アニメ聖地巡礼の自治体アンケート調査に関する考察 その④

前回に引き続き、元・北九州市立大学の森裕亮准教授・博士(現・青山学院大学教授)が発表された「アニメ聖地巡礼を活用した地域の魅力づくりと活性化を考えるアンケート調査報告書(速報版)」の調査内容を見ていきましょう。

今回は、聖地巡礼活用の取り組みを過去に一度も実施したことがなく、今後も予定がないと回答した自治体に関して取り上げたいと思います。

調査では、「⼀度も取り組みはないし,今後も予定はない」と回答をした自治体への追加質問で、その理由を尋ねていますが、圧倒的に多いのは、「舞台となっている作品がない」という回答です。
このアンケートは、アニメ作品の視聴者が少なくとも過去に1度でも訪問したことが確認された自治体を対象に行われているとのことなので、その自治体には、舞台となっている作品があるのはずなのです。ところが、上記のような回答が大多数を占めるということは、まだ多くの自治体において、自分たちの地域が舞台になっていることを把握していない状況にあることがわかります。

アニメの聖地情報は、『君の名は。』や『鬼滅の刃』※のような有名作品でもないとなかなか勝手に入って来るものではなく、聖地情報の多くは、自ら探しに行かないと入手が難しいケースが多いという特性があります。
そのため、職員の中に、アニメに詳しい方やコンテンツツーリズムに関心がある方などがいないと、アニメ作品の舞台になっていても、当人たち(自治体)は気づかないということが発生しがちで、調査結果もそれを実証する内容となっているようです。

知らないから取り組まないという理由以外にも、興味深い理由が挙げられています。
作品の人気度や人気の賞味期限が不明であることや、作中での登場がワンシーンのみであるなど露出の少ないこと、観光に注力していない自治体であったり、すでに観光地として成功している地域などで、アニメに頼らなくとも観光資源が豊富にあることを理由に挙げる至極もっともな回答もありました。
珍しいところでは、宗教聖地との勘違いかと思われる「政教分離の観点から」との回答もあり、アニメの聖地巡礼文化自体すら知らない担当者がまだいることがわかります。

いくつかの問題は、情報の少なさに起因するところが大きいようですので、的確な情報提供が行われれば解決できるところも少なくはないでしょう。

また、利用制限のある施設や、牧場が多い地域で不特定多数の来訪者を好まないなど、聖地となっている場所が、誘客に向かない場所であるケースもあるようです。
舞台になっている場所が、運よく商店街だったり、駅前の繁華街だったりしたら大いに活用できるかもしれませんが、閑静な住宅地の公園であったり、商業地から離れた郊外だったりすると、聖地巡礼で人が訪れても地域振興に繋がらないことが考えられるので、そうしたマッチングの良さも活用における重要な条件であることが窺えます。
こちらについては、作品に依存した内容であることから、後付けでは解決しない問題で、ロケハン誘致・支援などによって、誘客向きなエリアを取り上げてもらうように活動していく方法が適しているように思われます。

以上、4回にわたり、アニメ聖地巡礼の自治体アンケート調査についての記事を掲載してまいりましたが、いかがだったでしょうか。
神籬では、今後もアニメ業界の様々な内容に関しての記事を取り上げていきます。


※報告書内には作品名、自治体名の記載は一切ありません。


アニメ聖地巡礼の自治体アンケート調査に関する考察
その①
その②
その③
その④