ついにオープンしたアニメイト本店やバンナム新施設を見て来た件⑥ 池袋のアニメ都市構想について 前編

数回にわたり、アニメイト池袋本店のリニューアルオープンと、バンダイナムコ Cross Store 東京のオープンを取り上げてきましたが、池袋には、この他にも数々のアニメ関連施設・ショップが点在しています。

かつてはサンシャイン60前の通りにあったアニメイトが、2000年のリニューアル時に女性向け特化した店舗になったことをきっかけに、通りに点在していた他のアニメ・マンガ関連ショップも女性向け商品展開の傾向を見せるようになっていったことから「乙女ロード」などと呼称されるようになりました。
その後、女性客向けメイド喫茶とも言うべき執事喫茶のオープンなどもあり、メディアで取り上げられたことをきっかけに「乙女ロード」が全国的にも知られる存在ともなっていきます。
こうして、秋葉原や中野ブロードウェイなどが男性オタク向けの街として認識される一方、池袋は「腐女子の聖地」としての認識が定着していったわけです。

そんな池袋が、ここ数年でさらにアニメ・マンガなどのサブカルへの傾倒ぶりが顕著になってきており、今回のアニメイト池袋本店とバンダイナムコの新施設により、またさらに一歩、サブカルの聖地として抜きん出た感があります。

また、今回視察に訪れた東池袋エリアのメイン通りとも言うべきサンシャイン60通りを歩いてみて驚いたのは、何人ものメイド服姿の女性たちが呼び込みをしていたことでした。
かつての秋葉原ではお馴染みだったこのメイドたちの呼び込みが、池袋でこんなに増えているとは気づきませんでした。

かつて「オタクの街」としてサブカルの聖地となっていた秋葉原は、現在では歌舞伎町化が進行していると指摘されており、オタクやマニア向けの店舗が次々に閉店し、そこへ大人のサービス店が代わりに出店する動きが目立ってきているようなのです。
2021年には、無許可接待容疑で秋葉原のメイドカフェ5店(実際にはコンセプトカフェ)が摘発され、経営者ら6人が逮捕されたという、歌舞伎町化を象徴するかのようなニュースもありました。

その一方で、池袋ではメイド喫茶をはじめとするコンセプトカフェが秋葉原を超す勢いで増えており、ついにはサンシャイン60通りのあちこちでメイドたちの呼び込みが見られるまでになり、池袋の秋葉原化が加速しているというわけです。

実際に、池袋で10年以上営業しているENTRY 池袋店、Wonder Parlour Café、執事喫茶SWALLOWTAIL、アカシウス寄宿舎学園といった老舗カフェに加え、近年新しい店が次々にオープンして、現在では池袋に50店舗以上ものコンセプトカフェがあるそうです。
コスプレ文化に関しては、アニメイトのコスチューム館であるACOS池袋本店をはじめ、K-BOOKS池袋コスプレ館、コスプレウィッグを取り扱うアシストウィッグ池袋店などの店があり、池ハロ(池袋ハロウィンコスプレフェス)をはじめ、定期開催の街ナカ・コスプレイベント「acosta!」、サンシャインシティの特設ステージで開催される「Ultra acosta!」など、毎年数々のコスプレイベントがあります。

池袋ハロウィンコスプレフェス2018



映画に関しては、シネマサンシャイン池袋、池袋HUMAXシネマズ、シネ・リーブル池袋、新文芸坐、池袋シネマ・ロサなど、古くから池袋には映画館が点在していましたが、シネマサンシャイン池袋が2019年7月にグランドシネマサンシャイン池袋として生まれ変わり、翌2020年7月には、Hareza池袋内にTOHOシネマズ池袋がオープンと、アニメイト池袋本店の隣接区画に巨大シネコンが2つも誕生しました。

2.5次元舞台も、サンシャイン劇場や東京芸術劇場といった劇場があり、各種イベントも、サンシャインシティの噴水広場やMixaliveといった施設があります。

池袋の駅ビルには、東西に西武百貨店、東武百貨店がありますが、催事場やギャラリーではよくアニメのイベントが開催されています。
筆者が訪れた日には、ちょうど東武百貨店の催事場で「ふしぎの海のナディア 放送開始30年記念SHOP」が催されていました。

これまでの池袋も、アニメイト池袋本店を中核に、数多くのアニメ関連ショップを擁するサンシャインシティ、女性向けショップが建ち並ぶ乙女ロードを擁し、秋葉原や中野などと共に都内の「アニメの街」としての一角を担ってきました。
近年ではそれをさらに強化する形で、アニメショップ、映画館、2.5次元舞台、ライブ会場、コスプレ、コンセプトカフェと、サブカル系の施設やショップが東池袋エリア内に詰め込まれるかのように配備され、盤石の構えを見せています。
もはや池袋は、かつての秋葉原を超えた「アニメの街」「オタクの聖地」だと言っても過言ではないかもしれません。

3月10~13日に、アニメイト池袋本店隣のとしま区民センターで開催された国際アニメーション映画祭「東京アニメアワードフェスティバル2023」では、授賞式に出席した小池百合子都知事から手塚治虫のアニメ作品のセル画などを展示する新施設を南池袋に作る構想が語られました。
https://www.yomiuri.co.jp/local/tokyo23/news/20230403-OYTNT50172/

実際に東京都では2023年度中にこの施設を開設する計画で、すでに5億円の関連経費が計上されており、豊島区の推し進めて来た「アニメの街」化の施策を、都でも大きな予算を投じて後押ししていく様子です。
この新設オープンに伴い、池袋の「アニメの街」エリアは東池袋に留まらず、南池袋にまで拡大していくのかもしれません。


次回に続く。

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