アニメ制作のビジネスモデルの歴史 その⑥ 外資企業・配信サービスの台頭

平成から令和になった頃、Netflixをはじめとした外資系企業の台頭してきたことで、アニメ業界に新たな潮流が生まれてきました。
近年、製作委員会に参画する企業の中に中国企業が増えており、中国でニコニコ動画と似たサービスを展開しているbilibili(哔哩哔哩)などは、2015年からすでに30作品以上に出資をしています。
さらに中国企業は続々と日本にスタジオを作り、日本でのアニメ制作を始めています。日本のアニメ制作のノウハウを学ぶと共に日本のアニメーターを雇用し、ここで制作したアニメを日本や中国で展開するのみならず、やがては中国制のアニメを、日本を含む海外に輸出して海外のコンテンツ市場での競争力を持つことを狙っているのです。

また、映像作品の視聴形態がテレビからネット配信に移り変わっていく変革期にあって、映画に強いAmazonプライム・ビデオ、テレビ番組(ドラマやバラエティ)に強いHuluと比較して、独自コンテンツやコメディ、アニメに強みを持つNetflixでは、製作委員会が製作したアニメの配信権を購入する方式に飽き足らず、2018年1月にアニメ制作会社のProduction I.G、ボンズと包括的業務提携契約を結んだのを皮切りに、日本のアニメ制作会社との提携を拡大していき、Netflixオリジナルのアニメ制作を展開しはじめました。

当初においては、制作会社やクリエイター側としては、製作委員会よりも潤沢な資金を提供してくれる上、相手がNetflix一社なので意思決定が素早く、視聴者を商売の対象としているために思惑が一貫しており、制作スケジュールにも寛容だったり、内容にも自由度が高かったりと、概ね好印象で迎えられていたようでした。

ところが、続々と配信されるようになったNetflixオリジナルのアニメは、現行のテレビアニメを超えるヒット作を生み出すことができずにいます。
プロモーションの問題もあるかもしれませんが、各作品の評価においても、テレビアニメの方が評価が高い傾向が見受けられます。
Netflixは、オリジナルアニメ製作に本格的に参入するにあたり、資金面に関しては相変わらず潤沢、スケジュールにも寛容ながら、制作内容に対しては多くの注文を出し、且つ作品の権利を100% Netflix側が所有することにしました。
アニメ業界における制作会社やクリエイターは、製作委員会方式を経て、作品の権利を持たずに制作費だけ貰ってもダメだということを長い時間をかけて学んできているので、この方式では、クリエイターの本気を引き出せないのでは、との指摘もあります。
権利を持っていかれてしまうので、Netflixには二番手くらいの作品を作ってあげて会社に資金を貯め、本当に作りたい一番手の作品は、自分たちに権利の残る形で制作しようとする、というのです。
嘘か眞か確かめる手段はありませんが、なるほど腑に落ちるところもなくはないといった感じでしょうか。

Netflixは、作品作りの前段階となるコンセプトアートや脚本を模索して作品の企画力強化を図るための施設「Netflix アニメ・クリエイターズ・ベース」を2021年9月に開設し、より精度を高め、アニメコンテンツ力を育てていく方針を打ち出していますが、いずれは自社でアニメスタジオを作って、アニメ制作にも参入するのではとも見られています。
今後のNetflixが、ディスニーやピクサーに続く世界的なアニメ制作会社に名乗りを上げるのかは注目ですね。

このように、近年は目まぐるしいスピードで状況が変化していく日本のアニメ業界の中で、制作会社やクリエイターがどう立ち回っていくのか、アニメーターの労働環境問題などは改善していくのか、こちらにも注目していきたいと思います。


連載コラム「アニメの未来を考える」アニメ制作のビジネスモデルの歴史
その① アニメ映画からテレビアニメへ
その② 一社提供アニメ
その③ 製作委員会の登場
その④ 製作委員会の仕組み
その⑤ 製作委員会の変容
その⑥ 外資企業・配信サービスの台頭