はなく、1~2人くらいのスペシャルな運転手を用意すればよく、予約が取れないくらいにしておいた方が、返って貴重さが加わり、評判が高まるでしょう。

人材育成が一番のポイントなので、ハードルはかなり高いでしょうが、プランとしては絶対的に実現不可能とも言えないところではないでしょうか(スポット情報などは神籬から提供することができます)。
是非どこかのタクシー会社が、この夢のアニメタクシーを実現してくれることを願っています。


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※日本経済新聞:伊豆箱根鉄道系、アニメ装飾タクシー好調
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO08230150R11C16A0L61000/