ロボットアニメの現在① ロボットアニメの定義 後編

アニメの未来を考える

前回は『ドラえもん』はロボットアニメかという論争について解説しましたが、今回も引き続き「ロボットアニメ」の境界線について取り上げます。

多脚戦車
女子高生×戦車をテーマにした『ガールズ&パンツァー』をロボットアニメと言う人はいないでしょう。戦車はロボットではないからです。
では、『86-エイティシックス-』はどうでしょう?
作中には、「ジャガーノート」や「レギンレイヴ」と呼称される多脚戦車(多脚機甲兵器)が出てくるのですが、その扱われ方は戦車そのものでありながらも、蜘蛛のように歩くその姿から、これがロボットではないと説明するのは難しいことでしょう。

同じ多脚戦車であっても、『攻殻機動隊』に出てくる「タチコマ」「フチコマ」「ウチコマ」たちは、人が搭乗して操縦ができるだけではなく、AIを搭載していることから「思考戦車」とも呼ばれており、命令を理解して自律行動ができる、いわゆるロボットです。
人間相手やタチコマたち同士でも普通に言葉で会話をし、各機体が個性を獲得したことすらありました。

タチコマたちには手が付いている点で、ジャガーノートとは違うのでは、と指摘される方がいるかもしれません。
では、タカラトミーが展開する玩具シリーズの「ZOIDS」はどうでしょう?
その名称が「ZOIC ANDROID(動物のアンドロイド)」に由来する造語であることからも解るとおり、動物をモチーフにしたロボットアニメなので、登場するロボットの多くが四足歩行型です。

手足があって直立歩行する人型に近い外観を持っていないものはロボットとは認めず、それは「ロボット」ではなくて「メカ」であると主張する人たちもいて、このあたりは論争を呼ぶ境界となっています。

スーパーロボット大戦
アニメファンの中でも、このロボットアニメ論争は、フェルマーの最終定理かと言うくらい長く結論が出ない問題として語り継がれてきましたが、そんな論者の中には、谷山・志村予想のように、バンプレスト(現・バンダイナムコエンターテインメント)が1991年から発売するゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズに登場した作品は、ロボットアニメと言っても良いのではないか、という説があります。

この『スーパーロボット大戦』は、『マジンガーZ』や『機動戦士ガンダム』といった有名なロボットアニメ作品に登場するキャラクターやロボットたちの夢の共演をウリにしたクロスオーバー作品です。

第1作の参戦作品は、
『マジンガーZ』
『グレートマジンガー』
『ゲッターロボ』
『ゲッターロボG』
『機動戦士ガンダム』
『機動戦士Zガンダム』
『機動戦士ガンダムZZ』
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
『機動戦士ガンダムF91』

の9作品で、いずれも、ロボットアニメのど真ん中作品ばかりなのです。タイトルやテーマ性から見ても、これに参戦すれば、ロボットアニメのお墨付きが与えられるというのも説得力があり、長く定説の一つとなっていました。
ところが、この『スーパーロボット大戦』は、新作が出る度に次々と新しい作品が参戦することが恒例となっており、30年以上も続く長寿シリーズとなった結果、作品数が増え続けてゆき、とてもロボットアニメとも思えぬ作品も参戦するようになってしまいました。
たとえば、『デビルマン』、『ケロロ軍曹』、『カウボーイビバップ』、『ふしぎの海のナディア』といった作品ですが、辛うじてメカ要素がある作品から、もはやメカすら出てこない作品まで参戦する事態に至り、この説を提唱していた人たちも沈黙するようになってしまいました。

ちなみに、この『スーパーロボット大戦』については、「スーパーロボット・リアルロボット論争」という別の論争があるのですが、ここでは主旨から外れてしまうので割愛します。

上記のような論争の他にも、『新世紀エヴァンゲリオン』に出てくる汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンは、巨大な人造人間であってロボットではないと主張する人たちもいます。当の庵野秀明監督自身が、『新世紀エヴァンゲリオン』はロボットアニメであると言っているにもかかわらず、創造主の意図を超えた原理主義的な見解が見られるなど、ロボットアニメの業の深さを感じます。

このように、何気なく使われる「ロボットアニメ」という言葉ですが、それを明確に定義づけたり、境界線を引いたりするのは極めて困難で、アニメに詳しい人程答えに窮する問題です。
とはいえ、コラムを書き進めるにあたり、「ロボットアニメ」の定義づけは必須です。言葉だけでは明確な定義づけは難しいので、以下の区分けにて定義づけの代わりとさせていただきたいと思います。

ロボットアニメである
『ZOIDS-ゾイド-』※
『新世紀エヴァンゲリオン』
『新造人間キャシャーン』
『ろぼっ子ビートン』
『疾風!アイアンリーガー』
『キャッ党忍伝てやんでえ』
『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』

ロボットアニメではない
『ドラえもん』
『Dr.スランプ アラレちゃん』
『まほろまてぃっく』
『86-エイティシックス-』※
『攻殻機動隊』
『ケロロ軍曹』
『天空の城ラピュタ』
『ULTRAMAN』※
『TIGER & BUNNY』※


※『86-エイティシックス-』のような多脚系の搭乗機に関しては、駆動部分が少ない点でロボットとは見なさず、同じ理由で駆動部分が多い『ZOIDS-ゾイド-』はロボットと見なします。

※『ULTRAMAN』や『TIGER & BUNNY』のような場合は、装着する人間と肉体を覆う装甲やメカ部分のとの体積比が、人間側の方が大きい場合は、パワードスーツやメカと解釈します。


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