アニメのスポンサー① アニメへの出資の狙い

アニメの未来を考える

アニメは何のために作られているのか?
この根源的な問題については、制作者、視聴者、出資者など、論じる立場や見ている方向によって千差万別な答えが出てくることでしょう。
そんな中、今回は、出資側の視点でアニメを見て行こうと思います。

アニメの黎明期、アニメは映画興行と同じく、映画館で上映してその観覧料収入目的で製作されていました。
家庭用ビデオデッキが普及するのは1980年代半ば以降なので、それ以前にソフト販売を狙ったビジネスモデルは存在せず、作品のグッズ製造・販売などもありませんでしたから、東映動画が『白蛇伝』を製作した1958年当時の収益モデルは映画館の興行収入や海外販売での回収のみで、後のテレビ時代には、テレビ放映権収入といったものが、これに加わります。

テレビアニメ時代になると、高度経済成長のおかげで家庭にテレビや電化製品があるのが当たり前という豊かさの中、子供たちは大量生産されるテレビアニメのキャラクターグッズや、色とりどりの駄菓子に夢中になり、玩具メーカーや菓子メーカーが次々に台頭して急成長を遂げていきました。
そんなメーカーたちがさらなる拡大を目指したのか、あるいはそんなメーカーたちに目を付けた広告代理店が口説き落としたのか、メーカーたちがこぞってアニメに出資し、放送枠内で自社商品のテレビ広告を打つようになります。

<一社提供アニメ時代のスポンサー企業例>
1963年『鉄人28号』江崎グリコ、グリコ乳業
1963年『エイトマン』丸美屋食品工業
1963年『狼少年ケン』森永製菓
1965年『オバケのQ太郎』不二家
1965年『ジャングル大帝』三洋電機
1968年『巨人の星』大塚製薬
1969年『ハクション大魔王』マルシンフーズ
1969年『ムーミン』カルピス
1970年『昆虫物語 みなしごハッチ』サッポロビール
1971年『ルパン三世』浅田飴
1975年『タイムボカン』タカトクトイス(玩具メーカー)
1976年『ドカベン』ナイル野球用品
1978年『銀河鉄道999』ポピー(玩具メーカー)
1979年『機動戦士ガンダム』クローバー(玩具メーカー)

上記のように、玩具メーカーや菓子メーカーをはじめ、電機メーカーやスポーツ用品メーカーまでがアニメに出資するようになっていきます。
これはアニメに限ったことではなく、テレビ番組というものは、コマーシャルをテレビで放送したい企業に放送料という形で出してもらったお金で製作するのが当たり前で、広告を出したい企業と、番組を制作したい制作会社、テレビ放送枠を売りたいテレビ局の間を、広告代理店が取り持って、テレビというメディアが成立しているわけです。

ちなみに、企業がテレビでCMを放送する理由を、単純に宣伝効果によって商品の売上が上がるからと思っている人が多いと思いますが、実はこれ、100点満点の答えではないのです。
実は、各販売店に商品を置いてもらうためという目的もあるのです。各販売店に商品を置いてもらうよう営業マンがお願いに行く際に、子供に大人気の『鉄腕アトム』の放送枠でCMが流れるんです、と言えば、店側は、それは売れそうだと商品をたくさん発注してくれるし、店の中で一番目につく場所に陳列してくれたりもするで、そうした営業的な側面での効果というものも視野に入れて、企業はアニメに出資しているわけです。


※『昆虫物語 みなしごハッチ』は虫たちの世界の物語ということもあって、菓子や食品のメーカーからは敬遠され、スポンサー探しに難渋したそうですが、最終的に炭酸飲料のリボンシトロンの広告目的でサッポロビールがスポンサーを引き受けることになったとのこと。


アニメのスポンサー
① アニメへの出資の狙い
② スポンサーと作品の関わり
③ 出資企業の変化
④ 出資・座組のパターン
⑤ 出資意図の変容
⑥ テレビ局主体で製作されるアニメ
⑦ 現在も残る一社提供
⑧ 玩具メーカーの明暗 前編
⑧ 玩具メーカーの明暗 後編