ロボットアニメの現在③ 衰退の理由 中編

アニメの未来を考える

前回は、ロボットアニメの長編シリーズとして知られるガンダムシリーズとマクロスシリーズについて、スポンサーである玩具メーカーとの繋がりを取り上げましたが、現在、ガンダムとマクロス以外のロボットアニメに出資しているのは、玩具メーカーのタカラトミーくらいです。

タカラトミーは、アニメを使って自社商品の販促を行う玩具メーカーとして昔から知られており、数々の作品を世に送り出しています。
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勇者シリーズ※1
『勇者エクスカイザー』 1990~1991年・全48話
『太陽の勇者ファイバード』 1991~1992年・全48話
『伝説の勇者ダ・ガーン』 1992~1993年・全46話
『勇者特急マイトガイン』 1993~1994年・全47話
『勇者警察ジェイデッカー』 1994~1995年・全48話
『黄金勇者ゴルドラン』 1995~1996年・全48話
『勇者指令ダグオン』 1996~1997年・全48話
『勇者王ガオガイガー』 1997~1998年・全49話
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ZOIDS
『ゾイド -ZOIDS-』 1999~2000年・全67話
『ゾイド新世紀スラッシュゼロ』 2001年・全26話
『ゾイドフューザーズ』 2004~2005年・全26話
『ゾイドジェネシス』 2005~2006年・全50話
『ゾイドワイルド』 2018~2019年・全50話
『ゾイドワイルドZERO』 2019~2020年・全50話
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トミカ
『トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド 機動救急警察』 2017年・全37話
『トミカ絆合体 アースグランナー』 2020~2021年・全51話
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プラレール
『新幹線変形ロボ シンカリオン』 2018~2019年・全76話
『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』 2021~2022年・全41話
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この他、ロボットアニメではないものの、ベイブレードやボトルマンなどの自社商品をテーマにしたアニメも製作していますが、タカラトミーのアニメは、低年齢層向けの玩具を売る目的で製作されていることから、当然のことながら一貫して低年齢層向けに作られています。そのため、『新幹線変形ロボ_シンカリオン』などのように大人の間でも話題になるケースは極めて例外的で、衰退論を掲げるような人々の琴線に触れるような作品は生れにくい土壌にあります。

というわけで、玩具を売る目的で作られるアニメはタカラトミー系を除いてはほぼ絶滅してしまったと言ってよく、現在の主流は、『ポケットモンスター』や『妖怪ウォッチ』といったゲームを売るためのアニメであったり、『カードファイト!! ヴァンガード』などのトレーディングカードゲームを売るためのアニメ、『鬼滅の刃』や『進撃の巨人』、『キングダム』などのような出版社がマンガを売る目的で製作したアニメとなっているため、大人向けにロボットアニメを作る動機が失われてしまったというわけです。

こんな情勢下では、ロボットアニメを作りたいという企画を出しても、それが余程に話題を呼んで商業的に成功する根拠を示さない限り、出資してくれる企業は現れず、ロボットアニメ企画が日の目を見ずに消えていく運命にあります。
実際にロボットアニメ企画が人知れず握り潰されているのかは伺い知れませんが、現実にロボットアニメの作品数がそれを物語っていると言えるでしょう。

2021年と2022年に分割2クールで放送された『境界戦機』というロボットアニメがあります。
こちらは、バンダイナムコホールディングス傘下で2019年3月に設立したばかりのアニメ制作会社・SUNRISE BEYOND※2と玩具の企画・開発・製造・販売を担うBANDAI SPIRITSがタッグを組んで製作したオリジナルアニメで、アニメ放送時にも、プラモデルなどの玩具のCMが流し、『月刊ホビージャパン』でのマンガ連載などのメディアミックス展開も積極的に行なっていました。

このSUNRISE BEYONDは、元はIGポートから譲渡されたXEBECの制作部門の継承会社で、バンダイナムコの主軸となる制作会社ではなく、子会社である制作会社の一つという位置づけです。
主軸であるバンダイナムコフィルムワークスが手掛ける『ガンダム』以外の新しいロボットアニメを立ち上げ、グループシナジーでの商業的成功を目指しましたが、作品内容の評価は別としても、他作品と異なる独自性や優位性があるわけではなかったためか、話題性と言う点においては、特に盛り上がりのないまま終了したとの印象です。

ちなみに、この『境界戦機』は、YouTubeのBANDAI SPIRITS公式チャンネルで異例の全26話無料配信を行っていますが、それすらもあまり話題になっておらず、6月29日に公開された最終話の視聴数が7月7日時点での約9万回となっています。

同日に公開された動画の同日付の視聴数と比べてみると下記の通りです。
「TVアニメ『陰の実力者になりたくて!』キャラPV「ベータ/ガンマ編」」約55.3万回
「アニメ『夜は猫といっしょ』予告PV」約47万回
「TVアニメ「異世界迷宮でハーレムを」本PV」約25.5万回
「TVアニメ『彼女、お借りします』第2期 番宣CM」約21.3万回
「TVアニメ『アオアシ』第2クールPV」約12.7万回

『境界戦機』のPVの方も見てみると、2021年3月16日公開の「【境界戦機PV】SUNRISE BEYOND × BANDAI SPIRITSが送る本格ロボットアニメーション! 2021年秋 本格展開開始!」は約36.5万回、2022年2月17日公開の「境界戦機 第二部放送前スペシャル映像」は約10.1万回とのことなので、評価は推して知るべしといった感じです。

この作品は、充分な資本力のもと、優秀なスタッフを集め、通常のアニメよりも遥かに好条件で製作されているにも関わらず、世間にインパクトを与えるまでに至らなかったことから、業界内外に新作のロボットアニメはやはり難しいとのネガティブな印象を与えたであろうことが推測され、今後ますますロボットアニメの企画は通り難くなるのではと考えられます。


※1. 勇者シリーズは、タカラ時代のスポンサー作品で、トミーとの合併後に、作品権利はバンダイナムコホールディングスに譲渡されています。

※2. SUNRISE BEYONDは、バンダイナムコグループのIPプロデュースユニットである株式会社バンダイナムコフィルムワークスの子会社です。


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