アニメ制作のビジネスモデルの歴史 その⑤ 製作委員会の変容
製作委員会という方式は、アニメに多様性を生み、それまで参入できないような中小企業も出資会社たり得るようになり、制作会社にとってもクリエイティブ面での自由度が広がり、良いこと尽くめでした。
ところが、当初は出せば売れるような状態だったオタク向けアニメも、多様性の拡大や作品数の氾濫の結果、ヒット作品が生まれにくい状況となっていきました。今では10作品中、1作でもヒットが出れば運が良いという状況で、出資側はリスクを回避するためにも制作に干渉するケースも出てくるようになります。
まさに歴史は繰り返すとばかりに、一社提供アニメでの成約から脱したはずのクリエイターが、またしても成約に縛られる状況になってしまいました。
さらに悪いことに、売れないリスクは資金面にも影響し、世間での物価上昇や人件費に合わせて上がっていくはずの制作費が、逆に下げられる、もしくは現状維持されることとなりました。
制作会社は、製作委員会や市場の求めに応じて制作クオリティを上げて関わる人間の規模も増える一方な中で、制作費以上の収入を得る手段がありませんから、頭打ちの制作費内から、これらをやりくりしなくてはならず、慢性的に苦しい経営状態を強いられることになってしまいました。
そうした状況を打破すべく、京都アニメーションや『鬼滅の刃』が大ブームとなったufotableのような制作会社では、自社制作作品に自らも出資して製作委員会の一員となり、さらに自社作品のグッズなどの製造・販売、コラボカフェを経営するなど、二次利用収入を得る手段を内包して、経営基盤を強化する動きも出て来ます。
製作委員会を構成する企業も、テレビ局や映画配給会社などが幹事会社になったり、前述通りアニメの制作会社なども加わったりと、その在り方も多種多様な形が生まれ、非常に上手く機能しているケースもあります。
制作会社の苦境や、表沙汰になった製作委員会とクリエイターの軋轢などの一部の情報を元に、アニメ業界に渦巻く諸問題の原因を製作委員会方式に拠るものだとして断じるネット上の非難の声をよく見聞きしますが、製作委員会方式を一辺倒に悪と断じるのは、アニメ業界の問題をより見え難くする要因にもなりかねません。
連載コラム「アニメの未来を考える」アニメ制作のビジネスモデルの歴史
その① アニメ映画からテレビアニメへ
その② 一社提供アニメ
その③ 製作委員会の登場
その④ 製作委員会の仕組み
その⑤ 製作委員会の変容
その⑥ 外資企業・配信サービスの台頭