国民的アニメの施設の有無について調べてみた件 ④ プリキュアの常設施設がない理由 前編

アニメの未来を考える

前回は、『ポケットモンスター』シリーズの常設ミュージアムや常設テーマパークがない理由について取り上げましたが、今回は『プリキュア』シリーズについて考えてみたいと思います。

とは言っても、状況は『ポケットモンスター』シリーズの件と似通っています。
『ポケットモンスター』では、3~4年ごとに原作ゲームの新作が登場し、ポケモンの種類が100前後増えていくため、展示物を頻繁に更新していく必要があり、その点が常設のミュージアム、テーマパークを作るにあたって障害の一つになっているのではないかと推察しました。

『プリキュア』は、『ポケットモンスター』よりもさらに期間が短く、1年ごとに新プリキュアが追加されます。

※写真は2022年のもの

2月5日から放送が始まったシリーズ20周年記念作品である『ひろがるスカイ!プリキュア』で4人の新プリキュアが加わり、総勢77人となっています。
追加キャラクターの数や総数は『ポケットモンスター』の方が圧倒的に多いのですが、両作品は形態が異なります。

『ポケットモンスター』の場合は、ゲームの主人公は自分で、旅をする世界のマップやポケモンが追加されていき、過去作品のポケモンも継続して存在しています。
アニメの場合で言えば、サトシとピカチュウというキャラクターが変わらず※1、旅のパートナーや旅する地方が変わり、登場するポケモンの種類が追加されるだけで、同じ世界の中の連続した物語となっています。

『プリキュア』の場合は、プリキュアという名前と、女の子が変身して徒手空拳で悪と戦うというコンセプトこそ継承するものの、毎年新しいキャラクターやストーリー、世界観で描かれる別の物語に変わります。
これは『プリキュア』を制作している東映アニメーションの親会社の東映が制作している仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズなどと同じシステムで、世界観を共有しない別作品としての位置づけも共通しています。

ただし、2009年公開の『映画 プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!』から始まったクロスオーバー作品では、本来は世界観を共通しないはずの別作品同士のプリキュアたち全員が登場するというのが目玉となっており、興行収入が10億円を超える大ヒット作品となりました。
この成功を受けて、以降は毎年クロスオーバー作品(オールスターズ映画)が公開されるのが定番となるだけでなく、2016年2月~2017年1月放送の『魔法つかいプリキュア!』からは、番組の最終回で次作品の主人公がゲスト出演するというお約束もはじまりました※2。

ちなみに、2018年には、総勢55人のプリキュアが登場する『映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』が、「アニメ映画に登場する最も多いマジカル戦士の数」のギネス世界記録に認定されています。

話を戻して、『プリキュア』の常設ミュージアム・テーマパークがない理由についてですが、やはりこの1年という短いサイクルでキャラクターが一新してしまう点に求められそうです。
次回はこの点を、現存するスポットなどの実例をもって見ていきたいと思います。


※1アニメ版『ポケットモンスター』シリーズにおいて、25年以上にもわたって主人公だったサトシとピカチュウの物語が2023年3月で終了し、4月からは新たな主人公の物語がスタートする予定です。

※2 最終回で次作品の登場人物がゲスト出演するという演出は、『仮面ライダーオーズ』(2010年9月~2011年9月放送)から始まった仮面ライダーシリーズでのお約束を輸入したもののようです。
ただし、この演出は仮面ライダーシリーズが初出というわけではなく、最終回に次回作の『グレートマジンガー』の主役メカのグレートマジンガーが登場した『マジンガーZ』などのように、昔から存在した演出でした。


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