アニメのスポンサー② スポンサーと作品の関わり
前回は、アニメ黎明期である一社提供時代のスポンサーについて取り上げましたが、このようなスポンサー企業のことを意識してアニメを見てみると、なかなか面白いことが見えてきます。
例えば、
『エイトマン』のスポンサーである丸美屋食品工業は、1960年に発売していたふりかけの「のりたま」に『エイトマン』のシールをおまけに付けたところ、これが爆発的な人気となって生産が間に合わなくなった程で、「のりたま」が現在に至る60年以上のロングセラー商品となる礎となったとも言われています。
2015年には、このシールの復刻版がおまけに付いたパッケージが期間限定で発売されていました。
『ルパン三世』はご存じの通り大泥棒が主人公で、原作は殺人やお色気などが満載のハードボイルド作品だったわけですが、アニメ版では、殺人をせず、お色気も抑えめで(あれでも原作から比べれば随分抑えているんです)、盗む相手が悪人だったり、時には人助けまでする義賊のような存在として描かれています。これは、スポンサーとなった浅田飴が、主人公が犯罪者や悪者では困るとのことで、改変が行われたものです。
また、第1作ではルパンのジャケットが緑色で、1980年から放送された第2作では赤色に変わっていますが、これは、第2作でスポンサーとなったバンダイから、浅田飴の提供作品との区別をつけるために変更するように指示があったためで、当時の色担当スタッフがこの指示に従い、緑を反転させて赤にしたのだそうです。
『ジャングル大帝』は、国産初のカラーテレビアニメシリーズ※と言われており、この作品をカラーで楽しみたければ、白黒テレビからカラーテレビに買い替えなくてならず、スポンサーとなった三洋電機にとっては、カラーテレビの普及=自社製品のカラーテレビの売上向上という狙いがあっての出資でした。
『巨人の星』のスポンサーである大塚製薬は、オロナミンCの販促目的で、『黄金バット』や『天才バカボン』など複数の作品に出資していましたが、『巨人の星』の作品内容にも大きく関わっています。
当初、最終回で星飛雄馬が完全試合を達成するも力尽きてマウンドの上で死んでしまうという展開で制作が進んでいましたが、これに大塚製薬と放送局である読売テレビが猛反対して急遽シナリオを変更させたそうです。
『天才バカボン』では、バカボンのパパが無職であることに大塚製薬がクレームを出した結果、パパが植木職人であるという設定が生まれたりもしています。
『ハクション大魔王』では、魔王はハンバーグが大好物という設定なのですが、これはスポンサーが「マルシンハンバーグ」で知られるマルシンフーズだったからというのは有名なお話です。
このように、スポンサー目線という視点でアニメを見ることで、作品の別の一面が見えてくる上、スポンサーが、ただお金を出すだけではなくて、作品の内容にも関わってくるような存在であることが理解できると思われます。
※実際には、1965年4月から放送されていた『ドルフィン王子』が国産初のカラーテレビアニメシリーズですが、全3話しか放送されず、また作品自体もあまり話題とならなかったこともあって、『ジャングル大帝』にその称号を奪われてしまった形となっています。
アニメのスポンサー
① アニメへの出資の狙い
② スポンサーと作品の関わり
③ 出資企業の変化
④ 出資・座組のパターン
⑤ 出資意図の変容
⑥ テレビ局主体で製作されるアニメ
⑦ 現在も残る一社提供
⑧ 玩具メーカーの明暗 前編
⑧ 玩具メーカーの明暗 後編