アニメ制作のビジネスモデルの歴史 その④ 製作委員会の仕組み

製作委員会の実状は公表されないケースが多く、契約内容や出資比率などは勿論のこと、構成する企業名さえ伏されていることも多々あります。

その在り様は千差万別で一概に語ることは難しいところではあるのですが、概ね、制作会社などのプロデューサーが企画草案を作成し(近年は出版社スタートのケースもあります)、出版社やテレビ局、グッズメーカーなどの各社に働きかけ、賛同会社の中から幹事会社が名乗りを上げて出資金の取りまとめを行います。

幹事会社は、作品に対する主導権や発言権を得る代わりに、必要最低限の資金に達しない場合には、不足分を負担するなどの責任を負います。
その代わり、作品がヒットした場合は、出資会社に対し、出資比率に応じた利益の分配が行われるので、幹事会社は負担分だけリターンも大きくなるのです。
幹事会社になるには、資金力や各企業間の調整・交渉能力が必要になるため、必然的にKADOKAWAなどの大企業が務めることが多くなります。

製作委員会方式では、作品の権利は制作会社ではなく製作委員会が有することになり、ロイヤリティー収入は出資比率に応じて出資会社に分配されます。
日本のアニメ制作会社が踏襲してきた虫プロのビジネスモデルでは、制作費の赤字分を補填できるロイヤリティーの収益がありました。
これに対し、製作委員会方式では制作会社に入ってくる収入は制作費のみとなるため、作品の二次利用によるロイヤリティーでの収益が見込めません。

また、製作委員会の負の側面として、出資会社それぞれの思惑が働くという点があります。
それぞれの企業の利益追求の結果、作品の内容からプロモーションなども含め、自分たちに都合の良い注文を加えることで、制作方針に関する意思決定がブレるなどの状況もしばしば発生するようです。
加えて、制作において何か新しいことを行ったり、変更をしようとした場合、事の大小にも寄りますが、製作委員会を構成する全ての出資会社に許諾を取る必要があり、意思決定のスピードにも影響が出るケースもあるようです。

しかも、意思決定が遅いにもかかわらず、各企業の商品展開時期などの計画がスケジュールに組み込まれる関係から、制作期間がタイトだったり、遅延が許されなかったりします。
このようなスケジュール的な負荷の大部分は制作会社が負うことになるので、制作の舵取りが困難を極める現場が往々にして見られるのも当然と言えそうです。

一社提供アニメでは、制作会社がアニメを制作するためにスポンサーにお金を出してもらって、商品を宣伝する広告塔としての役割を担うことでスポンサーの利益に貢献してお返しするというものでした。
一方、製作委員会方式における主軸はあくまで製作委員会であり、制作会社はアニメの制作発注を受けるだけの外注企業でしかありません。

製作委員会方式が導入されはじめた当初は、十分な制作資金を受け取ることができ、クリエイティブ面での自由度もある上、二次利用や宣伝などの雑事に関わらずに制作だけに集中できるという、制作会社にとっても都合の良いスタイルのように思われました。
しかし、その状況は次第に過酷な現実へと変化していくのです。


連載コラム「アニメの未来を考える」アニメ制作のビジネスモデルの歴史
その① アニメ映画からテレビアニメへ
その② 一社提供アニメ
その③ 製作委員会の登場
その④ 製作委員会の仕組み
その⑤ 製作委員会の変容
その⑥ 外資企業・配信サービスの台頭