アニメのスポンサー③ 出資企業の変化

アニメの未来を考える

前回は、アニメの黎明期である一社提供時代におけるスポンサーとアニメの関わりについて取り上げましたが、今回はスポンサー企業の変化について紐解いていきます。

テレビCMには、大きく分けて「スポットCM」と「タイムCM」の2種類があります。

「スポットCM」というのは、特定の番組ではなく、朝や午前午後、夕方、ゴールデン枠、深夜枠などの概ねの時間帯を指定して、広告会社が仲介する形でテレビ局の編成とスポンサーの宣伝部門が考えをすり合わせながら放映されているCMを指します。

「タイムCM」の方は、CMを出したい企業が特定のテレビ番組のスポンサーとなることで、その番組枠内で流されるスポンサー企業のCMのことを指します。アニメでもオープニングの後に流されている「この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りします」というフレーズでお馴染みのものです。

アニメを含むテレビ番組は、基本的にスポンサー企業から支払われる、このCM枠の広告費から製作費が捻出されるわけです。現在では広告費も莫大な金額になっているため、一つの番組枠を複数社で購入することが多いのですが、かつては一社のみで一つの番組枠を購入する方が多く、これを「一社提供」と呼んでいます。
「タイムCM」のスポンサーは、一社提供の場合や契約内容によっては、番組内容に対する発言権を持つ場合もあり、時には作品内容を大きく変更させることさえあります。

一社提供時代といわれる1960~1970年代頃は、玩具メーカーや菓子メーカーから、電機メーカーなど様々な企業が自社商品の販促目的でアニメに出資していました。
これが、『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』のヒット以降、アニメの主流が、低年齢層向けのアニメから、ヤングアダルト層と呼ばれる中高生以上向けのアニメに変わっていく中で、アニメに出資する企業の業態もソフトメーカーや音楽メーカー、アニメグッズを専門に扱うメーカーなどに移っていきます。
しかし、これらの企業は一社で番組枠を購入する程の資金力がないことが多く、その解決策として、複数の出資企業が「製作委員会」と称するグループを作り、集めた資金で制作会社にアニメ制作を発注し、番組放送枠も購入するという方式を取るようになりました。
これにより、規模が小さな企業でも参入しやすくなって参入企業の数が増えるのと同時に、一社あたりが出資する金額が少なくて済むので、出資のリスクも減らせるというわけです。

企業の出資の形が、従来の「スポンサー方式」の一辺倒ではなく、「製作委員会方式」と呼ばれる新体制とが混在するようになった現在は、さらに複雑化していくつのものパターンに細分化し、各座組や契約ごとに仕組みやお金の流れが異なるため、一様では語れないものになっています。
このあたりの複雑さが、アニメ業界やアニメビジネスの構造を理解し難くしている要因ともなっています。


アニメのスポンサー
① アニメへの出資の狙い
② スポンサーと作品の関わり
③ 出資企業の変化
④ 出資・座組のパターン
⑤ 出資意図の変容
⑥ テレビ局主体で製作されるアニメ
⑦ 現在も残る一社提供
⑧ 玩具メーカーの明暗 前編
⑧ 玩具メーカーの明暗 後編